『琉歌(りゅうか)詞華集』001
==========================================================    琉歌(りゅうか)詞華集−001 2000/05/11 (週刊) ========================================================== ●まぐまぐで読者登録された方へ送信しています。 ---------------------------------------------------------- ▼自己紹介など▼  登録して下さった皆さん、ほんとうにありがとうござました。  私は、短大で国語を教えながら、琉球文学(琉球方言による古典 文学)を研究している者です。とくにヤマトンチュ(大和人のこと 、沖縄では本土の人をこう呼びます)である私には琉球方言はとて もむずかしくて、なかなか手強いのですが、古典になると現在の 沖縄の人たちにも難しい面があり、なんとかやっています。  ただ、琉歌は三線とともに現在でも生活に根付いているので、 ヤマトンチュである私にはなかなか近づきがたかったのですが、 これを機会に古典的な作品を中心に少しずつ勉強しようと思って います。それにお付き合い下されば幸いです。  琉球国の古典としては宮廷の歌謡集『おもろさうし』の方がよ く知られており、私はどちらかといえば、そちらの研究を主にや っているのですが、ときにはこちらも取り上げたいと思います。  また、沖縄はサミットを控えていますが、現在の沖縄の話題な ども取り上げることもあるかとは、思います。  あと、このマガジンは、私が担当するゼミナールの学生たちと 「自己を表現する」というテーマで、メンバー各自がメールマガ ジンを発行する企画の一環でもあることをお断りしておきます。  メールマガジンというメディアには、以前から関心がありまし た。自分がそれを発行することになり、不安と期待が入り交じっ ています。  なにとぞ、よろしくお付き合い下さい。 ---------------------------------------------------------- ▼琉歌って、何?▼  みなさん、琉歌(りゅうか)って知ってますか?  琉歌って、琉球歌の省略語なんです。そう、琉球の歌、それが 琉歌です。ちなみに和歌って、大和の歌の省略形なんですよ。知 ってましたか。  みなさんもご存じのように、現在の沖縄県は、明治時代以前、 正確に言うと、1872年9月14日以前には、一人の王が存在した、 琉球という一つの国だったのです。そこで、うたわれ続けてき たのが琉歌です。  この歌の特徴は、八、八、八、六という定形を持つことです。 みなさんがよくご存じの短歌は、五、七、五、七、七ですよね。 それとはかなり違いますよね。いったい、どんなうたかって?  このメールマガジンでは、その琉歌を少しずつ紹介しようとい うものです。  ヤマトゥ(沖縄では「本土」をこのように呼びます)の古典詩歌 が好きだという人にも、それは珍しく、面白いものかも知れませ んが、定形以外にも、内容などに琉球独特のものがあり、自分で 短歌や俳句、詩などを作る方には、おもしろい素材になると思い ます。  このメールマガジンを読んで、ご自分のうたの世界を少しでも 広げていただけたら、と思います。    なにはともあれ、さっそく琉歌を一首引いてみましょう。 ---------------------------------------------------------- ▼最初の琉歌(本文・読み・共通語訳)▼  ◎ときはなる松の   トゥチワナル マツィヌ   変ることなないさめ カワルクトゥ ネサミ   いつも春くれば   イツィン ハル クリバ      色どまさる     イルドゥ マサル  ○ときわなる松は、とこしえに変ることは無いだろう。いつも   春が来れば、緑の色がいよいよまさるばかりだ。 (島袋盛敏・翁長俊郎『評音・評釈琉歌全集』武蔵野書院 1968) ---------------------------------------------------------- ▼解説など▼  上の◎がうたですが、左のカタカナは何かって?これから、文字 に記された琉歌を紹介していくつもりですが、平仮名をそのまま 読んでも、正確な読みにはなりません。琉球の人たちは、そして 現在の沖縄の人たちも右に記した片仮名のように読みます。八、 八、八、六という音の形(音数律)は片仮名のように読まなければ 、姿を現しません。  平仮名はとうぜんヤマトゥから入ったのですが、借り物である 平仮名は琉球の言葉を完全に記すことはできなかったわけです。 これは、日本列島の地方の方言を平仮名が完全には記録できない のと、同じ事情ですね。  内容的には、それほど難しいことではないと思います。ヤマト ゥの古典に詳しい方には、『古今集』に似たうたを見た方もある かも知れません。それは、琉球王府の知識人が早くにヤマトゥの 古典を学んでいるからです。  でも、現在の沖縄に行った方なら、その風土の、とくに気候の 違いに驚いたはずです。私は京都に住んでいますが、そこでの春 と、沖縄での春はまったく違います。ただ、上のうたはヤマトゥ の古典のイメージを引きずっているとは思います。沖縄の場合、 これがどのような春を指すのか?とりあえず、多くの琉球の人は 、このうたで新年をイメージしたと思われます。 ---------------------------------------------------------- ▼ひとこと▼ 最初から、ちょっと長くなりました。ほんとうなら、琉歌入門か ら入るべきかも知れませんが、それは具体的なうたについて書い ていくなかで分かっていただけると思います。 ========================================================== ○電子メールマガジン:「琉歌(りゅうか)詞華集」 ○まぐまぐID:0000033858 ○発行人:末次智 ○E-Mail:suetsugu@sg-jc.ac.jp ○Home Page:   http://www.sg-jc.ac.jp/suetsugu/sue-suetsugu.exp.htm/   ##購読の中止、配信先の変更は上記Webから可能です。 ===========================================================




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