『奄美・沖縄エッセイ』010
■■■■■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ 2005.05.03 ■ ■■◇■ ◆■■ ---------- ■ 奄美・沖縄エッセイ ■◇■ ■■ ■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ No0010 ■ =========================================================== +++++ 等幅フォントによってレイアウトされています。++++++++ =========================================================== ■□■ 奄美・沖縄、なんでも話題、メールマガジンです。■□■ -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- □◆□◆□▼ パナリとの出会い ▼□◆□◆□ ハイサイ、みなさん、お元気ですか。 さてさて、みなさんは、骨董というものに興味をお持ちですか。 私は自ら購入するといったことはしないですが、たとえば、「なん でも鑑定団」(関西ではTV大阪放映)なんていう番組が好きで、よ く見ています。よく考えると、小学生くらいから、父親の盆栽の 写真集を眺めるのが好きだったり、となりに住んでいた親戚のおじ さんが購入した三輪休雪(後に人間国宝)という作家の萩焼の茶碗 のことが今でも鮮明に記憶に残っているところを見ると、どうもそ こら辺への関心は元からあったようには思います。 ただ、こういった骨董の世界と、奄美・沖縄はあまり関わらない と思っていました。よくよく考えると、琉球王国があったわけです から、そういった世界があっても不思議ではないのですが、第二次 大戦の地上戦で、琉球王国の宮廷、王府があった首里や、これを中 心とする那覇は壊滅的な被害を受けたことを、古文書の消失などを 通して知っていましたから、あまり骨董などというイメージは浮か ばなかったのだと思います。 しかし、あるとき、ある美術雑誌を購入して眺めているさいに、 そこに掲載された写真に写っている、一つの壺に出会いました。雑 誌は、『芸術新潮』とう名の美術誌で、2000年10月号です。これが、 今、手元にあるので、確認してみると、そのときは、前の職場から の帰り、自宅近くの駅前にある小さな新刊書店で、「遠藤周作『沈 黙』のふるさと」という特集への関心から買ったのだと思います。 一時期、遠藤の作品を集中的に読んだことがあるからです。 この雑誌をめくっていると、後ろの方に、川瀬敏郎という人の 「今様花伝書」という連載が載っていました。川瀬は花人で、その 生け花の世界を紹介している記事でした。このメルマガのために、 この連載がまとめられた同名の書物(2002、新潮社)も購入したの ですが、この人が作り出す「投げ入れ」という形の生け花の世界が、 なかなか気に入ってます。雑誌では、連載の第十回で、テーマは 「枯蓮」。その最初のページの写真は、壺を逆さにして、そこの割 れ目にその枯蓮を差しているというものでした。 その、ほとんど土器とも言える壺になぜか強く惹かれたのです。 次にページを開くと、壺を元に戻して、小さくて赤い「猿豆の実」 を、やはり底の割れ目に差しており、たいへん印象的です。この写 真の器の説明に、「パナリ壺(18〜19世紀)」とあります。パナリ という名前は、沖縄の八重山諸島の新城島の呼び名でしたから、も しやと思い、文章を探すとやはり「沖縄の壺(パナリ)」とありま す。実は、器について触れたのは、この部分だけなのですが、これ が強い印象を残しました。 パナリ、つまり新城島は、西表島の南島6キロに浮かぶ島で、ここ には、アカマタ・クロマタと呼ばれる神が登場する秘祭が、ほとん ど島の人が住まなくなった今も伝えられており、かなり前に、これ を見学に行き、感動したときの記憶と、この写真のたいへん素朴な、 しかし力強い壺の姿が重なりました。そこでだけ、19世紀半ばまで 焼かれていた野焼きの器が、知る人ぞ知る、パナリ焼だったのです。 これには、生活器全般があったようで、『沖縄大百科事典』から、 その製法を引きます。 「その製法は一種独特で、蔓草やタブノキの粘液を土に混ぜて捏 ね合わせ、轆轤を使わずに手びねりで形成し、さらに、蝸牛や貝肉 の粘液をすり塗って形を整え、露天でカヤやススキの火で焼き上げ たと言われる。」そして、その意匠については、「パナリ焼は稚拙 でもろく、特別に意匠をこらしたり、装飾文様を施すなどはまれで あり、ほとんどが無文である。それだけにフォルムは豊かでで逞し く素朴な美しさをもつ。」まさにこの通りですが、ただ、パナリ焼 の器の写真だけ見ても、あるいは、どこかの博物館でパナリ焼の実 物を見ても、こんな強い印象は残らなかったかも知れません。 写真が撮られた場所は、「麻生十番『うちだ』にて」とあります。 書籍版に紹介された「花の器が買える店」にも紹介されている「う ちだ」は、骨董を扱う店でしょう。そこの土壁を背景にした木の棚 に置かれた、パナリと枯蓮の組み合わせは、私には、たいへん魅力 的です。機会があれば、本を手にとってご覧下さい。そして、この 後、私の頭の片隅に、このパナリ焼の壺は、居座ることになります。 -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- ■◇■ あとがき ■◇■ 世の中は、連休の真っ最中(のはず。というのも予約配信だからです)。 みなさんが活動的な時期に、ちょっと地味な話題だったでしょうか。 しかし、今回の話、後日譚があります。私は、はたして「幻のパ ナリ」を手にすることができるのでしょうか。乞うご期待。 =========================================================== ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■ □------◆ 電子メールマガジン:「奄美・沖縄エッセイ」 □----◆ 発行人:末次 智 (すえつぐ さとし) □--◆ E-mail:suetsugu@kyoto-seika.ac.jp □◆ 配信の解除URL:http://www.kyoto.zaq.ne.jp/suetsugu/ ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■




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