『奄美・沖縄エッセイ』033
■■■■■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ 2006.07.10 ■ ■■◇■ ◆■■ ---------- ■ 奄美・沖縄エッセイ ■◇■ ■■ ■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ No0033 ■ =========================================================== +++++ 等幅フォントによってレイアウトされています。++++++++ =========================================================== ■□■ 奄美・沖縄、なんでも話題、メールマガジンです。■□■ ■□■満月と新月の夜に配信します/本日旧暦06.15○満月■□■ -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-   □◆□◆□▼ 新発見の沖縄創世神話 ▼□◆□◆□     ハイサイ、みなさん、お元気ですか。またまた、一ヶ月ぶりです。 気付くと、奄美、沖縄は梅雨明け。ですが、梅雨の期間は、沖縄地方 は記録的な長雨で、那覇市や、中城村では、土砂崩れが起こり、地元 ではたいへんなことになっているようです。皆さんもご存じのように 、沖縄諸島では、梅雨でもそれほど雨が降らず、夏に向けての水不足 が心配されることの方がむしろ多いのに、今年は記録的な長雨で、普 通では考えられない場所で、土砂崩れが起きています。とりあえず、 梅雨は抜け出したものの、これ以後の台風が気になるところです。 さて、このインターネット、グローバル時代に、いつも遅れての情報 配信ですが、今回もそうなってしまいました。先月末まで福岡県の九 州国立博物館で行われていた「うるま ちゅら島 琉球展」という展 覧会を観に、太宰府まで行ってきました。福岡県出身の私としては、 何度か訪れたことのある古都太宰府、その参道脇の山をくり貫いたト ンネルを抜けてたどり着いた、真新しい巨大な博物館は、ちょっとし た驚きでもありました。 この展覧会は、昨年開館したばかりの同博物館の開館記念特別展「美 のシリーズ」の一環(第3弾)として企画されたものでした。新幹線代 金ほどのお金を支払って、沖縄の文物を観に行くなら、最近の格安チ ケットでも購入して、飛行機で沖縄に直接行けば良いような気もしま すが、知人に借りたパンフレットを眺めていて、その陳列内容の充実 ぶりを知り、わざわざ九州まで、日帰りでいってきました。 陳列品のなかでは、たとえば、最近一括して国宝に指定された、琉球 尚王家伝来の品々をかなりの数まとめて観ることができます。その豪 華絢爛の品々は、ガラス越しではありますが、直接眺めていると、私 などいつも思い描いている、琉球王国首里城での王を中心とした人々 の生活が彷彿とするようでした。この尚家ゆかりの品々は、那覇市が 常設展示するための施設を7月から開くということですから、今回見 逃した方は、今年の夏に沖縄に行かれる際に、ご覧になっていただき たいと思います。 他にも、名品がいろいろと展示されていたのですが、そのなかで、私 の目に止まったのは数冊のノートでした。これは、戦前の沖縄で教員 をしながら、地元の芸術品を中心に調査し、写真他の貴重な記録を残 した、鎌倉芳太郎という人が遺したものでした。現在は、沖縄県立芸 術大学附属図書館・芸術資料館が所蔵しています。鎌倉氏には『沖縄 文化の遺宝』(岩波書店)という、写真集と解説の大著があり、ノー ト類はその基資料となったもものでした。 全部で81冊遺されているといううちの数冊が、ガラスケースに入れら れて展示されていました。そこには、直筆の絵と文字で、詳細な記録 が記されていました。これを、ガラスに顔を近づけて読んでいると、 そこに「浦添研究」といとう名称が付されたページがありました。「 根所」という、浦添地域の中心と考えられる宗教的な場所についての 記述でした。このなかに、次のような記述を見つけました。その場で も読んだのですが、パンフレットの写真を虫眼鏡で確認しながらの引 用です。 開闢時天ヨリ男女二神コノ根所ニ天降リタリ エケイ神・オナイ神――天孫氏(ガ)根神 三男ヲ生ジ、 長男ハコ々ニ止マリテ中山ノ守リトナリ沖縄ヲカケ 次男ハ南山ニ至リテ大和ヲカケ 三男ハ北山ニ至リテ唐ヲカケタリ 中山根神ハ那覇ノ根処ナリ 根殿内ノ三男腹ヨリ世立テタリ 若干読みづらい箇所もあるのですが、だいたい上記のような内容です 。おそらく、根所を案内してくれた地元の方(神女など)に聞いた内 容だと思います。これは、読んでいただければお判りのように、天地 の始まり(開闢)を語る内容の伝承です。この世の始まりに、男女二 人の神が天井世界からこの世に降りて、3人の男子を産みます。長男 は、中山(沖縄)を駆け、次男は大和を駆け、三男は唐(中国)を駆 けます。そのうち、沖縄の根神(中心の神)は、那覇の根処に祀られ ます。そして、浦添は、三男の神から始まったというのです。 本州の古事記や日本書紀の神話をご存知の方なら、これが、イザナミ ・イザナギの国産み神話に似ているとお感じになるでしょう。実は、 琉球王国の歴史書の冒頭にも、これに似た神話がいくつか記されてい ます。これは、それらに似ていますが、そのうちのどれとも同じでは ありません。結末は、あくまでも浦添の始まりです。琉球王国の国土 創世神話の浦添バージョンともいうべきものです。大学の卒業論文で 、奄美・沖縄のこのような創世神話を集めたことがある私も、初めて 見るものでした。 これを見ていると、おそらく、同じような神話が、沖縄本島だけでも 、地方毎に伝えられていたことが予想できます。ビックバンなどとい う、科学的な創世神話が信じられるようになる以前、人々の集まりで ある単位、共同体毎にこのような神話が伝えられていたのだと思いま す。上記の神話が、どれほど昔から、浦添という地域に伝えられてき たのかはわかりませんが、ガラス越しにノートを読みながら、昔の人 々の想像力に思いを馳せたのでした。 -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- ■◇■ あとがき ■◇■ 沖縄は、すでに灼熱の太陽に照らされていることだと思います。今年 も、学生たちと、沖縄を訪れます。このメルマガにも、また、そのと きの体験を書かせて頂くことになると思います。 それにしても、いつもは、奄美・沖縄に貴重な水をもたらしてくれる はずの台風が、土砂崩れで苦しむ人たちにこれ以上の苦しみを与えな いように願うばかりです。誤解を恐れずにいわせて頂ければ、「仮設 住宅」という言葉は、どうも沖縄にはなじまないように、私は思われ ます。 =========================================================== ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■ □------◆ 電子メールマガジン:「奄美・沖縄エッセイ」 □----◆ 発行人:末次 智 (すえつぐ さとし) □--◆ E-mail:suetsugu@kyoto-seika.ac.jp □◆ 配信の解除URL:http://www.kyoto.zaq.ne.jp/suetsugu/ ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■




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