アンドロメダ・ハイツ最初のインタビュー

パディ・マクアルーン



Paddy McAloon interview, 22nd January '97
Q: どうして7年もかかったんですか?
A: (クスクス笑いながら)実際にはレコードになったものよりたくさんの曲を書いてるんだよ。
Q: でも、そんなに曲を書いたのならどうしてレコードにしなかったの?
A: 簡単には答えられないけど、いろんな中断やわき道があって、とうとう自分達のスタジオを建てることになったんだ。そういったこともすべては僕の作曲方法に関係してるんだけどね。
Q: その作曲方法ってどういうこと?
A: 1曲1曲違うモチーフでいろんな種類の曲を書くことができなくなったわけじゃないんだけど、ある一つのテーマを持った一連の曲を書きたいって思うようになったんだ。
Q: たとえばどんなテーマ?
A: クリスマス。
Q: クリスマス?
A: そう。
Q: クリスマスアルバムを作ったのなら、どうしてレコードにしてリリースしなかったのですか?
A: いくつかの理由があるんだ。まず曲を書くのに時間がかかった。満足できるようにアレンジしなきゃならなかいし、これは特別な時にリリースされるべき作品だってことも意識しなければならなかった。
Q: それはクリスマスアルバムはクリスマスにしか出せないってこと?
A: そう。でも僕らの所属しているレコード会社のSONYがプリファブ・スプラウトにそんなアルバムを望んでいるのかってことを考えると...。
Q: 仕事に取りかかる前にそのことを考えなかったの?
A: うん。でもレコード会社からあれこれ指図されないようにはしてるつもりなんだけどね。
Q: そんなに時間をかけた曲がレコードにされなかったのにどうやって生計を立ててたのですか?
A: いったん今までやってきたことをすべて白紙に戻して、新しいことを始めることにしたんだ。その何曲かは新しいアルバムの前に発表されてるよ。
Q: たとえば?
A: ジミー・ネイルが「クロコダイル・シューズ」シリーズで僕に何曲か書いて欲しいって頼んできたんだ。僕の曲が彼に合うかどうか心配してたんだけど、彼の要求してたものとは違ってもいいって思うことにした。 だから彼が歌ってる"COWBOY DREAMS", "LOVE WILL FIND SOMEONE FOR YOU" "BLUE ROSES"は、その後に作られることになったプリファブ・スプラウトのアルバムにもベーシックな部分で影響を与えていると思う。
Q: じゃ、ジミー・ネイルに書いた曲を自分でカバーすることもありえますか?
A: できればやってみたいね。
Q: レコード会社はあなたの曲がそんな風に他人の手に渡ってしまうのを見ていらいらしてたでしょうね。
A: それはむこうに聞く質問だよ。
Q: でもジミー・ネイルの「クロコダイル・シューズ」は100万枚を超えるヒットを記録しました。あなたは...(質問中に割り込んで)
A: (ジミー・ネイルに曲を)頼まれたのは本当によかった。あれは1994年の2月だったかなあ、僕は"EARTH: THE STORY SO FAR"という世界の歴史をテーマにしたアルバムを作ってるところだったんだけど、ちょうどその時できた曲をアレンジする作業に嫌気がさしてたんだ。僕は曲を作るのが大好きで、こういったインタビューも含めて(笑)、作曲以外の音楽に関わる作業をするよりも、ただ曲を作ってたいんだ。 僕のやってた世界の歴史というテーマはジミー・ネイルのスタイルとはまた全然違ったものだったから、僕は喜んで自分の作業を中断したのさ。
Q: じゃあ、プリファブ・スプラウトのレコードはすべて途中であきらめたわけ?
A: そう。
Q: なんでそんな奇妙なことをしたの?
A: なんでって?
Q: あなた自身やメンバーのマーティン、ウェンディー、所属しているキッチンウエアレコードやSONYもあなたのミュージシャンとしてのキャリアが危機にさらされてるって心配してたんじゃないですか?
A: "ヨルダン:ザ・カムバック”以来、僕はある事実と折り合いをつけたんだ。あらゆるレコード会社が了承してる事実とね。それはエジソンが最初のレコード盤を作った時からの了承済みの事項で、いわゆるマネールールってやつさ。
Q: でも私が言いたいことはあなたは他人に曲を提供する代わりに、自分自身のアルバムを作ることができたんじゃなかったのかということで...。
A: わかってるよ。ただ僕は"EARTH: THE STORY SO FAR"の作曲者として、野心的なレコードを作ることになるのを知ってる唯一の立場にあって、まあこの話をすると沁條ヤ以上はかかるんだけど、そこにはどうしても譲れないレコード会社との戦いがあるんだ。
Q: それは何のことを言ってるの?
A: (笑いながら)レコーディング費用さ。もし自分のしたいようにレコードを作るのなら、そのやり方での細部にいたる費用のすべてを正当化しなきゃならないし、アルバムはその支出をまかなえるように売れなきゃならないんだ。だから僕は"EARTH: THE STORY SO FAR"を客観的な立場から見て、僕らが作る時にレコード会社が必ず言ってくるであろういろんな反論に対処できないんじゃないかって思ったんだ。 
Q: たとえばどんな反論?
A: あらゆることにおいてさ。「誰がこんなレコードに興味を持つんだい?」ってことから「どうしてそんなに時間がかかるんだ」ってことまで。実際、まだ起こってもいない反論について考えるだけで疲れ果てて、ジミー・ネイルから話があったときには正直ホッとしたんだよ。
Q: 本当に?
A: ああ。1990年以来、僕は自分でもベストだって思う曲を書いてきた。「アンドロメダ・ハイツ」にもそのうちの何曲かは入ってる。"LET'S CHANGE THE WORLD WITH MUSIC"っていうアルバムの結構作り込んだデモテープも手元にあって、これは「ヨルダン:ザ・カムバック」の次のアルバムとして作ったんだけど、そのうちの2曲はウェンディー・マシューズっていうオーストラリアのアーティストがレコーディングしてる。
Q: どうしてそのアルバムを自分でレコーディングしなかったの?
A: 何か違うことをやってみようって思ったんだ。
Q: どういうこと?
A: 僕は次のアルバムについて決定する立場にあったんだけど、「ヨルダン:ザ・カムバック」のように大きな企てを持って作るんじゃなくて、もっとシンプルなものにしようって提案したんだ。「ヨルダン」のように19曲も作るかわりに、"LET'S CHANGE THE WORLD WITH MUSIC"の曲の中から一曲だけを引き伸ばして、1枚のアルバムを作ることに決めたんだ。
Q: あなたはそれをしたの?
A: やろうとした。
Q: でもできなかったんでしょ?
A: やったよ。でもそれは20から30の曲の断片からなるんだ。
 
Q: 率直に言って下さい。あなたは"LET'S CHANGE THE WORLD WITH MUSIC"というアルバムの準備をしました。
A: うん。
Q: それから別のアルバムを作るためにそこから1曲を取り上げました。
A: うん。
Q: それからあなたはそれをアレンジするのに飽きて...(質問を中断して)
A: 作業自体は素晴しいものだったけど、完成までまだまだかかるのがわかってくるとうんざりしてきたんだ、それに自分達のやり方で作るには面倒なことにも首を突っ込まなければならないことも見越してたしね。だからジミー・ネイルが曲を頼みに来たときには断われなかったんだ。マネールールって自分で言った時も、僕はシニカルにはならなかった。レコードが大きなセールスをあげるっていう保証はどこにもないしね。でもちゃんとしたレコードにならない曲を書くのにほとほと疲れ果ててた。だから違った観点でやってみようって思い始めたんだ。
Q: それはどんな観点なの?
A: 現実的な観点さ。
Q: 現実的?もっと詳しく言ってくれませんか?
A: この「現実的」な観点で、僕は自分のやってることを敵対する立場から見るようになったんだ。想像上だけど頑固なSONYの弁護士の立場からね。
Q: えっ、どういうこと?
A: 悪魔のような弁護士の立場に立つことで、現在のフォーマットにないやり方でレコード作るって考えが浮かんだ時に直面するいろんな反論がおのずとわかってくるんだ。
Q: じゃ、あなたは自分の夢を客観的に見ることで何を学んだの?
A: お金を工面する方法が見つかれば、夢を現実にするチャンスがあるってことさ。自分達でレコード制作の手段を持っていれば、頑固な弁護士に計画を引っ掻き回されることはない。
Q: ずいぶん悲痛な叫びのように聞こえるのですが...。
A: 違うよ。レコードを作りたいって思ってる人はみんな僕のように考えた方がいいってことを言いたいんだ。 そうすればレコード作りに大きな幻滅をすることもないしね。悲惨なのはレコード会社が大きな悪い狼だって思い込むこと。実際はそうじゃない。それは大きな組織に楯突くことによってちょっとした刺激を感じてるだけなんだよ。(笑)
Q: ようやくあなたがなぜ1枚のレコードを作るのに7年もかかったのかわかってきました。
A: 僕が長期的な計画を持ってたことをわかってもらいたい。ある種のレコードは他のレコード作りを金銭的にまかなってる。もし自分でスタジオを建てるなら、レコーディング費用を大幅に節約することができるし、レコード会社に内緒でこっそりと作ることもできる。
Q: それがあなたがやってたことなの?
A: いや。でもやろうとしてる。
Q: じゃこの壮大な夢物語は「アンドロメダハイツ」とどう関係があるのかな?
A: いや、そこに辿り着くまでにはまだ少しあって...。ジミー・ネイルのための仕事を済ました後、今度はシェールのために曲を書いてほしいって頼まれたんだ。
Q: シェール?
A: そうシェールさ!
Q: シェールのために何をしたの?
A: ”ガンマン”って曲を書いたんだ。
Q: いつかプリファブ・スプラウトのアルバムを作るっていうあなたのポリシーはどうなったの?
A: いやすべてがそれにつながってるんだ。ジミー・ネイルに書いた「カウボーイ・ドリームス」もシェールの「ガンマン」もニューキャッスル(パディの地元の都市)から眺めたワイルドウエストなんだ。
Q: 私をからかってない?
A: そんなつもりはないよ。実際にこれらの仕事を通じて、7年後にいいアルバムが作れたんだから。
Q: その間には「ベスト・オブ・プリファブ・スプラウト」が出てますよね。
A: うん。でもあれはベストアルバムだから、僕らのクリエイティブな力で作られたなんて誰も思ってないよ。
Q: じゃ、あなたはいつ「アンドロメダハイツ」を作ったんですか?
A: ねえ君、さっきと言ってることが違うよ。
Q: ええっ?
A: 十分前に「どうして7年もかかったの?」って僕に聞いたばかりじゃないか!
Q: あなたがプロジェクトって呼ぶものは曲を書くのにそんなに大事なものなのでしょうか?それとも1年のうちにたくさんの曲を書いてその中のいいものだけをレコーディングするやり方になにか不都合なことがあるのですか?
A: いや、そのやり方が悪いわけじゃない。でもたいていのソングライターにとっては、タイトルが先にあったほうが新しい曲を作る時にいいスタート位置に立てると思うんだ。自分の表現したいことに集中しやすいしね。僕にとってアルバムタイトルやテーマはより自由な発想をするのに必要なんだよ。さあこれでやっと次のアルバムの話ができるね。
Q: もしかして「アンドロメダハイツ」の話まで辿りつけないんじゃないかって気にしてました?
A: 君がそれを言っちゃいけないよ。
Q: このアルバムにはテーマがあるのですか?
A: いいや。ほとんどの曲の歌詞の中に「Star」って言葉が入ってるのとすべての曲がラブソングの形式になってることぐらいかな。
Q: 「アンドロメダハイツ」っていうこのタイトル曲はどうやって書いたんですか?
A: その質問についてはうまく答えれないかもしれない。でもやってみるよ。まず僕はしばらくの間タイトルだけ頭の中に持ってて、95年の夏に音楽と歌詞がいっぺんに思い浮かんだんだ。
Q: 歌詞と音楽がいっぺんに思い浮かぶっていうのはいつものパターンなんですか?
A: たいていはメロディが先にできて、それに合う言葉をさがすのに数年かかるんだけど。
Q: この曲はこれまであなたが書いた曲のなかでもベストの出来だと思います。
A: ありがとう。僕もそう思うよ。
Q: 広大な宇宙を背景にとても家庭的なシーンを描いてます。
A: そう、面白いだろ。それは僕らのはかりしれない時間が存在してる中でどうやって人生を自分の力で導いていくかってことを歌ってるんだ。
Q: この歌の中の登場人物達はまだ自分達の場所を建ててません。それがこの物語において理想郷を求める厳しさを表わしています。
A: そうだね。ここに歌われてるような家には誰もが住みたいんだろうけど。
Q: あなたはSFに興味はありますか?
A: いや特に。現実に起こってる事でさえ僕には十分ファンタスティックだから。
Q: じゃあ"WEIGHTLESS" (無重力)っていう曲についてですが。
A: それはメタファー(隠喩)としての宇宙なんだ。みんなが宇宙について連想することは冷たくて無限の空間であるとか、"LIFE'S A MIRACLE"の中で歌ってるような空に輝く星をイメージするんだろうけど(歌詞の一節"There are no more stars like this one in the sky" を歌う)。"WEIGHTLESS" はそれとはちょっと違ってて、恋愛初期によくあるピュアで興奮した状態の中でバランスを失いつつある感覚を表現しようとしてるのさ。もともとは"FIRST LOVE"ってタイトルだったんだけど"First love, ain't it a wild sensation"(歌いながら)じゃ長すぎて語呂がうまく合わなかったんだ。
Q: 語呂うんぬんよりも、そもそもあなたはそんなラブソングを歌うには歳をとりすぎてるんじゃないですか?
A: 過去のある時点の方がある種のラブソングを歌うことが難しいっていうのが僕の考えで、歳をとっていろんなことがわかってきた視点で作った歌のほうが、真実味を増すと思う。それはまやかしのようなものかもしれないけど。
Q: これは現在のミュージックシーンとどう折り合いをつけるかという課題にもなってます。あなた方がこの前に出したレコードの時とは時代もずいぶん変わっていますよね。
A: (笑いながら)それは僕に対する質問なのかい?
Q: わたしの言ってる事がわかると思いますが、60年代にビートルズは7年間に「ラブ・ミー・ドゥ」から「レット・イット・ビー」までたくさんのレコードを出していましたが、あなた方は「ヨルダン:ザ・カムバック」と「アンドロメダハイツ」の2枚だけです。
A: でもビートルズは特別だった。彼らと較べるなんて馬鹿げてるよ。レコードが頻繁にリリースされたなんてのは昔の話で、一挙にバブルははじけたんだから、いまやレコード会社も一年に一枚アルバムを作ることなんて望んでやしない。そんなことは昔たくさんのレコードを売ってたアーチストに聞くような質問だろ。
Q: じゃあ、あなた方は現在のミュージックシーンのどこに位置づけられるのでしょうか?
A: なんだって?そんな質問にどうやって答えればいいんだい?
Q: あなたはラジオで他人のレコードを聴いたり、雑誌の表紙に出てる若いアーティストを見たりして、時代が移り変わっていることを考えたりしないのですか?
A: それが君の聞きたかったことなのか、でもその言い方は丁寧すぎるよ。要するに「あなた達は今のミュージュックシーンについていけてるの?」ってことだろ。君も素晴しいって言ってくれたこのレコードを前にして、そんなくだらない質問するのかい。
Q: そんな聞き方はしてません。それはあなたがが言ったことです。
A: じゃあ僕の方が聞きたいんだけど、僕達のレコードは今のミュージックシーンのどこに位置付けられるのかな?
Q: 私はあなた方は一つの新しいことを表現してると思います。
A: どんな?
Q: あなた方は確かに現代的なポップスを作ってますが、現在のミュージックシーンの動向を意識することなく、ポップミュージックの主流をなすダンスミュージックにも色目を使うようなことはありません。言い替えれば、リズムを重視するあまり旋律をないがしろにするようなことはなく、あくまでもメロディを作り出すことに重きを置くやり方を貫いているのです。それははあなたをおいて他に誰もやろうとしていません。曲の構成方法があまりにも違いすぎるのです。それぞれの曲は独自のルールに沿って作られているますが、そこにはあきらかに昔の曲へのつながりがあります。"A PRISONER OF THE PAST"はまるでウォーカー・ブラザーズかフィル・スペクターのために書かれた曲のようです。
A: 面白いから続けてよ。
Q: あなたの歌詞は滑稽であると同時に哀しくもあります。また馬鹿げているにもかかわらず感動させられるのです。
A: それはどの曲のことを言ってるのかな?
Q: "WEIGHTLESS"がいい例です。
A: Oh..."love put me in space, way above the trees, listen N.A.S.A. can you get my heart back please".ってところだね。
Q: ええ、まさにそこです。
A: 音楽はしばしばそういった効果をもたらすものなんだ。でもそれが君の言う新しい現象ってやつなのかい?そいつを僕に教えてくれないかな。そうすりゃ僕だってみんなに説明できるんだから!
Q: それは新しい表現方法でミュージックシーンの主流になる要素はあるのですが、あなた自身がミュージックシーンをまったく意識してません!!あなた方の作っている音楽は、ギター、歌詞、コーラス、キャッチーさ、ラブソングといういわゆるポピュラーミュージックの形式を一応とってはいます。でも一般的にポップスというものはそれぞれの世代がその面白さを再発見するものなのです。たいていのポップスは20代に聴かれるエネルギッシュで感情的なもので、それは思春期の視点でとどまっているようなものなのですが、あなた方の音楽はそういった思春期特有の事柄と思われてきたものをまったく違った視点で表現しようとしています。
A: ねえ君、僕らのためにライナーノートを書いてくれないかい?(笑)
Q: "LIFE'S A MIRACLE"がそのいい例です。
A: 僕はずっとポップミュージックで思春期にないセンチメンタルな感情を表現できるって思ってた。それはこれといって新しいものじゃないけど普遍的なものなんだ。マーヴィン・ゲイの"WHAT'S GOING ON"がまさにそれをよくあらわしてるんだけど。
Q: わかりました。私も少ししゃべりすぎたように思います。プリファブ・スプラウトというのはあなた自身の考えや計画を実践しているようですが、これはバンドなのでしょうか?
A: その質問に答えるのはちょっと気が咎めるんだけど。
Q: どうしてですか?
A: 僕はバンドというものには興味がないんだ。大事なことはレコードにする音楽の断片を作り上げていくことだと思ってるから。
Q: でもマーティンやウェンディはそのことについてどう思ってるの?
A: 二人とも18ヵ月も続くツアーがなくなってがっかりしてるってことはないと思うよ。
Q: じゃ、あなたがえんえんと架空のアルバム作りに専念してた時、彼らは何をしてたの?
A: 仕事なんかをして自分達で生活してたよ。
Q: バンドで生計を立てようとは思わなかったの?
A: 不安定だからね。
Q: ツアーをやればもうかるってことをあなたもよく知ってるでしょ。
A: ライブをやるっていうのは...ちょっとね。
Q: えっ?
A: オーディエンスと直接向き合おうとすればするほど、彼らとの距離が遠くなるんだ。移動やサウンドチェック、何回も同じ曲を演奏するにつれてただエゴを満足させるためだけにやるようになってきて、みんなが僕らのレコードが好きだからきてくれてるんだっていうこと忘れるようになってくる。ツアーに出た初日にはよくわかってたことなのにね。
Q: でも観客はみんなあなた方のレコードを好きで見にきてるんですよ。あなたはしばしば物事を深く考えるぎるように思うのですが・・・。
A: 君はツアーに出たことがあるの?
Q: ありません。でもツアーはミュージシャンが観客に接するいい機会だと思います。それにファンはあなた方がツアーに出るのがどれだけつらいかなんて聞きたがってないと思いますよ。
A: 別につらいって訳じゃないんだ。ただ新しいレコードを作るのには何の関係もないってこと。ツアーに出て人間ジュークボックスになるか、それを新しい曲を作る時間にあてるかって聞かれれば、僕ははっきりと後者を選ぶよ。1965年のビーチボーイズのブライアン・ウィルソンとその他のメンバーの関係を見てごらん。「カリフォルニアガールズ」や「プリーズ・レット・ミー・ワンダー」は素晴しいレコードだけど、ブライアンはツアーに出ずに一人で「ペットサウンズ」を作ってたんだぜ。すごいと思わないかい。だからこのことに関しては、君が言うように僕が深く物事を考えすぎてる訳じゃないんだ。
Q: これまでのレコードはトーマス・ドルビーがプロデュースすることが多かったのですが、今回はセルフプロデュースになってますね。
A: うん。トーマスにも頼んだんだけど、彼はサンフランシスコに住んでいて自分の会社を設立するのに忙しそうだった。僕らのレコードは作るのに時間がかかるから、彼はあまり関わりたくないだろうっていうことが僕達にもわかってた。でも、トーマスは"LET'S CHANGE THE WORLD WITH MUSIC"がなんでお蔵入りになったのを理解できずに、僕らにそれを作るように言ってたよ。それに「アンドロメダハイツ」の制作の時もずいぶん励ましてもらったし、実際、セルフプロデュースを勧めたのも彼なんだ。
Q: カラム・マルコルムの手によるエンジニアリングとミキシングも素晴しいですね。
A: うん。彼の経験豊かな技術はアルバム作りやスタジオの建設にすごく役に立ったよ。
Q: どうして彼とやることになったのですか?
A: ただ彼のエンジニアとしての仕事を気に入ったからさ。彼はスコットランドに自分のスタジオを持ってて、ブルーナイルともいい仕事をしてたしね。スタジオ建設について細かいことまでアドバイスできる人間だって思ったんだ。それに何よりも彼のようにあまり流行と関係なくいろんな種類のレコードをたくさん作ってきた人間とやりたかったんだ。
Q: 流行と関係ないってどういうこと?
A: 昨今のサウンドや技術にとらわれることなく、時代を超えたいいものを一緒に作れる人間とでも言ったらいいのかなあ。実際、どんどん進歩してゆく技術にかまってる時間なんて僕らにはないんだから。
Q: トミー・スミス(サックス、フルート)、マーティン・テイラー(ジャズギターリスト)は彼が紹介したのですか?
A: そう。このレコードをできるだけカラフルに仕上げることは大事なことだったんだけど、実際これまでのアルバムより純粋な楽器のアンサンブルを楽しめるようになってると思う。彼らは素晴しいプレイヤーなんだ。
Q: 「アンドロメダハイツ・オーケストラ」とクレジットされてますが、これは一体何なのでしょうか?
A: いわゆるバンドっていう概念はなくなったんだけど、ウェンディーやマーティンそれに僕を除いて、手伝ってくれたミュージシャン - 特にギターのデビット・ブリュイスとパーカッションのポール・スミス - がこのアルバムに貢献してくれたことを記しておきたかったんだ。
Q: かつてバンドにドラマーが在籍してましたが...。
A: ニール・コンティ。彼は素晴しいドラマーだ。
Q: なぜ彼はこのレコードに参加していないのですか?
A: 僕らはまったくライブをしないバンドになったから、レコードが出る間に人を雇う余裕がなくなったんだ。ただそれだけのことだよ。
Q: 映画「ヘルプ」の中で、ビートルズのメンバーはいくつかの壁を打ちつけた家に一緒に住んでます。
A: そう、4つのドアでしきられただけのね。
Q: でも実際の彼らの生活はそうじゃありませんね。
A: うん。
Q: オアシスはそこに入っていこうとしてるようですが。
A: (笑いながら)そうみたいだね。幸運を祈るよ。
Q: あなたにお尋ねしたいのですが、彼らは第二のビートルズだって思いますか?
A: 誰だってエイボンのストラッドフォードに家を持つことはできるし、アン・ハサウェー・コテージ(シェークスピアの妻の実家)にだって引っ越そうと思ったらできないことじゃない。(笑)でも...。
Q: ウィリアム・シェークスピアになれるってわけじゃないってこと?
A: 君が言ったんだよ。
Q: 今日はどうもありがとうございました。

メインページへ戻る