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琉歌(りゅうか)詞華集−002 2000/05/18 (週刊)
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▼音数律のこと▼
琉歌でやはり興味深いのは、八、八、八、六という音数律だと思
います。
この起源についての研究はかなりなされていますが、ここでそれ
をいちいち検討することはできません(勉強不足なので)。
琉歌はある時期から三線にのせてうたわれてきたわけですが、そ
の音楽の旋律が音数律に影響を及ぼすというよりも、やはり一般に
声に出して詠んだときに音数律が姿を現すと考えるほうがよいよう
に思います。
私は、近世小唄調の七、七、七、五と関係があるのでは、と思っ
ているのですが、一方で琉球の宮廷祭祀歌謡『おもろさうし』収録
のうたには八音の傾きが現れていて、沖縄の言葉にもとから八音の
傾きがあったことも確かなようです。一番興味がある問題ですが、
なかなか難しいです。
これを明らかにする一つの方法として、ヤマトのうたとの全体的
な比較研究が必要だと思いますが、それはまだなされていません。
これからの課題だと思います。
話題が固くなってしまいました。
さて、今日の琉歌は、現在の沖縄でもっともよく知られた琉歌の
一つです。
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▼最も有名な琉歌(本文・読み・共通語訳)▼
◎けふのほこらしやや キユヌ フクラシャヤ
なおにぎやなたてる ナヲゥニ ジャナ タティル
つぼでをる花の ツィブディ ヲゥル ハナヌ
露きやたごと ツィユ チャタ グトゥ
○今日のうれしさは
何にたとえようか。
つぼんでいる花が
露に会ったようだ。
(島袋盛敏・翁長俊郎『評音・評釈琉歌全集』武蔵野書院 1968)
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▼解説など▼
○共通語訳を、◎原文に合わせて、改行してみました。すこしわ
かりやすくなったでしょうか。
このうたは、現在の沖縄では「かぎやで風」という旋律でうたわ
れる、たいへんよく知られた歌です。「かぎやで風」というのは、
国王の御前で、祝いの席にうたわれた旋律です。それで「御前風」
と呼ばれることもあります。
つまりこの旋律でうたわれた歌が他にもたくさん存在するわけで
すが、現在では「かぎやで風」と言うと、この歌を連想するくらい
、この詞章が有名です。ただし、上に引用した『評音・評釈琉歌全
集』では、「仲風」に分類されています。基本的に音数律が同じで
すから、一つの詞章が何種類かの旋律でうたわれても不思議ではな
いのです。ただ、古典の歌い手は、この詞章はこの旋律で、とある
程度決めているようです。
沖縄での結婚式は、たくさんの人が参加することで知られていま
すが。友人に見せてもらったことのある結婚式のビデオでは、300人
ほど人が参加する席上に舞台があり、そこでさまざまな出し物が披
露されます。その最初にうたわれ、舞われるのがこの詞章です。ヤ
マトの結婚式では、基本的に新郎新婦が壇上に座りますが、その代
わりに舞台があるわけです。楽しそうな結婚式でしょう。
沖縄でちょっとかしこまった祝いの宴の席では、まずこの歌が歌
われます。それでたいへんよく知られています。
ちなみに最後は、主席者の多くが参加して、カチャーシーと呼ば
れる乱舞で座が閉められます。これは有名ですね。
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▼ひとこと▼
僕は、那覇市首里の高台に立つ、再建された首里城の中庭(「御
庭」ウナーと呼ぶ)に立つのが好きです。この「かぎやで風」の旋
律が流れてくるような気がするからです。
現在の首里城は、もとは琉球大学のキャンパスだったので、私が
3年次まで学んだ場所でもあるのです。(4年次から現在の宜野湾
に移転しました)首里の高台からの眺めは最高です。首里城に気を
取られて、海を眺めるのを忘れがちですが、それはかつて琉球王の
眺めでもあったわけです。ぜひ、首里城を訪れたら、そこからの眺
めを楽しんでみて下さい。
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