ILSアプローチの際APPモードを使用しますが
こんな落とし穴がある事は知っていましたか?

ILSアプローチ中、追い風が強くなり反対側のランウェイから
降りる事を決意。APPモードを解除しようとするが……!!

伊丹空港RWY32LへILSアプローチを行なっていました。高度が下がるにつれ
北寄りの風が東側に回り込み始めました。PFは舌打ちして「14Rへ回ろうか」と
つぶやいています。現在シップは自動操縦によりアプローチしており、既に
ローカライザーとグライドスロープはキャプチャーしています。
「やっぱ回ろう。リクエストRWY14って言っといて」とPFがオーダー。PNFは
“request circling approach to RWY14”と大阪タワーへ通報します。許可
されました。「よし、APPモード外して」とPF。PNFはAPPモードをディスエンゲージ
しようとMCPに手を伸ばしました。“よし、APPスイッチを押してっと……”PNFは
APPスイッチを再度プッシュしてAPPモードを外そうとしました……が次の瞬間
頭の中が??となります。「あれ、外れない」PNFがそうつぶやくとPFは
「何やってんだよー!!んな事したって外れるわきゃねーだろ」と罵声を浴びせます。
「あっそうでした。別のロールモードかピットモードにすればいいのですね」
PNFはそう言いながら素早くHDGセレクターをプッシュしてHDG SELモードを
入れようとします。しかし反応がありません、APPモードは依然入ったままです。
「えっ!?うそ……」PNFはすっとんきょうな声をあげます。素早くV/Sスイッチを
押して今度はピッチモードをバーチカルピード・モードへ変更しようとします。
が今度も入りません。PNFが左を向いてPFに懇願するような表情を見せます。
「バカヤロー!こうすんだよっ!!」PNFは一瞬鬼のような形相でPNFを睨んだあと、
操縦桿を握りしめていた左手の親指でA/Pディスコネクト・スイッチを2回プッシュ
して自動操縦を外します。もちろんこの時点ではAPPモードは入ったままです。
「FD」PFはPFDのFMAを見てステータスがCMDからFDに変わった事を確認します。
「ボスFDオフ」PFは右手を伸ばし機長席側・副操縦士席側両方のFDスイッチを
一旦OFFにし再度ONにします。
するとAFDSがデフォルトのHDG HOLDモード・V/Sモードに変わりました。V/Sは
モードがチェンジした際の降下率700FPMを示します。
PFは「アルトセルを1500にセットして」とPNFに指示を出すと共に自らHDG
セレクターを回して270にセットし、HDGセレクターをプッシュしてHDG HOLD
モードからHDG SELモードへ移行させます。
PFはFDの指示に従いシップをHDG270度へ向けます。1500FTでV/Sモード
から自動的にALTモードへチェンジ。PFはライト・ダウンウインドへシップを
導きます。
2.5マイル幅のダウンウインドをとり、右旋回、ファイナルに入ります。伊丹の
RWY14側は山が迫っている為、ファイナルの区間が短いので大変です。
センターにアラインしました。
フレアーが足りないので落着ぎみでしたが何とか着陸しました。このあと
デブリーフィングでPNFはPFからこってりと絞られました(^^)


APPモードがアームしている場合

APPモードがアームしている時(PFDのFMAのロール&ピッチ・アームド・モード・ディスプレーにLOCとG/Sがホワイトで表示されています)は、再度MCPのAPPスイッチをプッシュする事によりディスアーム(アームが解除される事)されます。この時は今エンゲージされているモードが引き続き機能します。

PFDのFMA

SPD HDG SEL ALT
LOC G/S

MCPのAPPスイッチを再度プッシュ

SPD HDG SEL ALT


LOCのみエンゲージしている場合

APPスイッチがプッシュされていてローカライザーのみをキャプチャーしている場合(G/Sはアーム状態)、LNAV以外のロールモード(例:HDG SEL,HDG HOLD)をエンゲージする事によりAPPモードが解除されます。


PFDのFMA

SPD LOC ALT
G/S

(例)MCPのHDGセレクター下の
HDG HOLDスイッチをプッシュ

SPD HDG HOLD ALT

G/Sのみエンゲージしている場合

APPスイッチがプッシュされていてグライドスロープのみをキャプチャーしている場合(LOCはアーム状態)、VNAV以外のピッチモード(例:V/S,FLCH)をエンゲージする事によりAPPモードが解除されます。*ただしエアライン・ポリシーとして、FAF(ファイナル・アプローチ・フィックス)をインバウンドしてからはFLCHの使用を禁止しているところもあります。FAF以降で確実に降下できるのはV/Sモードだからです。


PFDのFMA

SPD LNAV G/ S
LOC

(例)MCPのV/S
スイッチをプッシュ

SPD LNAV V/S

LOCもG/Sもエンゲージしている場合

問題はこのようにAPPモードがエンゲージしている時です。再度APPスイッチをプッシュしてもAPPモードはディスエンゲージされないし、他のロールモードやピッチモードをプッシュしても操作を受け付けず、APPモードはエンゲージされたままです。はて、何で??実は容易にAPPモードが解除される事のないよう保護されているのです。APPモードをディスエンゲージするには、次の2通りがあります。

@TO/GAスイッチをプッシュしてゴーアラウンド


トガスイッチをプッシュするとAFDSはゴーアラウンドモードに入り、APPモードが解除されます。但し着陸復航なのでMCPのALTウインドウにプリセレクトしたミストアプローチ・アルティチュードまで機体は上昇します。

PFDのFMA

SPD LOC G/S

TO/GAスイッチをプッシュ

THR REF TO/GA TO/GA

AA/Pディスエンゲージ(自動操縦を使用しているとき)、FDオフ

全ての自動操縦を解除してマニュアル操縦に切り替えます。次にFDスイッチをオフにします。これでAPPモードは解除されます。ここで注意したいのは、自動操縦を使用しているときは、FDスイッチをオフにしただけではAPPモードは解除されない、という事です。FDスイッチをオフにしただけでは、FDがPFD画面から消えるだけでFMAはそのままだし、APPモードは継続してエンゲージされます。この一連の操作の後、再びFDスイッチをオンにします。するとロールモードはHDG HOLD、ピッチモードはV/Sとなります。後は希望するモードをエンゲージし直せば、別のモードで飛行する事が出来ます。例えばトラフィックパターン高度で水平飛行に入って右にブレーク(コースを逸脱する事)したい時は、V/SモードをエンゲージしてALTウインドウに水平飛行へ入る高度をセットし、HDGウインドウに希望の方位をセットしてからHDGセレクターをプッシュします。こうすれば最初はV/SモードとHGD SELモードで飛行し、ALTウインドウにセットした高度(MCP ALTと言います)に到達した所でV/SモードからALTモードに変わり水平飛行に入ります。

PFDのFMA

SPD LOC G/S

A/Pディスエンゲージ
FDオフ

SPD

FD再度オン

SPD HDG HOLD V/S

(例)V/Sスイッチをプッシュ
HDG SELをプッシュ

SPD HDG SEL V/S

研究

今、B747−400は松山空港R/W32へ向けて最終進入を開始しようとしています。今日は視程があまり良くないので、R/W14へILSを使用して途中まで下りて、ランウェイをインサイトしてから右にブレークしてトラフィック・パターンに入る方法をとります。さて、今シップはILSコースに入ろうとしています。管制からILS進入が許可されました。ここで問題です。パイロットはどのような方法でILSに乗ればよいでしょうか?

APPモードを使用するのでしたら、ランウェイをインサイトすると同時に上のA番の方法でAPPモードを解除する事が出来ます。しかし実際にはこういうアプローチ(ILSサークリング・アプローチ)でAPPモードを入れる事はありません。MCPのAPPスイッチの上にLOCスイッチがありますよね。これを使用して降ります。LOCスイッチはILSのローカライザー電波だけが備わっている滑走路へ降りるときに使用するもので、ロールモードはLOCモードで、そしてピッチモードはパイロットの希望する任意のモード(大抵V/Sでしょう)で降りるものです。しかし今回のようにILSサークリング・アプローチを行なうときにもLOCスイッチを使用します。というのは、このLOCモードは、他のモードと同様にいつでも他のモードにすぐに変更する事が出来るからです。
さて、まずトラフィックパターン高度である1200FTをALTウインドウにセットし、LOCスイッチをプッシュしてローカライザーモードをエンゲージします。そしてグライドスロープ・デビエーション・ポインターがスケール中央に来た時にピッチモードとしてV/Sモードをエンゲージして妥当なバーチカル・スピードで降下していきます。そしてランウェイをインサイトしたらHDGセレクターのツマミを回して希望するHDGをセットしてからセレクターをプッシュしてHDG SELをエンゲージします。これでローカライザーモードはキャンセルします。