METRO (Oct.13, 1999)

by VICTORIA MOORE


記事:ヴィクトリア・ムーア(METRO 誌 1999年10月13日)



2年前、プリファブ・スプラウトは1980年代以来の沈黙を破ってニューアルバムを発表し、大喝采を浴びた。彼らは今、グレーテストヒッツ「38カラットコレクション」をリリースしようとしている。ここでは、42歳になったシンガーソングライター、パディ・マクアルーンが何故ダーラムの工業都市に暮らすことを選び、フリータイムをどのように過ごしているのかを語ってくれている。


●ロンドンの最初の思い出はどのようなものでしたか。

60年代に両親に連れられて来たよ。両親は僕をLyonsの街角のティーショップに連れていってくれた。お決まりの観光コースを回ったりはしたけど、今でも憶えているのはトラファルガー・スクエアの鳩くらいなものだね。


● 好きなホテルは?

ケンジントンにあるThe Goreというホテルにはよく泊まったよ。もちろん、The Columbiaみたいにロック・スター御用達のホテル(少なくとも80年代はね)もあったけど。当時のバンドはみんなそこを使っていたんだ。Frankie Goes To HollywoodやLloyd Cole&The CommotionsにNoddy Holderなんかが、そこのバーによくいたものさ。


●北部の魅力とは何でしょう?

僕にとって、周囲の環境はそれほど重要ではないんだ。陳腐な表現に聞こえるかも知れないけど、僕は自分の理性の中に生きている。僕は常に野心的だった。すごく限定的なかたちでね。人に感動を与えられるものを書いたり創ったりしたいという願望はいつも抱いていた。まともに考えてみれば、そういうものを人々にもたらすには沢山の仕事をこなさなくちゃならない。例えばスティングはニューキャッスル出身だけど、そこに住んではいない。でも僕はセールス重視のやり方には、いつも違和感を感じてきた。もし、家で仕事ができて外に出ないで済むのなら、そうするよ。


●どんな音楽が好きですか。

ポップ・シーンてやつには全然ついていってない。僕は42歳だけど、ある年齢を過ぎると、全て過去に見てきたような気がするものさ。世代交替なんかを認識したりするんだ。今はビートルズみたいなクラシックを聴くことが多いね。


●一番の贅沢は何ですか。

僕は車を持ってないから、以前はもっぱらバスを使っていたんだけど、今はタクシーに乗る癖がついてしまったよ。そこに一番お金を使っているかな。


●今どんな本を読んでいますか。

Cyril Connollyの『Enemies Of Promise』だ。これはとてもいい。彼の文章は素晴らしいよ。スタンリー・キューブリックについてのFrederic Raphaelの本も読みなおしているところだ。彼はスノッブだね。キューブリックの家から戻った彼は興奮と緊張のあまり、日記をフランス語で書かずにはいられなかった、というくだりがあるんだ。僕も自分なりのフレーズを考えた。もし僕がものすごく興奮したら、『2階にあがってフランス語で日記を書くんだ』って言うよ。


●80年代に置いてきてよかったと思えることは何ですか。

80年代と聞くと、青いスーツのマーガレット・サッチャーとダイアナ妃を思い浮かべるね。でもダンス・リミックスを今に引きずらなくてよかったよ。あの頃はダンス・リミックスを出すのが義務みたいなものだったからね。


●スパイス・ガールズは好きですか。

僕は純粋主義だからね。Geriが脱退してから興味が無くなったよ。


●ロンドンではどんなところに行きますか。

チャリング・クロス・ロードには本を買いに行くよ。ごみごみしてるけど、W&G Foyleも好きだ。初めてロンドンに来たときは天国だったな。無秩序なところだなんて思いもしなかったよ。本当に気に入ったんだ。今では弟がBrightonに行くときに、彼に本のリストを渡して買ってきてもらうことが多いけど。あそこにはとてもいい古本があるからね。


●一番最近の夜通しのパーティはいつのことですか。

あまりにも昔のことで思い出せないよ。今じゃ1ヶ月と1年1ヶ月になる子供たちの相手をするのがそれにあたるかな。40歳までずっと独身だったのに、まるで人生が止まってしまったみたいだよ。僕が受けたショックを想像できるかい!


●詩は読みますか。

最近まで詩には全く興味がなかったけどね。今、T・S・エリオットを急いで読んでるところさ。Alfred J Prufrockの『Lovesong』は好きだよ。無人島にもっていくとしたらW・B・イエーツの『He Wishes For The Cloths Of Heaven』だろうね。『I have spread my dreams under your feet/Tread softly because you tread on my dreams(私はあなたの足元に私の夢を広げた/だから私の夢の上を優しく歩いて)』という一節が大好きなんだ。


●一番最近観た映画は何ですか?

『アイズ・ワイド・シャット』だ。一般的な評価はちょっと厳しかったけど、観れば驚くよ。ニコール・キッドマンが人気をさらってしまったっていう評価があったけど、同意できないな。トム・クルーズがすごく良かったと思うよ。


●演劇は?

僕はステファン・ソーンドハイムの大ファンでね。彼の『A Little Night Music』は傑作だよ。イングマール・ベルイマンの『夏の夜は三たび微笑む』という映画にとても忠実に基づいている。映画のほうを観たいという気にはならないんだけど、それは音楽や台詞を聴いてしまったら、もう頭のなかで観たのと同じことだから。


●自分の曲で一番好きなのはどれですか。

お気に入りっていうのはないな。ラジオで『When Love Breaks Down』がかかるのは結構なことだと思うけど、僕は自分の曲に対してはクールなんだよ。


●一番最近タクシーの運転手と交わした会話は?

学生を最高に嫌っている運転手だったな。ウォッカで泥酔していたうえに料金を払おうとしない学生がいたんだって。彼はその運転手に脅しをかけて、警察に向かう途中で飛び降りて逃げたそうだ。携帯電話を置いたままね。運転手は僕にその携帯電話を5ポンドで売りつけようとしたよ。




以上 翻訳:Mr. N


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