『奄美・沖縄エッセイ』014
■■■■■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ 2005.06.28 ■ ■■◇■ ◆■■ ---------- ■ 奄美・沖縄エッセイ ■◇■ ■■ ■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ No0014 ■ =========================================================== +++++ 等幅フォントによってレイアウトされています。++++++++ =========================================================== ■□■ 奄美・沖縄、なんでも話題、メールマガジンです。■□■ -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- □◆□◆□▼ ジュゴンのうた ▼□◆□◆□ ハイサイ、みなさん、お元気ですか。 皆さんは、いま、沖縄本島北部の東海岸に位置する辺野古(への こ)という地域の海で今起きていることをご存知でしょうか。ここ は米軍の新しい海上基地の予定地となり、これに反対する人々の抵 抗が、現地でもう400日以上も続いています。この抵抗運動に賛同は するものの、現地に赴き、地元の方々と行動をともにしたこともな い情けない私ですが、やはり、国の論理ばかりが優先するその基地 建設に強く反対する気持ちはあります。 さて、ここで闘う人たちの象徴となっているのが、この海に生息 するジュゴンです。ジュゴンのことは、皆さん、すでにご存じでし ょう。海に住む、草食のほ乳類で、その紡錘形の愛らしい姿は、と きに人魚伝説のもとになったとも言われます。1972年に、国の天然 記念物に指定されています。この優しいジュゴンが住むことのでき る美しい海を守ることが、地元で闘う人々の願いとなっています。 今回は、このジュゴンの歌をご紹介しようと思います。琉球王国 の宮廷歌謡集『おもろさうし』に収められた歌です。 一 こまかの澪に     おれ 見物(繰り返し)  又 久高の澪に   又 ざん網 結び降ろちへ  又 亀網 結び降ろちへ  又 ざん 百 込めて  又 亀 百 込めて  又 ざん 百 捕りやり 又 亀 百 捕りやり 又 沖膾(なます) せゝと 又 辺端膾 せゝと 又 手楫 選で 乗せて 又 沖走い立ての 競いで 又 干瀬走い立ての 競いで        (巻11-650番) (口語訳)  こまかの澪に            (それ 見事だ)<以下、繰り返します>  久高の澪に  ジュゴン網を 結んで降ろして  亀網を 結び降ろして  ジュゴンを(その中に)百も追い込めて  亀を(その中に)百も追い込めて  ジュゴンを 百 捕って  亀を 百 捕って  (その場ですぐに)沖膾にしようと  (その場ですぐに)へた膾にしようと  漕ぎ手を 選んで 乗せて  沖走り立て(舟のこと)が 競って  干瀬走り立て(舟のこと)が 競って  (外間守善校注『おもろさうし』上巻、岩波文庫、参照) こまか(久高)の澪というのは、沖縄本島南部知念半島の先端に 浮かぶ久高島とのあいだの水路のことで、ここで舟に乗ってジュゴ ン漁をする様子が歌われています。亀の対語として「ざん」(ジュ ゴン)が出てくるのは、珊瑚の海に住む両者の生態が似ているため ではないでしょうか。網に捉えられたジュゴンは、その場で膾にし て食されたようです。 「あの可愛いジュゴンを食べるの?!」と思われるかも知れません が、それだけ昔の沖縄の人々に身近な生き物だったとも言えます。 それに、その数が「百」とあります。これは、実数ではありません が、多くのジュゴンが生息していたことを推測させます。今、辺野 古の海では、一日中座り込み、ボーリングなどの基地建築作業をい ざとなれば小舟で阻止しようと網に出ることも多い人々でも、ジュ ゴンを目にするのはなかなかむずかしいようです。 そのように希少になったジュゴンが静かに生息する海を、海上基 地で覆ってしまう権利を、人間である私たちはもっているでしょう か。日本政府は、辺野古への基地建設を取りやめるようなことも臭 わしていますが、地元人たちは、決してそのような言葉にダマされ てはいません。辺野古だけではなく、この地球上から、軍事基地が 無くなることを、ジュゴンともども願わずにはおれません。 -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- ■◇■ あとがき ■◇■ 本州も梅雨に入りましたが、今年は梅雨前線が南方に停滞して、 本州は空梅雨、沖縄、奄美は記録的な大雨です。刻々と届けられる 現地からのメールによりますと、辺野古に座り込みを続けるお年寄 りも、数十年ぶりたどいうほどの大雨。地球の自然に目を向けなけ ればならない時期はとうに来ているのに、軍事基地の建築に奔走し 続けるのはなぜなのでしょうか。 =========================================================== ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■ □------◆ 電子メールマガジン:「奄美・沖縄エッセイ」 □----◆ 発行人:末次 智 (すえつぐ さとし) □--◆ E-mail:suetsugu@kyoto-seika.ac.jp □◆ 配信の解除URL:http://www.kyoto.zaq.ne.jp/suetsugu/ ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■




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