Nature Column



自然への思い


yakushima on my mind


 荒川林道の終点にテントを張り,小雨の中,縄文杉を目指した。
小杉谷から大杉歩道へ入り三代杉,ウイルソン株などを経て急峻な登山道を片道5時間あまり,ようやく世界最古といわれる巨木に会えた。
最古といわれるその姿ゆえに過去に周囲を伐採され,根元の土砂が流失しているという。登山者は途中でつめた砂を木の根元に撒き補ってきた。現在は保護するために,その木肌には触れることができなくなったらしい。



 世界中で,焼畑農業で森林が急速に姿を消していることが話題になっているが,農耕法のひとつに蹄耕法というものがある。

野山に家畜を放つと樹木は次第に減少し,農地ができあがると言うものだ。家畜の量が多いほどそのスピードは加速する。

 日本中のフイールドでは訪れる人の質と量が問題になっている。花之江河の湿地でも登山者の増加によって土砂が流入し,湿地が減少,植生が変化しているらしい。

 行かないことが最善策なんだろうか。しかし訪れる人が少なくなれば,そこは放置され,空家のように既に傷ついた自然は無残な姿をさらすだけとなってしまうだろう。

 やはり科学的にしっかりした根拠のある規制,保護が必要なんだろう。そして訪れる人の自制が必要なんだと思う。
 僕のようなバイク乗りも,大自然の懐に飛び込んでいくんだという大義名分をひっさげて,林道という自然保護者からみれば美しい山につけられた深い傷としかいえないようなものを大いに利用し尽くしている。

 だから旅を続けるには自然を慈しまなくてはならないと思っている。神の名は知らないし,信仰ももたないが畏敬の念も忘れてはならない。

 バイクは旅の道具,ゆっくりと行けば見えてくるものも多い。本来旅は歩くものだから。


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