糸魚川から南へ・・・温泉旅



9月22日
 名神から北陸道へ,米原JCからの道は前を行く車も少なく気持ちがいい。GSは唸りを上げ、心地よく風の中を疾走して行く。
対向車線に2台の1150GSが大きな体をくねらせて楽しげに車を追い越していくのが見えた。
うーんやるなあ!あのバイクにはとても似合った豪快な走りだ。
 
 名はセクシーだが,何もない女形谷PAでコーヒーブレイク。
しばらく路を進めると,明るい海岸線に出た。日本海だ。

隣国の人たちは自分達の足元の海を他人の国の名で呼ばれたら,どう感じるんだろうか?
 
 随分来た。
はるか東に見えていた立山連峰を南に仰ぐ。親不知トンネルを貫けると、道は切り立った山を離れ,海の上を走る。
フォッサマグナの入り口・糸魚川は目と鼻の先だ。退屈だが,快調だったハイウェイに別れを告げ,南へバイクを進める。

 しばらく走るが,食料を満足に揃えるところがない。引き返し,ICから市街地方向にほんの少し走ると立派な大型店舗があった。焦るべからず,冷静に考えれば正解は市街地方向、北です。こういうちょっとしたことは旅人の感、いつも研ぎ澄まされていたいものだ。


 
沈む陽に少々の焦りを、アクセルは敏感に反応する。


 国道を左折元来た道をくぐるように進路を西へ、狭い舗装林道をしばらく走ると、蓮華温泉の駐車場に到着した。


 旅支度をほどき、この時のために持ってきたキャリアにキャンプ道具、ヘルメットなどを括り付ける。


 温泉宿屋のフロントで手続きを済ませ、林道を役不足のキャリア(量販店超安物!家族キャンプの水汲み用)を引きずる、ヒキズル、こける、コケル、汗かく、したたる!!



 
 
たった600mほどをようやくキャンプ場にたどり着いた。

着いたら立派なリヤカーがあった。


ううッ これ見た人は管理棟で借りましょう。






疲れてます
  薄暗くなってきたので、テント設営を済ませ、一服。

 サンダル履き、着替えをひっさげ、よたよたと山道を登っていく。一湯目の『三国の湯』は道端に突然あらわれた。周りを見回し、すぱーっ素っ裸になりそろーりと入る。

ぬるい湯だが大汗かいた後だけに気持ちヨカ〜。

 さらに暗くなってきたが、目当てにしていた写真の『見晴らしの湯』にたどり着く。嬉しくなって、はしゃいで一人水泳大会。

潜って顔をあげたら、山を降りてきた夫婦(たぶん)登山者が思いっきり笑っていた。
『ど、どうも、いい天気・・・・』と訳のわからない言い訳をしてその場をごまかす。

 湯にとっぷり浸かりながら夜空を見上げていたら、午後8時、今までまばらだった星たちが、満天にくっきりと浮かび上がってきた。絶景!これに麦酒があれば最高!持ってこなかったことを思いっきり悔やむ!テントまで我慢がま〜ん。


 登山道をえっちらおっちらテントに戻り、すかさずビールをシュポッ!

今日一日の恵みを与えてくれたすべてのものに感謝!そして自分に乾杯!!
美味い!!!

一息ついて、ゴソゴソとバックパックの中身をほおりだし、ホエーブスに点火、米を炊く。

 今日のディナーは北海道名物?!『豚丼』、大学時代、近くの図書館食堂での人気メニュー。

レシピはしごく簡単。豚肉(しょうが焼きするぐらいの厚さがあったほうが旨い)に塩コショウ、
フライパンでジュウジュウ焼き、適当に焼き目が入ったぐらいで、市販の『うなぎのタレ』をドバッとかける。 焦げない程度に香ばしい匂いがしてきたら、キャベツの千切りをたっぷりのせた炊きたての飯の上にガバっとかけ、少々蒸してキャベツがしんなりしたら・・・

ハイ!できあがり!!七味をかけると味が引き締まってなお美味い。

腹の皮がツッパリ、缶チューハイもほどよくまわってうつらうつら、明日の天気が少々気にかかるけど、地図を眺めながらシュラフの中ですやすやと(大イビキを聞いたのは狐か狸か・・・)眠りについた。

9月23日
 
 
写真は1日目のサイト。山荘には結構宿泊客も多かったようだが、キャンプ場は僕1人。

テント撤収、来た道をまた四苦八苦して帰り、バイクに荷をくくりつけて、出発。

南へ向かう。ポツポツときた雨が、あっという間に本降りに変わった。ゴアジャケットの上にカッパを着る。レイングローブの裾は必ずカッパの下に入れましょう。こうしないとまず間違いなく袖口から浸水してきます。

 てなことを偉そうにいいつつも、買出し、一服するたびに、または雨が止んだといっては繰り返すこの儀式はきわめて面倒!
全部着ちゃってからヘルメットのバックル留めるの忘れていたりしたらガッカリしますよねえ。手袋2重ではなかなかできません。

食料買出しは酒、たばこを一緒に売っているところを素早く見つけるべし。


 
 
雨、雨、雨。今日は1日降っていた。

 小谷村を抜け、白馬村へ。猿倉荘まで行くが先のダート(登山道?)はなにやら行かないほうが良さそうな雰囲気、視界の悪さにもうんざりし始め、八方尾根方面の林道もキャンセル。

 こんな時は早くテント張ってゆるゆるしたほうがよさそう。

 組の赤貧さんがBBSに書き込んでいた青木湖近くのスキー場リフト最高所を目指し、池ノ平から細い林間の舗装道を上っていく。

 頂上付近、NTTアンテナを過ぎたあたりに右へ行くダートがあり、すぐに空き地があったが巨大な水溜り状態。GSと一緒に水泳は×そそくさと引き上げ、ダートを走り続ける。
 
 リフトを探すが、ひどくガスっていて視界は極めて不良。しかたなく人も車も来そうに無いので林道脇を今夜の野宿地に決定!大人しくなった雨の中、天幕を張る。


 
 
早々に晩飯を終え、いつもの麦酒と缶チューハイで、ほろ酔い気分。

 携帯を見るとオオッ旗が全部立ってる。前述の赤貧氏にすかさず電話。

スキー場リフト絶景地はすぐ傍だったらしい。

 初めて旅に持ち出したCDプレーヤー、CD-Rに焼いたのは『ステアケース:キース・ジャレット』 『アンプラグド:エリック・クラプトン』 『テン サムナーズ テールズ:スティング』 
 演歌はありません。

 キースが奏でる澄み切った音の中に、廻りめくさまざまな想いがゆっくりと脳裏の深淵へと沈んでいった。


 夜半、重くのしかかるものに目が覚めると激しい雨がフライを叩いていた。


9月24日

 
 野宿地を離れ、南へ向かう。

 エンジン(?)が吹けない。

エンジンオイルを確認すると、かなり減っていたので、親切な叔父さん叔母さん夫婦のガススタでとりあえず10w-30オイルを入れ、プラグ、キャブも点検する。症状が軽くなったような気もしたが完治せず。

登りではまったくスピードがあがらず、お先にどうぞと急ぐ人たちに道をお譲りする。

 ありゃ!
グ、グリップだよ。シュロス神戸の○木さん馬鹿なことでрオてごめん!! 

今までのバイクでも雨の日にグリップが抜けたり、ユルユルになったりしたことはあったけど、さすがBMW?!、ゴムが粘ります。

馬鹿みたいだけど、basicの重いアクセル(リターンスプリングを無理やり引き伸ばす荒業があるんですけど怖くてやってません)、グローブ二枚重ねも相まって微妙なんです。

小降りになったとたん何も無かったように快調になった。

あたり前・・・


雲が竜のように明るくなってきた空に向かって谷筋を昇っていく。明日は陽の光を浴びれそうだ。
雨具を脱ぎ放ち、湿りきった体を疾風にさらす。



 
 野麦街道を西に、峠の茶屋蕎麦を食い、今宵の宿を探す。

 オートキャンプ場の温水シャワー付ってのにもググッとひかれるが、脇道林道に入り込みしばらく走ったところにテントを張った。

 今宵はうだうだと本でも読むべかと、手探りでザックの中からいつもの一冊をを取り出す。

開高健『輝ける闇』陰鬱で脂ぎった好きな一冊だ。


 半ばまで読み進んだころ、また雨粒がテントを叩きはじめた。しかし長くは続かない。

 テントのひさしに貯まった雨水を避けながら、湿った重苦しい冷気の中に出てみると、黒い雲の隙間から蒼い星がほんの一瞬輝いた。


9月25日


 一宿の野宿地に別れを告げ、野宿街道を引き返す。
 
 上高地乗鞍林道を快調なGSを駆りたて高度を上げていく。行く先は白骨温泉公共露天風呂。

しかし道路工事無情の通行止め。

工事のお兄さんがここから行くことは出来るけどと散策道を指差したが、そこはちょっととご遠慮申し上げた。

 少々の出費は伴うが泡の湯旅館の白濁した湯にとっぷりと身を浸す。湯上りに乗鞍の風が清々しい。

 


 
雲間から雪を頂いた乗鞍が顔を出す。残念ながら一般車乗り入れ禁止、畳平には行けないが、数年前行った時のあの人の多さを考えると致し方ないことか。

陽の光を浴びて輝く白樺の林を走り抜け、再び野麦街道へ、月夜沢林道を目指す。



                   月夜沢峠

 峠までのダートは適度に荒れ、明るい日差しとともに、久し振りにエキサイティングな走りを楽しめた。あっという間に峠に着いてしまった。

絶景だ!! 北に穂高連邦、南に御岳。

風も乾き、2日間の湿りっ気を吹き飛ばしたくなった。

テント、シュラフ、カッパを、広場にがばっと広げ、尾根をいく風にさらす。

 もうここに泊まろうかなと考え始めたころ、北側からジムニーでやってきた村の議員風テンガロンハット親父に『ここにテント張るのか、ここは風が強いし、冷えるぞ。熊も今年は多いからな』と有難いお言葉をいただく。ぬぬぬ、思案のしどころ・・・・




穂高連峰

 
 
峠には『これより先テント設営禁止』の立て札があったので、公儀のお言いつけは守らぬわけはいかぬと、遠慮気味にその手前にテントを張った。

 遠くにそびえる高い峰々を様々な色に染めながら、陽はとっぷりと暮れていく。

 テントにもぐり込み、腹を熱々のカレーで満たし、麦酒と焼酎で脳を心地よく麻痺させ、少々熊に怯えつつも外に出てみた。

・・・・・・

こんなにいっぱいの星を仰ぐのは何時からだっただろうか。

焚き火もせず冷たい土の上に酒で火照った身を横たえる。


 夜半過ぎ、東の空から星が流れ始めた。大きく長く流れたひとつはパアッと閃光を放つと二つに分裂し、西の空に消えていった。

 何かを悟るべきなのか、もう50も近い白髪まじりの男は何も願うまいと、ただただ星を見上げていた。

                                   



続く・・・

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