眠っていたのは本当。狸寝入りなんかじゃなく。
ただうとうとと微睡むだけのごく浅い眠りだったのと、恐らくベッドに腰かけていたのだろう彼が傍らに本を置く音が少しだけ、そうほんの少しだけ、狭い部屋に響いたから。薄く目を開けると散らかったままの机の上が近くに見えた。
「アルフォンス?」
呼ぶ声は自分に気を使ってか控え目だ。眠ったのか、と続く呟きまですっかり冴えてしまった頭と耳は正確に拾って理解する。何故呼ばれた時にすぐさま返事をしなかったのか判らない。起き上がる動作にしても同様に、完全にタイミングを逃してしまって今ではもう動けない。困ったなと思うのと同時に近付く足音が聞こえてきて、慌てて開いていた目を伏せ閉じた。すぐ後ろにまで近付いた気配とあまりにも自然に洩れた溜息を確かに感じて。
「…いつもと、逆だな」
懐かしむ響きの言葉と共にふわ、と肩に何かが掛けられた。毛布、いや上着か。いやに優しく触れた、左右で異なる手の感触にどうしてか涙が出そうになる。病んだ肺がこんな時でもじりじりと痛い。咳き込むな、と半ば叱咤するように強く自分に言い聞かせた。穏やかで優しく稀にしか見ない懐かしむような、今の自分には見えない彼を脳裏に描く。想う。

ねぇ。
そんな『いつも』を僕は一切 知らないのに。




ヒイラギさんと夢の鋼シャンバラ合作(?)!! …というかそもそもは、はからずも、だったんですが。笑(むしろものっそいタナボタ…)

以前私が日記にシャンバラらくがき(左の)を描いたところ、それを見たヒイラギさんが掌編を書いてくださったのです。(すごく驚いたのと嬉しかったのとで…ありがとう!)
…で、今再びシャンバラー熱が出てきたのを機に、「うちのサイトにのっけてもいい?」とお願いしてみたところ、「いいよー」と快諾していただいたので。
私自身、もう一度読みたかった、というのもあって。嬉しい限りです…。
本当にありがとうございますヒイラギさん!是非また何かやりましょうね〜。

                                                                                 (06/01/30  維生汐 拝)



戻る