『奄美・沖縄エッセイ』029
■■■■■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ 2006.03.29 ■ ■■◇■ ◆■■ ---------- ■ 奄美・沖縄エッセイ ■◇■ ■■ ■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ No0029 ■ =========================================================== +++++ 等幅フォントによってレイアウトされています。++++++++ =========================================================== ■□■ 奄美・沖縄、なんでも話題、メールマガジンです。■□■ ■□■満月と新月の夜に配信します/本日旧暦03.01●新月■□■ -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= □◆□◆□▼ 南島出身のある作曲家の著作から ▼□◆□◆□ ハイサイ、みなさん、お元気でしょうか。またまた、一ヶ月ぶりで す。 さて、つい先日(奥付では、本日付けになっているのですが)復刻 された書籍について紹介したいと思います。南島の文化を紹介する 本は、今でこそかなりの数が刊行されていますが、つい最近までそ うではありませんでした。その貴重な書物には、少数だけ発行され て、市場から消えていった本も多々あります。ご紹介するのは、そ のような一冊です。 今、私の手元にあるのは、金井喜久子という人の『琉球の民謡』と いう本です。奥付によれば、初版は1954年(昭和30年)。なんと、 今から50年以上も前のことです。復刻版の帯には、「第9回 毎日 出版文化賞受賞!」とあります。すでに刊行当時から注目されてい たようです。じつはこの本、名著として知られながらも、稀覯本と してなかなか手に入らなかったものなのです。 ネットの古書店などで検索してみるとわかると思いますが、みつか ったとしても、ほとんどの書店で一万円以上の値段が付いています 。お恥ずかしいことに、私も手に入れたのは今回の復刻によってで して、じっくり読ませて頂いたのも、今回が初めてでした。この書 籍、鑑賞編と、歌詞解説と楽譜の二つに大きく分かれています。そ のなかで、前者のうち「琉球音楽の特質」と後者のうち「楽譜」を 著者が、それ以外の部分を、琉球文化研究のやはり先駆者、金城朝 永という人が書いています。 もちろん、その白眉は、著者が採譜した琉球民謡と、これをもとに した解説です。著者は、歴史的な事実をも踏まえながら、音楽的な 要素を解説しています。「琉球音楽の特質」は、「1、琉球の古典 音楽について」、「2、早節(草弾・俗弾)」「3、わらべ唄その 他について」「4、琉球音階論」で構成されており、西洋音楽の理 論を踏まえた琉球音楽の解説は、当時としては、他にあまり類を見 ません。音楽的な側面に疎い私などにも、3と4が興味深いもので す。 内容は、ぜひ本書を見ていただきたいのですが、大切なのは、著者 の金井喜久子氏が研究者ではなく、作曲家だということです。この 本を見て関心を持った私は、Web上で試しに検索をかけたところ、 戦前の日本の管弦楽曲の演奏譜作りを手がける、楽譜作成工房「ひ なあられ」の岡崎隆氏が作成した「日本の作曲家」というHPに出会 いました。そこには、金井氏が「プロの女性作曲家としては我が国 初の交響曲」を作曲した人物として、紹介されていました。 『琉球の民謡』の著者としては知っていましたが、うかつにも作曲 家だと思っていなかった私は、認識を新たにしました。本書の「著 者略歴」には、生まれは宮古島で、旧姓は川平とあります。今から 50年前に、琉球列島の小さな島から出た女性が、交響曲などの様々 な楽曲を作曲したのです。だから、その曲にはとうぜん琉球音楽的 な要素が入っています。私は、これをぜひ聞いてみたいと考えまし た。琉球音楽の要素を含むクラッシック曲等。レコードもすでに出 ており「母と子の沖縄のうた」(キングレコード)は、日本レコー ド大賞を受賞しています。 これらの音を聞くのは、実はこれからなのですが、一方で、西洋音 楽の方法から、自らの故郷の音楽を分析した彼女が、これを母胎に どのような音楽を創造したのか。ぜひ、また、このメルマガでご紹 介したいと思います。上記の岡崎氏のHP通して、楽譜化されたとい う「梯梧の花咲く琉球」という管弦楽曲と交響的序曲「宇留間の詩 」について問い合わせた私は、さらに、楽譜の著作権を持っておら れる、ご子息金井弘志氏ともお話する機会を得ました。 弘志のお話によれば、彼女が作曲したピアノ曲集が、生誕100周年 の今年6月に発売されるとのことですし、ご本人の自叙伝も、琉球 新報社から刊行されるとの情報も得ることができました。まだ、私 も金井喜久子氏の仕事に触れるのはこれからですが、生誕100周年 という記念すべき年に当たるという今年、みなさんも、この機会に 私と一緒に、『琉球の民謡』を繙きながら、金井喜久子という女性 の創り出した音に耳を傾けてみませんか。 -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- ■◇■ あとがき ■◇■ もうすぐ4月です。いよいよ新学期が始まります。金井弘志氏のお 話によれば、神戸大学の大学院生や、アメリカのジュリアード音楽 院のやはり大学院生らが、喜久子氏の仕事について研究を重ね、な かには学位論文を完成させつつある方も居られるとのこと。自らの 勉強のテーマとして何に出会うかは、学生生活を決める大事な要素 です。新たに入学してくる学生の多くが、このような良いテーマに 出会い、充実した学生生活を送ってくれることを祈らざるを得ませ ん。 =========================================================== ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■ □------◆ 電子メールマガジン:「奄美・沖縄エッセイ」 □----◆ 発行人:末次 智 (すえつぐ さとし) □--◆ E-mail:suetsugu@kyoto-seika.ac.jp □◆ 配信の解除URL:http://www.kyoto.zaq.ne.jp/suetsugu/ ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■




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