TCAS概要


TCASに関連するスイッチ

*注1*TCAS RAバーチカルコマンドはオプション装備であり、エアラインによって
     装備/未装備の会社がある。日本ではA社は未装備、J社は装備してい
     る。
*注2*TCASモードセレクターに『ABV』(Above)『BLW』(Below)の2ポジションを
     追加している会社があるが、これはエアライン・オプションである。

TCASはATCトランスポンダーパネルのモードセレクターを所定の位置にセットする事によりアームされます。又EFIS C/P(コントロールパネル)のNDレンジセレクター表面カバー上のTFC(トラフィック)スイッチをプッシュする事によりNDにTCAS情報が表示されます。

TCAS RAピッチコマンド及びバーチカルコマンド(パーチカルガイダンス)はPFDに表示され、TCASシンボルやデータタグ、TCASメッセージはNDに表示されます。又、人工音声によるボイス・アナウンスはコクピット内のスピーカーより発せられます。

《ATCトランスポンダー》

TCASをアームするには、トランスポンダーのモードセレクター(TCASモードセレクター)を『TA(ONLY)』若しくは『TA/RA』ポジションにセットする必要があります。トランスポンダーを所定の位置にセットするのは離陸直前の滑走路に進入する前、そして『OFF』(実機ではSTBY:スタンバイ)ポジションにするのは着陸後、滑走路を出る時です。

@『TA(ONLY)』を選択した時

TCASはTAモードのみがアームされます。このモードにした時は、TA情報(付近を航行中の他機の情報)だけがNDに表示されます。RA情報(回避指示)はPFDに表示されず、回避が必要な時にも回避指令は出ません(RAの作動範囲に他機が侵入してきても、TAとして扱われます)。

A『TA/RA』を選択した時

TA情報及びRA情報のいずれもが表示されます。通常のFLTではこのモードを使用します。

B『OFF』を選択した時

TCASは作動しません。EICASにTCAS OFFメッセージが表示されます。

C『ABV』を選択した時(『ABV』モードはエアライン・オプションです)

TA情報及びRA情報のいずれもが表示されます。TA/RAと違う点は上方向の守備範囲が広くなっており、自機よりも7000FT高い所を飛行している航空機まで探知する事が出来ます。

D『BLW』を選択した時(
『BLW』モードはエアライン・オプションです)

TA情報及びRA情報のいずれもが表示されます。TA/RAと違う点は下方向の守備範囲が広くなっており、自機よりも7000FT低い所を飛行している航空機まで探知する事が出来ます。

《TFCスイッチ》

NDにTCAS情報(TCASシンボル、データタグ)を表示させるにはEFIS C/PのTFCスイッチをプッシュしてTFCモードにしなければなりません。TFCモードにすると、ND左下に青色でTFCと表示されます。TFCモードにしていなくても、ATCトランスポンダーが『TA(ONLY)』若しくは『TA/RA』あるいは『ABV』や『BLW』モードにセットされていれば、TA/RAが作動する範囲内になるとND右側に『TRAFFIC』というTCASメッセージがアンバー(TAモードが作動した時)若しくは赤色(RAモードが作動した時)で表示され、人工音声の「トラフィック、トラフィック」というアナウンスがスピーカーから流れますが、NDにTCASシンボル等のTCAS情報は表示されません。

《TCASシンボルとデータタグ》

OTHER TRAFFIC:他機
PROXIMATE TRAFFIC:接近機
TRAFFIC ADVISORY:TAゾーンに侵入した他機
RESOLUTION ADVISORY:RAゾーンに侵入した他機
<例>
+12
DATA TAG:他機との高度差を100FT単位で表示。
『+』の時は他機の方が高度が高い事を示す
<例>
 ↑
DATA TAG:バーチカルモーション・アロー。他機の
上昇・降下率が500FPM以上の時に表示。
『↑』の時は他機が500FPM以上で上昇中である事
を示す

TCASシンボルは4種類あります。自機から40マイル以内7マイル以上を高度差2700FT以内で航行中の他機は、通常◇シンボル(縁のみ白色)で表されます。自機から6マイル以内で高度差1200FT以内を航行中の航空機は◆シンボル(全体が白色)で表示されます。TAが作動する範囲内まで接近(以後TA状態と表現します)すると●シンボル(アンバー色)に変わり、更にRAが作動する範囲内まで接近(以後RA状態と表現します)すると■シンボル(赤色)に変わります。

TCASシンボル機(ND上にTCASシンボルで表示された航空機)のトランスポンダーが高度送信機能を有している場合(旅客機であれば付いています)、TCASシンボルの周りにデータタグがTCASシンボルと同色で表示されます。まず、自機とTCASシンボル機との高度差がデータタグとして100FT単位で表示されます(下2桁は省略して表示)。この時、TASシンボル機の方が高度が高いとTCASシンボルの上側に+マーク入りで高度差が表示され、TCASシンボル機の方が高度が低いと下側に−マーク入りで高度差が表示されます。又、TCASシンボル機が500FPM(フィート/分)以上のバーチカルスピードで上昇・降下している場合、バーチカルモーション・アローという矢印がTCASシンボルの右横に表示されます。矢印が上を向いていれば上昇中、下を向いていれば降下中である事を示します。