『奄美・沖縄エッセイ』025
■■■■■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ 2005.12.16 ■ ■■◇■ ◆■■ ---------- ■ 奄美・沖縄エッセイ ■◇■ ■■ ■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ No0025 ■ =========================================================== +++++ 等幅フォントによってレイアウトされています。++++++++ =========================================================== ■□■ 奄美・沖縄、なんでも話題、メールマガジンです。■□■ ■□■満月と新月の夜に配信します/本日旧暦11.15○満月■□■ -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- □◆□◆□▼ ドングリと首里城 ▼□◆□◆□ ハイサイ、みなさん、お元気ですか。 私の職場は、京都の北、岩倉の木野というところにあります。木 野は、その名称からイメージされるように、里山の中の古い集落で す。私は通勤のさい、職場の名称の付いた駅ではなく、一つ手前の 「木野駅」で降りて、集落から5分ほどの山道を楽しんで職場に赴 くことが多いのですが、そこがもう冬山となっています。職場への 階段には、いくつかの種類のドングリが落ちています。ドングリ好 きの私は、これを無視しては歩けず、つい一つ二つと拾っては、ポ ケットに入れてしまいます。みなさんもご存じだと思いますが、ド ングリの木とはブナ科のうちコナラ属とシイ属マテバシイ属の総称 です。 ドングリ好きの人には納得してもらえると思うのですが、拾った ドングリは大きければ大きいほど、得をしたような気持ちになり、 うれしいものです。では、日本最大のドングリは、どこに生育する のでしょうか。そうです、答えは、琉球諸島なのです。その種類を、 オキナワウラジロガシといいます。日本最大のドングリです。沖縄 本島那覇市にあるフリースクール珊瑚舎スコーレのスタッフであり、 そこで自然講座を担当しているゲツチョこと盛口満さんの著書(名 著)『ドングリの謎』(どうぶつ社)には、琉球列島に日本最大の ドングリを求める著者のエピソードとともに、丁寧な絵も添えられ ています。 この本によれば、「直径2.5センチ(長短ほぼ同じ長さ)、重さ10 グラム」とのこと。残念ながら、まだ手にしたことはありませんが、 ぜひ一度は拾ってみたいものです。また、この木は「西表島のほか、 沖縄本島、石垣島、久米島、奄美大島、徳之島、沖永良部島、魚釣 島の各島に分布している」ともあります。この分布の広さは「沖縄 の島々が、かつて一つにつながっていた時代があったことに行き当 たる」とのこと。ゲッチョさんは、そのドングリを運んだ動物をい ろいろと推測していて、読んでいるとわくわくするのですが、その 内容は、ぜひ本書でご覧下さい。 さて、上記引用のなかで、分布範囲の「沖縄本島」の箇所に、括 弧で次のように注記されているのが眼に入りました。「かつて首里 城の用材はオキナワウラジロガシを用いたという」。日本一のドン グリの木は、なんと首里城の素材となっていたようなのです。それ で、『沖縄大百科事典』の当該項目によれば、「ブナ科の高木。高 さ20メートルに達する。」とあり、「古くから首里城前の丸柱、守 礼門など琉球建築の用材」になったとあります。つまり、琉球列島 に生育する樹木のなかでも、その特筆すべき大きさから、列島最大 の建築、首里城の素材となったということなのです。 沖縄本島の北部、国頭(くにがみ)地方から首里にこれがオキナ ワウラジロガシが運ばれることを歌ったウタが残っています。これ が沖縄民謡としてはよく知られた「国頭(クンジャン)サバクイ」 です。沖縄(八重山)島唄の若き継承者、大島保克の最新アルバム 『島めぐり』(ビクターエンタテインメント)の、ライナーズノー ツから引いてみます。 一、サー 首里天加那志ぬ   サー 御材木だやびる 二、サー 国頭さばくい   サー 御嶽ぬ前から 三、サー 長尾山堅木や   サー 重さぬ曳からん 四、サー 御万人間切や   サー 皆肝揃とてぃ ここでは、囃子詞は省略しました。「さばくい」は役人のことで、 これを中心に「長尾山(なぐやま)」から曳き出す「堅木」が、オ キナワウラジロガシなのです。大木でよほど重かったらしく、集落 (間切)の人々の心を合わせて曳く、とあります。民謡研究家の仲 宗根幸一さんは、沖縄の出版社ボーダーインクのHPに連載している 「しまうた余聞」の第1回でこのウタを取り上げ、上記の「長尾山」 について、従来名護山つまり現名護岳とされたきたのを、伊江島の 古老からの聞き取りをきっかけに、国頭の与那覇岳(503メートル) の中腹に「なごー山」があることを確かめ、「この深山こそ、首里 城の造営改築で木材を供給した『なごー山』である」と述べていま す。そのような場所に、オキナワウラジロガシの大木が茂っていた のでしょう。 しかし、現首里城の再建については、そのような大木を琉球列島 に求めることがすでにできず、他の用材が用いられたとのことです。 それにてしても、琉球列島を代表する建築物である首里城の用材に、 日本一大きい実が成るドングリの木が使われていたというのは、な かなか面白い話です。盛口さんの本によれば、奄美大島本島にもオ キナワウラジロガシの林があると記されていますから、ぜひそこで 日本一のドングリを拾ってみたいものです。 -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- ■◇■ あとがき ■◇■ 現在、日本列島上空に寒波が居座っていて、ここ京都もたいへん 寒い日が続いています。今週末にわたってさらに冷え込むとのこと なので、「南方志向」の私は毎日震えています。そんな中で、久し ぶりに「底冷え」という言葉を思い出しました。 そのような中、みなさま、ぜひ良いクリスマスをお迎え下さい。 =========================================================== ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■ □------◆ 電子メールマガジン:「奄美・沖縄エッセイ」 □----◆ 発行人:末次 智 (すえつぐ さとし) □--◆ E-mail:suetsugu@kyoto-seika.ac.jp □◆ 配信の解除URL:http://www.kyoto.zaq.ne.jp/suetsugu/ ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■




前ペ−ジに戻る

SuetsuguHOMEに戻る