『奄美・沖縄エッセイ』037
■■■■■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ 2007.05.17 ■ ■■◇■ ◆■■ ---------- ■ 奄美・沖縄エッセイ ■◇■ ■■ ■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ No0037 ■ =========================================================== +++++ 等幅フォントによってレイアウトされています。++++++++ =========================================================== ■□■ 奄美・沖縄、なんでも話題、メールマガジンです。■□■ ■□■満月と新月の夜に配信します/本日旧暦0401●新月■□■ -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-    □◆□◆□▼ 浮かび上がる「南島研究」 ▼□◆□◆□      ハイサイ、みなさん、お元気ですか。またまた一ヶ月振りです。私が 住む京都では、新緑がいつのまにか濃くなっています。 以前、このメルマガNo26で取り上げ、私も少し関わらせていただいて いた、藤井貞和氏の本が出来上がったので、そのことにいて、ご報告 させていただこうと思います。書名は、以前にもご紹介しましたよう に『甦る詩学 「古日本文学発生論」続・南島集成』と言います。編 集段階で、納めるべき原稿が増えていって、なんと、B6版で767頁と いう大著になりました。刊行年月日は、今年の1月17日です。ご報告 が遅れてしまいました。 現代の日本を代表する詩人で、源氏者物語を中心とする物語研究の第 一人者である、藤井貞和氏の奄美・沖縄、つまり南島に関わるお仕事 をまとめたものです。帯文には「現代詩/物語学/文学史 詩人・物 語学者 藤井貞和の知/詩の源郷 南島についての表現・論考集大成 」とあります。この文章には、私のアイデアも入っていますが、まさ にこの通りの集大成となりました。 目次を取り出すと、次のようになっています。 第一部 南島作品 1詩編 2小説 第二部 南島論考 第三部 南島語り 第四部 南島書漁 第五部 南島座談 作品から、論考、エッセイ、そして、書評、座談会と、これを眺めた だけでも、その幅広さがわかっていただけるのではないかと思います 。すべてこれまでの仕事を集めたものなのですが、最後に「南島の未 来へのあとがき」という書き下ろしの一編も収められています。 藤井氏のお仕事の全体は膨大で、その中から南島に関わるものを抜き 出すさいに、少しでも触れている程度のものまで取り出しているとき りがないので、南島を本格的に対象としているものに絞ったのですが 、それでもこれだけの分量になりました。評論家(信州大学教授)の 山本哲士氏が、ちくま学芸文庫の藤井氏の著書『物語の結婚』の「解 説」で、藤井氏の仕事の全体像を次のように述べています。 「藤井貞和氏の仕事は、社会科学や人文科学・文化科学を研究する者 にとって、もっとも貴重な考察を与えてくれるもののひとつである。 氏の言述(ディスクール)には、詩人としてのそれのほかに、四つの 研究の相がある。第一は氏の規矩になっているといってよい「源氏物 語研究」、第二に、古代文学・物語研究、第三に、日本民俗文化研究 、そして、第四に、日本精神史研究である。」 私は、やはり南島の集落に歌い継がれたウタを対象とした『古日本文 学発生論』(1978)と、その続編としての『甦る詩学』により、ここ に「南島研究」という分野が浮かび上がるのではないかと思っていま す。もちろん、南島研究は、上記の、古代文学研究、日本民俗文化研 究、日本精神史研究とクロスしています。藤井氏の仕事は、山本氏が 言うように、「ひとつひとつの論述が全体を指示する方法」となって おり、南島を相手にするさいにも、それは変わりません。これは、す ごいことです。 上記を確認しようとするのであれば、本書を読んでいただくしかない のですが、そう言ってしまっては実もふたもないので、ここで一編ご 紹介したいと思います。私がお勧めするのは、第二部に収められてい る「歌の力と巫の力」です。このなかでは、源氏物語の登場人物浮舟 が、J-Popsの中島みゆき、天理教の教祖中山みき、そして、沖縄のシ ャーマンであるユタと重ねられながら、私たちが歌い聞くウタの「力 」が浮かび上がってきます。古代から現代へ、南島から、近畿(天理 市)へ、その縦横な論考を、雑誌ではじめて読んだとき、ワクワクし たことを思い出します。個人的には、これを収めるのが、本書編集の 目的の一つと言ってよいくらいです。ぜひ、ご一読を。 本書には「藤井貞和 南島関係年譜&初出一覧」が付いていますが、 これは主に私が編集いたしました。私の力不足で、かなり偏ったもの になっているのですが、これを見ると、藤井氏の南島への関心が60年 安保の時代、アメリカからの沖縄の施政権返還の時代から持続してい ることを知ることができます。それは、だから、倫理的であり、この ことは現在まで一貫しています。私は、だから藤井氏の南島への仕事 に大きく影響を受けたと言えます。 そして、これも私の力不足でじゅうぶんに説明することができないの ですが、詩や小説といった表現のジャンルと、論考やエッセイといっ たジャンルが平行しているのも、藤井氏のお仕事の重要なところです 。作品による主観的な表現と、客観的な研究、両者を最後まで手放さ なかった人物に折口信夫という巨人が居ます。この人を学匠詩人(ポ エタ・ドゥクトゥス)と呼んだ評論家に倣えば、藤井氏は最後の学匠 詩人なのかも知れません。 -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- ■◇■ あとがき ■◇■ 『甦る詩学』には、予約者特典としてのDVDが付いています(残念な がら、出版社の手違いでDVDの「奥付」にミスが有りますが。)。こ れには、藤井氏へのインタビュー、詩の朗読の映像、あるいは、手稿 や氏の手になる謄写版の画像、手に入りにくい雑誌の論考や、座談会 の新聞などが収められています。これから書店で注文しても、これは 付いてこないと思いますので、もし欲しいと思われる人は、まろうど 社に直接問い合わせてみて下さい(まろうど社の情報はHPで手に入り ます)。手に入るかもしれません。 さらに、本書には、前著『古日本文学発生論』の書評集が、栞として 付くはずでしたが、こちらは分量が多すぎて、100頁を越えたたため 、別売となるようです。こちらは、私もまだ手にしておりません。
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