『奄美・沖縄エッセイ』032
■■■■■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ 2006.06.10 ■ ■■◇■ ◆■■ ---------- ■ 奄美・沖縄エッセイ ■◇■ ■■ ■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ No0032 ■ =========================================================== +++++ 等幅フォントによってレイアウトされています。++++++++ =========================================================== ■□■ 奄美・沖縄、なんでも話題、メールマガジンです。■□■ ■□■満月と新月の夜に配信します/本日旧暦05.15○満月■□■ -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-   □◆□◆□▼ ナミィおばあのウタと人生 ▼□◆□◆□ ハイサイ、みなさん、お元気ですか。またまた、一ヶ月ぶりです。 気付くと、奄美、沖縄は梅雨入り。今年は珍しく、奄美の方が先に 梅雨入りしました。 先月、大阪の十三(「じゅうそう」と読みます)というところにあ る、第七芸術劇場(そういえば、どうして「第七」なんだろう)と いうところで、『ナミィと唄えば』という映画わ観てきました。ナ ミィは、おばあさんの呼び名で、本名を「新城浪」といいます。今 年、85歳、とても元気なおばあさんです。 そんなおばあさん、とにかく「人間ジュークボックス」と呼ばれる くらい、三線(サンシン)で多くのウタをうたうオバアなのです。 三線を使うからといって、そのウタは沖縄民謡に限るかといえば、 さにあらず。本州の流行歌までも器用に弾きこなします。このオバ ア、今でこそ、デイケアでも日を過ごすことのあるおばあさんなの ですが、その人生は波乱に富んだものでした。 詳細は、映画を観ていただくこととして、そのはじまりだけでも書 かせて頂くと、1921年石垣島生まれ、三線が鳴れば跳ね踊るヤンチ ャ娘でした。島の困窮で、9歳で、沖縄本島那覇の辻の遊郭に売り に出されます。値段は、「250円」きでした。そこで、 三線をは じめとした芸事を学びます。そのあと、石垣に帰りることができる ものの、父が出稼ぎに出ているサイパンを初めとして、台湾から、 与那国島、また那覇へと、三線を手に歌いながら、生きていきます そんなオバアに関心を持ったノンフィクションライターで、映画の 原作『ナミィ 八重山のおばあの歌物語』(岩波書店)を著した、 姜(きょう)信子さんが、オバアの「家来」と称し、映像の中でも ナミィオバアに寄り添うようにして、その人生をたどります。映画 は、東京浅草の木馬亭で行われた、オバアの人生歌物語ライブを中 心に、これに各地での実写を交えながら、進んでいきます。もう一 人、石垣島には、オバアの恋人と称する、太田静男という郷土研究 家も、重要な人物として登場しています。 なによりも、三線片手に生きてきたオバアの人生歌物語は、圧巻で す。ウタが生活の中に生き続ける、奄美・沖縄の文化の中でこそ、 オバアのこのような人生はあったというべきかも知れません。映像 の中で、石垣の太田静男さん宅で歌い踊るオバアは言います。「こ んなにしないとね、生きられない。生きるためにはよ、あんなにも こんなにもしてよ。知らない人はね、これをバカなおばだなって思 うかもしらんけどよ、自分が生きるためにはよ、バカにもパーにも ならんと生きられない」 オバアの人生を、ウタとともに眺めているなかで、大切なのは、神 様との関わりです。たとえば、辻の生活の中で、近くの断崖絶壁に あった波之上神社に逃げ出し、命を捨てる覚悟で、絶壁の上で眠り ます。ところが、そのとき、だれも居ないはずの場所で、ナミィの 足をつかむ者が居ます。そして、「ナミィ、生きろよ、生きてお前 の歌を聴かせておくれよ。お前の歌で、私を喜ばせておくれよ。」 という神様の声を聞きます。このとき、ナミィの三線人生は、決ま ったのでした。映画には、その波之上神社を孫たちと訪れて、その ときのお礼を述べるナミイオバアが映し出されます。 このときだけではありません。何度も、ナミィオバアは、神様との 関係を語ります。毎朝、神様にお祈りをする姿も、映像に映されて います。「ヒャクハタチ(120歳)」まで、さらに200歳まで生かし て欲しいと、お祈りしています。ウタとともに生活の中に神様が息 づいています。それは、既製の宗教ではありません。映画の冒頭は 、ウタキと呼ばれる琉球弧の聖地でウタを奉納するオバアの姿で始 まります。堅い言葉で言えば、超自然的な存在とのそのような関係 を自然に生きているオバア。その姿は、現代を生きる私たちにいろ いろなことを考えさせてくれます。 -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- ■◇■ あとがき ■◇■ この号は、十三で映画が上映されている間に配信するつもりでした が、間に合いませんでした。もし、関心のある方は、上記に記した 原作を読まれるか、この映画のHPで、上映予定をご確認下さい。今 後も、自主上映系の映画館で、上映が続けられると思われます。 =========================================================== ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■ □------◆ 電子メールマガジン:「奄美・沖縄エッセイ」 □----◆ 発行人:末次 智 (すえつぐ さとし) □--◆ E-mail:suetsugu@kyoto-seika.ac.jp □◆ 配信の解除URL:http://www.kyoto.zaq.ne.jp/suetsugu/ ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■




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