『奄美・沖縄エッセイ』008
■■■■■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ 2005.04.06 ■ ■■◇■ ◆■■ ---------- ■ 奄美・沖縄エッセイ ■◇■ ■■ ■>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>◆ No008 ■ =========================================================== +++++ 等幅フォントによってレイアウトされています。++++++++ =========================================================== ■□■ 奄美・沖縄、なんでも話題、メールマガジンです。■□■ -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- □◆□◆□▼ オオゴマダラという名の魂 ▼□◆□◆□ さて、前号に引き続き、映画『風音』についてです。それにして も、映画で聞いた「ブォー」(あまり正確な表現ではありませんが) という「風音」が時折、聞こえてくるような錯覚に捕らわれること があります。あの音は、とても印象的でした。一緒に見に行った、 沖縄好きの友人は、もっと甲高い音を想像していたと、言っていま した。あれは、死者の魂の叫びなのです。 さて、映画のシーンの中で、「風音」とともに印象的だったもの があります。それは、蝶です。いくつかのシーンで、画面の中を蝶 が横切りました。その美しさがとても印象に残りました。それはオ オゴマダラという種類の蝶です。パンフレットによれば、「オオゴ マダラは、羽を広げると十五センチにもなる沖縄本島を北限とする 蝶」だということで、日本最大の蝶だということです。撮影用の蝶 の捕獲と管理は、沖縄在住の昆虫視野進化の湊和雄さんと琉球大学 の学生たちが行っているとのこと。 大きな白い羽に、名前のごとく、黒い斑点がある美しい蝶です。 これが、フワフワと画面を横切ることがありました。沖縄では今で も、蝶は亡くなった人の魂、あるいは神の使いだという信仰があり ます。私が研究する宮廷歌謡集『おもろさうし』には、「あやはべ る」という言葉が出てきます。「あや」は「綾」で、単に美しいと いう意味だけではなく、たとえば『沖縄古語大辞典』には「霊妙な、 不思議な」といった意味があると記されています。同辞典には、口 語のハーベールについて、通常は「蛾をさし、普通の蝶は含まない ことが多い」と記しています。 つまり、「あやはべる」という語は、蝶そのものの神聖さが前提 になっているのです。沖縄本島などで、神がそこに出現するウタキ (御嶽)という聖地で、フワフワと飛んでいる蝶を見かけると、そ の意味を実感します。映画の中では、沖縄戦で死んでいった多くの 人たちの魂の象徴として登場していたのでしょう。その光景は「風 音」とともに、とても印象的なものでした。とくに、オオゴマダラ は、その姿がとても印象的で、映画を観ながら、一度本物をじっく りと見てみたいなと思わせました。 ところが、映画を見た数日後、偶然にも本物を、なんと京都市内 で見ることができたのです。子どもにせがまれて、伏見区にある京 都市青少年科学センターというところに出掛けました。そこの屋外 に「チョウの家」という温室があり、係の方の案内でそこに入った ときに驚きました。なんと、オオゴマダラが乱舞してるではありま せんか。 他にも、リュウキュウアサギマダラ、シロオビアゲハといった、 沖縄諸島から八重山諸島にかけて生息する蝶が飛んでいます。とく にオオゴマダラの姿は、とても優雅で、おもわず見とれてしまいま した。さらに、オオゴマダラのサナギの美しいこと。まさに、黄金 色なのです。解説して下さった係の方のお話によると、このような 色のサナギは他には無いということ。私は、目の前をいくつもの魂 が舞っているのではないか、という思いに捕らわれました。 このメルマガを読まれて、オオゴマダラを見たいと思った方は、 ぜひ、京都市青少年科学センターにお出かけになって見て下さい。 また、下記のHPでは、オオゴマダラの動く姿を見ることができます。 http://www.edu.city.kyoto.jp/science/ 少し動きがぎこちないのが残念ですが、なかなか美しい映像です。 黄金色のサナギも含めて、じっくりと見たい人はぜひ足を運んで みて下さい。 映画には、他にもハブや、大ヤドカリといった生き物が登場し、 重要な役割を果たしています。このような生き物を育む自然が「外」 にあるのではなく、我々がそういう自然の「内」に囲まれていると いう基本的な認識が、映画に描かれているようにも思えます。「泣 き御頭」と呼ばれる風葬場の頭蓋骨は、まさに自然に還った人の姿 であるのに違いありません。 -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- ■◇■ あとがき ■◇■ いよいよ、新年度が始まりましたね。こうなってしまうと、非力 な私は、このメルマガを書く余裕を無くし、配信間隔が開いてしま うと思いますが、なにとぞお見捨て無きよう、お願いいたします。 =========================================================== ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■ □------◆ 電子メールマガジン:「奄美・沖縄エッセイ」 □----◆ 発行人:末次 智 (すえつぐ さとし) □--◆ E-mail:suetsugu@kyoto-seika.ac.jp □◆ 配信の解除URL:http://www.kyoto.zaq.ne.jp/suetsugu/ ■<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<■




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