『奄美・沖縄エッセイ』039
■■■■■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ 2007.07.28 ■ ■■◇■ ◆■■ ---------- ■ 奄美・沖縄エッセイ ■◇■ ■■ ■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ No0039 ■ =========================================================== +++++ 等幅フォントによってレイアウトされています。++++++++ =========================================================== ■□■ 奄美・沖縄、なんでも話題、メールマガジンです。■□■ ■□■満月と新月の夜に配信します/本日旧暦0615○満月■□■ -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-   □◆□◆□▼ 南の島のアヴェ・マリア ▼□◆□◆□    ハイサイ、みなさん、またまたご無沙汰です。配信不定期を「実践」 し続けるふつつか者を、お許し下さい。 さて、以前、私が所属する研究会で配信していたメルマガ「歌謡(う た)つれづれ」の中で、私が担当したno55「歌謡、わたしのベスト3 」でも取り上げたことのあるのですが、奄美大島本島出身のその元ち とせという歌い手を、みなさんはご存じのことと思います。「ワダツ ミの木」という歌で、オリコンの1位を獲得しました。そして今、彼 女に続く、奄美出身の歌い手が、J-popの世界で活躍しているのをご 存じでしょうか。 元ちとせのキャッチコピーは、「その声は、100年にひとり。」とい う印象的なものでした。その歌声にショックを受けて、地元でシマウ タをはじめたという新たな歌い手のキャッチフレーズは、「地上で最 も優しい歌声」です。彼(そう、男性なのです)の名前は、中孝介。 中と書いて「あたり」と読みます。元(はじめ)もそうですが、これ は、奄美諸島に特徴的な「一字姓」と呼ばれる名字です。この名称自 体に、実は歴史的な経緯があるのですが、ここでは立ち入りません。 元、中ともに、キャッチフレーズに「声」が入っているのには、理由 があります。それは、奄美のシマウタに特徴的な「裏声」を、popsの 世界に持ち込み、歌をうたっているからです。奄美諸島のシマウタを 聴いたことのある人なら、すぐに思い起こすことができるほど、特徴 的な裏声(ファルセット)は、音楽事典によりますと、西洋では本来 男性の声を指すとのことで、そういう意味で、中孝介が男性として登 場してきたことは、奄美のシマウタの特徴を引き継ぐという意味で、 重要なことです。 彼の1stアルバムが最近(2007/07/11)メジャーレーベルEPIC TRECOR DSからリリースされました。『ユライ花』と名付けられた、そのアル バムをさっそく入手し、今聴いています。ユライ花とは、才能あふれ るミュージシャンが彼に楽曲を持ち寄ったことを、「寄り合う」とい う奄美方言ユライで表しているのです。元同様、彼も自ら楽曲を作り ません。シマウタという伝承歌謡は、多くの人が長い間歌い継いでき たものであり、これを歌ってきたこともあり、彼らは、自ら楽曲を作 るということは、基本的にはしません。 このアルバムの中には、メジャーで発表して、ロングヒットを続けて いるという「花」など、よく知られた歌がまとめられました。それぞ れの歌については、ぜひ皆さんにも聴いていただきたいのですが、今 回はそのなかでも、私が感心を抱いた一曲について、書きたいと思い ます。それは、6番目に収録された「Ave Maria」です。Ave Mariaに は、様々なヴァージョンがあることが知られていますが、これはシュ ーベルト作曲のものです。学生が持って来てくれたアルバムのパンフ レットの題名で、私がまずぜひ聴きたいと目を惹かれたのは、この一 曲でした。 ネットで調べてみますと、この歌は、Woman.exciteというサイトで組 まれた特集 で「中孝介に歌って欲しいクリスマスソング」として、5 曲の中から選ばれた曲だそうです。そして、2005年12月16日(金)恵 比寿ガーデンプレイス・グラススクエアで開催されたChristmas Live 2005で披露されました。私がなにより関心を抱いたのは、Ave Maria という祈りの歌を、彼がどのような声で歌うかにありました。声その ものを自らの特徴とする彼にとって、シューベルトのAve Mariaは、 チャレンジであったにちがいありません。そして、彼の声で歌い上げ られた一曲は、ほんとうにすばらしいものとなっています。 Ave Mariaと中孝介の声。この組み合わせは魅力的なものとなりまし た。しかし、私の関心は、別のところにもありました。それは、彼の 故郷、奄美大島とAve Mariaの関係です。みなさんは、意外だと思わ れるかも知れませんが、奄美諸島、とくに本島は、キリスト教とは深 い関係にあるのです。以前、奄美を訪れるさいに、知人から、奄美大 島のカトリック教会を載せた写真集があるから、それが手に入らない かと聞かれました。まだ、ネット環境など整っていない時代です。私 は、名瀬市(現奄美市)で古書店あまみ庵を開いている森本真一郎さ んに訪ねました。その本は『カトリック奄美100年』という名前で見 たことはあるが、手元には無いとのことでした。 森本さんには、もしどうしても必要なら、市内のカトリック教会に行 くと手に入るかも知れないと教えていただき、その足で訪ねました。 すると、幸運にもそこにはたった一冊だけ残部があり、これを分けて いただいたのでした。奄美福音宣教100周年記念誌の副題の通り、宣 教師が1892年に布教を始めてから100年目にあたる1992年に、刊行さ れたものでした。そこには、奄美大島本島のとくに北部を中心に32も あるとされるカトリック教会の写真が収められた美しい本でした。と くに、ちいさな集落にある教会の写真は、まるで公民館のような瀟洒 なもので、一度訪れてみたいと思わせました。私の知人も、奄美の教 会巡礼を意図してのことだったのです。 実は、この本は現在私の手元にあるはずなのですが、いくら探しても 見あたりません。それで、これ以上、詳しくご紹介できないが残念な のですが、これはカトリックが本島を中心に根付いていることを私に 教えてくれました。そのようなこともあり、ネットには、「聖マリア の島」という言葉も見えます。奄美大島は、マリアの島でもあるので す。ただ、アルバム附録の、中自身の手になる「楽曲解説」には、そ のことは触れられていません。が、彼がうたうAve Mariaの背後に、 可憐なカトリックの教会と、そこで祈る人々を、私は重ねてしまうの です。みなさんもよくご存じのように、Ave Mariaとは、カトリック で最もよく知られた「聖母マリアの祈り」に、曲をつけたものだから です。 -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- ■◇■ あとがき ■◇■ 出典は確認できませんが、16世紀に島を訪れた西欧人が、その美しさ から「サンタマリア島」と名付けたとも、サイトにはあります。私は 、集落のいくつかの教会に入らせていただいたことがあるのですが、 それは小さな祈りの場といった趣でした。もし、皆さんも奄美を訪れ るさいには、カトリックの教会に立ち寄ってみて下さい。 また、NHK教育TVのトップランナー(7/14)という番組に登場してい た中孝介を見ました。その印象は、安定した好青年という印象です。 彼が、シマウタは島での生活の中の歌だから、これを商業音楽の世界 に持ち出したくないと言っていることに、たいへん好感を持ちました 。メディアから流れる、彼の歌声にぜひ耳を澄ませてみてください。
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