My Life In Music

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LAY LADY LAY

Bob Dylan 1967



1970年、13歳だった僕は母親が持っていたネックの長いスパニッシュギターの弾き方を教わっていて、学校ではしゃがれた酔っ払い声のボブ・ディランのこの曲を聴いていた。年上の少年達のお気に入りのレコードだったんだ。とてもかっこよくて、何でこんなことができるのか僕にはわからなかった。ゴージャスなレコードだよ。バレコード(人差し指で弦を押さえて和音を出す奏法)を習っていた13歳の少年にとっては指がつりそうな曲だしね。でも当時はこの魅力的な響きには気付いてなかったと思う。

MINGUS

Joni Mitchell 1979



彼女のレコードでは”The Hissing Of Summer Lawns”が一番好きだけど、僕は自分にできないことに惹かれるんだ。このレコードの1小節を腰を落ち着けてじっくりと演奏することが僕にはできないかもしれない。ジャニスのことをよく知っているわけではないけど、このレコードには素晴らしいものがある。”The Hissing Of Summer Lawns”は最高の曲さ。でも作曲家として、僕は自分にないものを追い求めていて、このアルバムは僕に楽しみを与えてくれるんだよ。

STATION TO STATION

David Bowie 1976



みんな当時のボウイはノイ!(Neu!)みたいなバンドの影響を受けてるっていうけど、この頃はまだギターリストのカルロス・アロマーと一緒にファンキーなこともやってた。2つのことを同時にやっていた端境期のようなサウンドで僕は気に入っている。冷たさと熱情をあわせ持つ神秘的な音楽で、エモーショナルな無人地帯といったところかな。この時代のボウイに戻って欲しいとは思わないけど、他のどこにもない見事なレコードだよ。

RIDE A WHITE SWAN

T.REX 1972



僕はこのレコードを崇拝していた。カソリックの神学校に行ってた時、僕より1歳年上の少年が僕を脇に連れ出して「この曲は子供向けのバブルガムだから演奏するな」って忠告したんだ。これはバブルガムであって、プログレじゃないって言ってたっけ。でも僕はこのレコードに親しみを感じてた。マーク・ボランがフォークロックだったティラノザウルス・レックスからグラムロックのT.Rexになって、Top of Popsで大躍進していく移行期は僕の人生における大きな楽しみのひとつだったよ。

SHAVED FISH

John Lennon 1975



“Cold Turkey”、”Instant Karma”、”Power To The People”、”Woman Is The Nigger Of The World”など全曲がシングル曲のようなレコード。ジョンの最後の時期に作られた”Starting Over”のような優しい感じの曲が数曲、このアルバムからこぼれ出たけど僕はこの最初のベスト盤が好きだ。このレコードにはジョンのひとつの決意とそれをみんなに届けようという気持ちが込められている。この時期にフィル・スペクターと組んで一緒に作品を作り出したっていうところもいいよね。

NESSUN DORMA ("誰も寝てはならぬ" 歌劇『トゥーランドット』より)

Puccini 1926



くつろいだ感じのとてもゆっくりとした進行のメロディが大好きなんだ。感動を得るために歌詞の内容を知る必要もないってのが、それを何よりも裏付けてるよね。取るに足らないありふれたことを歌っているのかもしれないけどゴージャスに聴こえる。作曲家はこういったことを重要視しないけど、誰かに歌を覚えてもらって口ずさんでもらうアイデアにもなるんだ。こんな最も神秘的な才能をプッチーニは持ってた。

SGT PEPPER’S LONELY HEARTS CLUB BAND

The Beatles 1967



“Lovely Rita”のようなファンタスティックではない普通の曲も少しばかりあるけど、アルバム全体の魅力がそれらの曲を凌駕してる。”A Day In The Life”におけるポール・マッカートニーのベース演奏には驚くべき雰囲気があるよ。『リボルバー』の頃からそんな演奏をしてたって言われるけど、このアルバムでのカノンの素晴らしさは賞賛に値すると思う。ビートルズはいつでも僕のそばにあった。クリシェ(使い古された表現)みたいなものかもしれないけど、そこがクリシェたる所以なんだ。

SNOWFLAKES ARE DANCING

Isao Tomita 1974



クロード・ドビッシーの作品をシンセサイザーを使って再構築した作品。1974年に初めて聴いた。懐かしく思うけど、この作品にはノスタルジー以上のものを感じる。ドビッシーの曲にふんだんに遊び心を加えているけど、それはドビッシーが持っていた芸術性を尊重したものなんだ。レコードの質感は豪華で、ちょっと洗練されていないところがあるとは思うけど、コンピューターを使って自分の思い通りのサウンドを作るのは簡単なことじゃないからね。そんな理由もあってこのレコードが好きなんだ。

JESUS' BLOOD NEVER FAILED ME YET

Gavin Bryars 1972



トム・ウェイツが参加したバージョンもあるけど、本物の浮浪者と偽者の浮浪者が一緒に歌ってるんだから、あれは大きな間違いだと思う。奇妙な境遇に陥ったひとりの男が歌う歌をループして作られた作品で、オリジナル・バージョンの方は別の違うレコードの中でこの曲が流れているような感覚を引き起こすんだ。この曲には現実にはありえないある種の荘厳さがある。

SAD-EYED LADY OF THE LOWLANDS

Bob Dylan 1966



ボブ・ディランは1曲の中で1小節目から別のある地点にたどりつくのにこんなに長くなったって言ってる。覚醒剤か何かが作用して長くなったのかもしれないけどね。でも僕はこの曲が11分29秒もあることに感謝してるよ。だって3分半しかなかったら、何度もレコードの針を戻さなきゃいけないからね。一般常識に対する抵抗。そこが気に入ってるんだ。

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