BBC - Sold on Song

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Richard Allinson - Interviews (November 2003)


パディ・マクアルーンは1977年にニューキャッスルでプリファブ・スプラウトを結成した。デビューシングルは自分達で作ったレコード会社、キャンドルレコードでプレスされ、その曲は才気ばしってはいたが、フランスのリモージュに引っ越したガールフレンドについて歌った真摯なラブソングだった。タイトル「Lions in My Own Garden (Exit Someone)」の頭文字をとるとリモージュ(Limoges)になっている。デビュー以来、パディはイギリスの才能あるミュージシャン、エルビス・コステロとよく比較されてきた。一筋縄でいかない創意に富んだ歌詞、予測できない複雑なコード進行は、愛、人生、そして成功についての鋭い風刺を際立たせ、(トーマス・ドルビーに功績によるところが大きい)華麗な音作りはその鋭利さをやわらげる。コステロほど辛らつではなく、コール・ポーターよりはとっつきにくい、にもかかわらず、プリファブ・スプラウトはこれまでに確固たる才能を示してきた。

「Appetite」

(アルバム『スティーブ・マックイーン』)



自分達で作ったレコードの中でも気に入っている作品の一枚。ときどき作った作品を自慢して、素晴らしいレコードではないかもしれないけど、上品ないい作品だって思うことがあるだろう?でもこの作品に関しては、まったくなんて素晴らしいレコードなんだ!って言わせてもらうよ。だってこのレコードは僕が作ったものじゃないからね。アルバム『スティーブ・マックイーン』はトーマス・ドルビーが作ったものだと僕は思ってる。ファーストアルバムの『Swoon』とは違ったやり方で、このアルバムの音作りは細部に至るまでトーマスの繊細な装飾が施されていて、本当に大きな役割を担ってくれた。そこいらにあった曲を素晴らしいものに仕上げてくれたんだ。いや謙遜して言うんじゃないよ。僕はいつだって『スティーブ・マックイーン』はトーマス・ドルビーの功績でできた作品だって思ってた。紛らわしいことに、このアルバムはマックイーンの遺族が抗議してきたから、アメリカでは『Two Wheels Good』ってタイトルになってる。プリファブ・スプラウトってタイトルのレコードがあって、僕が不服を申し立てたら、他の国ではタイトルを変えなきゃならないってことなんだろうけど、ホィットニー・ヒューストンならこんなことはありえないよ。だって彼女の名前はイギリスの北東部(パディの故郷)でもよく知られてるからね。

「Cars and Girls」

(アルバム『ラングレ-パークからの挨拶状』)



僕は音楽で何かを批評するのにもひねりを入れるのが好きなんだ。マーガレット・サッチャーやトニー・ブレアや他の政治家についてだったら誰だって何曲でも好きなだけ書ける。彼らは格好のターゲットになるからね。でもロックの神様の一人に向かって、その人の作るレコードをからかうようなことは許されないことだとされている。僕はスプリングスティーンの作った何曲かは好きだし、特に「Born To Run」は大好きなんだ。ファンタスティックなレコードだと思ってる。でもこの曲ではちょっと批判的にからかってみた。それほどヒットした曲じゃないけど、ヒットした曲のように思われてることについてはとても満足してる。今でもラジオでは僕の書いた他の曲よりもよくかかってるしさ。

「Life Of Surprises」

(アルバム『プロテスト・ソング』)



「Life Of Surprises」はおかしなことにまったく違うムードの曲の「King Of Rock'n Roll」と丁度同時期に作られていて、全体的に憂鬱な感じの曲になってる。曲を作ってて、デモテープの出来がとてもいいんだけど、ちょっとした理由で違う感じに仕上げてみたいと思って、いろいろ試したくなることってあるよね。僕らは『ラングレ-パークからの挨拶状』を作らなければならなかった。だからそれとは違ったスタイルでやることを念頭においてたんだけど、まったくその作業ができなくて、そして結局は『プロテスト・ソング』としてそのまま出したんだ。本当に馬鹿げてるよね。だってこのアルバムは今聴いてもかなりエキサイティングに思えるんだから。 実質的にはデモテープで、「Life Of Surprises」はこれで仕上げだということを意識して作られたものじゃない。生まれ故郷のニューキャッスルで録音した曲なんだけど、まあ言ってみれば、完全な仕上げを施さない方がいい場合もあるってこと。ファンならわかってくれると思うけど、アーチストをやってると、自分自身を見失うようなことがときどきあって、それが僕らにも起こったんだ。でもこれはエキサイティングなレコードだよ。

「I'm A Troubled Man」

(アルバム『The Gunman And Other Stories』)



ジミー・ネイルのために書いた曲の中のひとつ。頼まれ仕事をしたのはよかった。だって仕事がなけりゃ、自分だけの世界に篭もりがちになってしまうからね。1990年代の中頃、ジミーとは何度か仕事をすることがあったけど、この曲は僕の最も率直でストレートな曲のひとつだ。自分でも誇りに思うよ。レコーディングする段になった時も、歌ってて楽しかった。僕らのたくさんのレコード、そうプリファブ・スプラウトのレコードでは自分のボーカルが悩みの種だった。僕は自分の声が好きじゃない。だから自分の声には神経質になるんだけど、この曲を歌ったことにはとても満足してる。僕はジミー・ネイルを知らなかった。ジミーが突然仕事を頼んできた時、正直言って、僕にはとてもありがたかった。だって当時の僕はジミーが頼んできたようなものとはまったく違うとても複雑な自分自身のいろんなプロジェクトがうまくいってなかったからね。ジミーはカントリーソングだってことさえ言ってくれなくて、ただニューキャッスルのタイン川沿岸出身のソングライターがナッシュビルに行ってスターになるTVドラマを作りたいって言ったんだ。僕がやってたこととまったくかけ離れてるように思えたから、僕はただ座ってナーバスになってる自分から抜けだすいい機会だと思って、たくさんの曲をすごく早く書き上げた。自分自身の仕事と見事なコントラストになってることに気付いて、そのことがこの頼まれ仕事をするのを本当に楽しませてくれたんだ。

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