『奄美・沖縄エッセイ』030
■■■■■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ 2006.04.12 ■ ■■◇■ ◆■■ ---------- ■ 奄美・沖縄エッセイ ■◇■ ■■ ■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ No0030 ■ =========================================================== +++++ 等幅フォントによってレイアウトされています。++++++++ =========================================================== ■□■ 奄美・沖縄、なんでも話題、メールマガジンです。■□■ ■□■満月と新月の夜に配信します/本日旧暦03.15○満月■□■ -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=  □◆□◆□▼ 金井喜久子の歌曲 ▼□◆□◆□ ハイサイ、みなさん、お元気でしょうか。京都では、ここ数日の雨 で桜の花が散ってしまいそうです。 さて、前回ご紹介いたしました金井喜久子氏の音源を手に入れまし た。一枚は、『金井喜久子●母と子の沖縄のうた/交響曲第1番ハ 短調』(キングレコード)、もう一枚は『てぃんさぐぬ花-沖縄の うた-/〈金井喜久子作品集〉』(カメラータ・トウキョウ)です 。いずれも、金井氏が編曲・作曲した童謡を中心にした編集です。 前回のメルマガの内容の再確認ですが、1971年に受賞した日本レコ ード大賞は正確には「童謡賞」で、前者の冒頭に収められている「 じんじん」という歌でした。 前者は、金井喜久子氏の仕事をまとめる目的でまとめられたもの、 後者のCDは、ソプラノ歌手の藍川由美という方が、日本の歌曲を歌 うシリーズの一つとして出されたものです。両者では、一部の曲目 が重なっていますが、いずれも、童謡や、琉球列島の有名な島唄を 中心にした編集となっています。とくに、金井自身の作曲譜では、 金井の「訳詞」により歌詞が基本的には共通語になっているのです が、藍川歌唱の方ではこれを複数の人々の協力で「歌詞を琉球語に 戻し」ています。金井訳の方でも、琉球方言と訳詞が併唱されてい るものもあります。 それから、タイトルを見て頂ければわかるように、プロの女性作曲 家としては、日本で最初だとされる交響曲の貴重な音源が、前者に は収められていますが、これについては、まったく素人の私がどう こう書くよりも、ライナーズノーツを見て頂くことにしましょう。 「かつて首里王朝の芸能奉行だった川平家に生まれ、幼少から沖縄 音楽の中で育った」金井氏が、大学での恩師の教育方針とはいえ、 このような交響曲を作曲すること自体興味深いことではあります。 さて、いずれのCDを拝聴して、私が気に入ったのは、一つはやはり 「じんじん」です。せっかくですから金井の『琉球の民謡』からラ イナーズノーツから歌詞を1番だけ引用してみましょう。 「ジンジン」 じんじん じんじん 酒屋水くわて 落(う)てりよーぢんぢん (金井共通語訳) 蛍よ 蛍よ 酒屋の水飲んで 落ちろよ蛍 これを本州の「ホタル来い」の童謡と比較して、「ホタルに水はつ きものらしく、日本及び琉球の童謡に、これがあらわれています。 」と述べています。喜納昌吉も歌って、よく知られるこの童謡は、 その軽快なリズムが印象的です。 他に気に入ったのは、「赤田首里殿内」という、これも童謡です。 「じんじん」とは違って、ゆっくりしたリズムで唱われます。 「あかたしゅんどんち(赤田首里殿内に)」 くがに灯籠さぎて うりがあかがりばみるくうんけ (囃) シーヤープー・シーヤープー ミミンメー・ミミンメー ヒヂントー・ヒヂントー イヌユミー・イヌユミー (金井共通語訳) 黄金灯籠さげて それがともると弥勒お迎え 1番の歌詞はこれだけなのですが、この背景には、本州にも広がる 民衆のミロク信仰があるのですが、ここでは詳しく述べません。 面白いのは、「囃」の部分で、これに金井は、 お手にぎにぎ お耳をつかんで顔を振り 片手でひじを叩き とっとの目とっとの目(をする) とその仕草を記しています。「とっとの目」というのが、私にはわ かりませんが、いかにも童謡らしい、かわいらしい歌です。 CDに収められているのは、童謡だけではなく、オリジナルの歌もあ るのですが、これらについては、ぜひ、音源でお聴き下さい。わた しには、琉球列島の音楽的な特質に乗っ取ったこれらのオリジナル 曲が、ある意味では、金井の琉球民謡の研究を踏まえたあたらな表 現として、評価されなくてはならないと考えます。『母と子の沖縄 のうた』のライナーズノーツを書いた郡修彦は、そこで次のように 述べています。 自国の民謡舞曲をクラッシック作品に採り入れ民族的な感情を示し た音楽を国民音楽派と称し、ロシア五人組やチェコのドヴォルザー クなどがこれにあたるが、さしずめ沖縄和音楽派の開祖が金井喜久 子であろう。 土着の音楽を、平均律という普遍的な表現に昇華させることにより 表れてくる新しい世界。これは、ここのところ定着したかに見える 、沖縄音楽のワールドミュージック化の基本にあるテーマだと考え ます。 -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- ■◇■ あとがき ■◇■ 金井喜久子氏の仕事については、持続して関心を寄せたいと考えて います。とくに、6月に出るという、「琉球国民音楽派」のピアノ 曲集はぜひ聴いてみたいと考えています。これつにいても、またこ こでご報告させていただきます。 =========================================================== ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■ □------◆ 電子メールマガジン:「奄美・沖縄エッセイ」 □----◆ 発行人:末次 智 (すえつぐ さとし) □--◆ E-mail:suetsugu@kyoto-seika.ac.jp □◆ 配信の解除URL:http://www.kyoto.zaq.ne.jp/suetsugu/ ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■




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