2003年1月 新春を迎えて神戸の魅力を語る
HIRO 「 SAM。あけましておめでとう。今年もがんばろう。いろいろと。
そしてのっけからいうけど、新年早々『今年こそは日本がかわらないとダメになる』
という論調を色々なメディアが合唱している2003年が始まりましたなー。」
SAM 「 あけましておめでとう。
今年でPort Avenue Pressも2年目に突入。
公私ともにやったるで−!
しかし開口一番、辛口やね。
実際は今年こそじゃなく、今すぐやろ?
今すぐ変われるわけないけど。(笑)」
HIRO 「 そうそう。今すぐ!!!
去年の暮れから始めた『みなとのみえるティールーム』、けっこう頭の刺激になって
いいけれど、社会の欺瞞に気づいたりして腹が立って困るで。 (笑)」
SAM 「 堅い話はこのぐらいにして、2年目に入ろうとするPort Avenue Press運営に当たっ
て一言。
我々もそうやけど、家庭を持ってから行く場所が変わってきた人も多いと思うねん。
で、たまに独身時代によく行ったところへ足を運ぶと、なんか違うってことない?
HIROは『HIRO'S Page』で”こうなるといいぞ神戸”をテーマにしてるけど、今と昔で
持ってるイメージも変わってきたと思うねん。
新年やし、改めて二人の神戸観を確認してみぃへん?」
HIRO 「 それええな。このテーマなら話題はつきないけど、神戸は95年の震災抜きには語れ
ないと思うけれど、やっぱり震災前と後でまちなみや人々の考えが変わった分岐点だっ
たということを僕自身は押さえておきたい。
新年から冒頭で厳しい話をこれからするけど、ちょっとお許し願いたいですが・・・。
ということで、あの震災は多くの人が、市民や訪れる人、神戸市自身が持っていた
『神戸が持っているのではという夢』を吹き飛ばしたという感じがする。
そして、90年代後半からの東京一極集中と生産拠点の国外流失そして人材流失が
本当に神戸だけでなく東京以外のまちを変えていった。
震災復興は下河部という政府から派遣された都市計画家と称するじいさんが道路や
高層公営住宅を含めた公共施設だけの復旧に努めた結果、ただの地方都市に転落させ
たと思ってるんや。
このじいさんは復興プロジェクトに中国内陸部と神戸を結ぶなんとかというものを立ち上
げたけど7年たってどう役に立ったのかさっぱりわからない。
そのとき市も県も『さすが下河部さん』といったらしいけど中国の河を走れる船つくっただ
けかい?と聞きたい。それでどうなってん???と。
それよりも、2重の住宅ローンで困っているサラリーマンに震災前のローンの徳政令をし
たほうがずうっと市民が喜び、生きる力が出たと思う。
だから今まだ3割も再建できない更地がある。(怒)
そして県と市が猛烈に要望したエンタープライズ構想。
もしこの時に実現していたら近畿圏を巻き込んで経済活性が進んでたと思うで。
大蔵省は「焼け太りは許さん」とほざいて、結局実現しなかった。(大怒)
とりあえずこのぐらいにして、僕の神戸原景は小学校の時の遠足で行った神戸港なんや。
あの時、こんな光景があるんやと子供心に感心したで。
ポートタワーを見て、遊覧船乗って。
港ってこんなところかー。と。
そして高校の頃お小遣いと時間があれば阪急電車で港と船を見にいったんやけど、西北を
すぎると沿線に緑が一杯迫ってきて西灘今の王子公園を過ぎると港のクレーンが見えて、
海が光っていて来たぞーと言う感じで、嬉しかった。
これが原点やね。」
SAM 「 おつかれさま。まあビールでも飲んでのど潤して。
確かに地震はターニングポイント。
街の変化は時間の流れで当然のことやけど、そんなに急激とちゃう。
かといって、復興じゃなくて元通りに復旧しても仕方ない、とも思う。
あっそれで俺の以前の神戸観は、一言で言うと『わくわくする街』かな。
漠然としてわかりにくいと思うけど、そうやな、いわゆる山あり、海あり、異国文化ありなん
て言うガイドブック的な説明になってまうな。
それを観光客じゃなく、かといって住人でもないねんけど(笑)、体験として理解してるとでも
言いましょうか?
たとえば小学生の頃は遊園地や動物園など、中学になって登山をかじり、高校時代は主に
ショッピング、残念ながら大学は静岡やったから
長期休暇しかあかんかったけど夜のスポット・・・って福原ちゃうで!
・・・てなぐあいに一緒に歩んできた錯覚すらある。
友達と情報交換して、いろんなとこ、珍しいとこ知ってるのがステータスやっ
たりして。
それから登山やけど、六甲山にテント張って夜空を見上げたら、ほんまに神戸なん?って
感動するで。
しかも百万ドルの夜景付き。
こんな贅沢なキャンプはちょっとよそではないんちゃう?
運が良ければ、イノシシも残飯あさりに来るし。これは運悪いんか?
なんかイメージと言うより思い出話になってもたな。(笑)
あぁ、そういえば、地震以前に個人的なターニングポイントがあったなぁ。
HIRO 「 『 一緒に歩んできた錯覚すらある』うーん。それは確かにある。名言!
それはそうと震災以前の個人的なターニングポイントって、何々?」
SAM 「 免許とって車で神戸を走ったとき。
今まで公共交通機関と足で見た風景が一変したもん。
それと時間。
もしかしたら、この時から見えるものが見えへんようになったんかもしれへん。」
HIRO 「 クルマは乗ったときからその人のライフスタイルを変えるからなー。
わりと大阪に比べてコンパクトなまちの神戸だけど、車で行ってこそ行く価値のあるとこ
ろってあるなー。例えば須磨の「ウェザーリポート」、初めて行ったときは明石海峡大橋も
まだなく、なんとなくのどかな風景だった。あと今はなきメリケンパーク入り口の「フィッシュ
ダンス」、夜クルマで行くのが最高によかった。電車乗って歩いて食事してまた駅まで歩い
て切符買って電車乗ってなんて、気分がさめるで。
阪神高速のオレンジ色の照明を受けながら、音楽聴いて帰る。いいなー。
でも、日常使わない公共交通機関例えば明石から淡路を結ぶフェリーや播淡汽船に乗船
するとまた格別。遠いところへやってきた実感が一番する。今なら明石大橋ですぐいけるけど
まあ料金は別として、なんかそういうありがたさはクルマは味あわせてくれない。
要はTPOで使い分けるとええんやろなー。
ごめん。時間や風景が一変した話もっと詳しく教えてや。」
SAM 「 うん。確かに車でないと行けない、とか行きにくいとこもある。
ただ、それで単に通過するだけの街になってもた部分もある。
車でしか味わえない風景もあるけど、歩くことによって生まれる発見や時間の流れが
懐かしく思えるねん。
たとえばデート。
どこ行く当てもなく何となく歩き回ったりしただけやのに、何気ない出来事を共有して
ほんわかした気分になれた。
車ではふたりっきりの空間を満喫できるけど、外部の刺激に疎くなるんちゃうかな。
で、なんとなくクールになっていく。
今さら車なしは考えられへんけど、道路の風景しか触れてないのがもったいないような
気がすんねん。
今の若い人は知らん言葉やろうけど、『書を捨てよ、街にでよう』なんてのがある。
これを車が奪ったかもしれへん。
ところで、デートといえばHIROの初デートは神戸やったやろな?」
HIRO 「 『初デートは神戸?』というクエスチョンで思い出したけど、大学時代SAMが『神戸を
舞台にしたマンガ結構おもしろいで』と見せてくれた、宝塚出身神戸在住のマンガ家
西村しのぶの『サードガール』、時代設定は80年代中ごろになるんかなー。あの頃、
主人公が大学生だったし、こっちに戻ってからも、自分のライフスタイルを重ね合わせたく、
そのイメージに追いつこうと神戸を訪れたなー。
港や夕方から夜の北野は歩くのには最高のロケーションだった。映画のセットでない
から一般ピープルでもなんかドラマのような気取りが出来る!いい街だった。
あの時代、ポートピアも大成功で終わって、神戸にすごく求心力あって、『神戸に行け
ばなんとかなる』という錯覚を起こさせる魔力があったで。実際には神戸が何とかしてくれ
るのではなく、その舞台を活かさないとどうにもならないやけど、神話的なものがあったん
ちゃうかなー。
そんな神戸を舞台にした『サードガール』で特に北野の友人のブティックで働く神戸大卒
の女性、美人の美也さんの設定も妙に納得したものだ。
あとその友人が住むという東灘の御影山手、実際はどうってことのない住宅街なんやけ
ど、サードガール読むと、御影に神戸ナンバーのアウディで住宅街の山手幹線にある『にし
むらコーヒー』に行きたくなる。
ホントに同じ山幹でも西宮の山手幹線とあきらかにおしゃれ度が違うで。
御影から岡本にかけての山幹は。
でも最近ほんとにマンションが増えて六甲山が2号線から下は見えない。
岡本の住友本邸跡地でさえ大規模マンションに変身。
家族そろって御影のフレンチで食事をしたい。うっ、これもマンガでもあった歯医者さん
ファミリーのスタイル。」
SAM 「 おおっ!『サードガール』!なつかしい!
西村しのぶさんのコミックは年に1冊ぐらいでてるんやろか?
既刊コミックは全部持ってるで。
最近の作品は当然地震以後で、何となく異国情緒に欠けるように思う。
それはともかく、『サードガール』の世界には憧れ、かつ影響されたなぁ。
『OCEAN'S MAGAZINE』もこの世界観を取り入れるはずやったのに、どこでしくじったん
やろ。
あっそうそう、前にぼけぇーっとネットサーフィンしてたとき、『西村しのぶファンクラブ』的
なサイトがあって、そこで歴代キャラクターの投票しとってん。
そこでは美也さんが一位!
最近のキャラも魅力的なんやけど、強すぎてちょっおっとなぁ。
美也さんの、現代っ子なんやけどちょっと古風なところが人気の秘密かなと勝手に解析
してみました。
『サードガール』といえば、地震の前で話し止まったまんまやね。
しかし、あの話は以前に憧れた神戸が詰まってるから、続編はない方がええと思ってんねん。
結果論かもしれへんけど、なくなってもたから比較してんねんな。
そのなくなった夢の世界で彼らには生きておいて欲しい。
それが俺らの青春の世界やったもんな。」
HIRO 「 『OCEAN'S MAGAZINE』も『サードガール』の世界を取り入れるはずが曲がってしまったの
はファンを開拓しなかったからかなー。あるいは冒頭にあったように神戸に対する価値観が
確立した我々から、それがない全国各地から集まった学友にポンと見せても、言っても理解
できなかっただろうし、それをさらに自分らで加工して伝えるということがあの時の技量、思考
ではできなかったのではと自己分析している。
その反省を込めてこのサイトは何か筋を通したいと思っている。
その『サードガール』も震災前でとまっているのは、西村しのぶ自身が震災で変わり果てた
神戸であのテンションのライフスタイルをイメージできないのかもしれない。いまだに北野には
倒壊したままの異人館があって、また観光地化しすぎた北野で美也さんが住めなくなったのか
もしれない。
作者自身も今は結婚して大阪に住んでるのも最大の原因ではないかと。
僕は続編を是非出して欲しいと願っている一人で、今の神戸で緊張感ある男女関係を描いて
欲しい。でも現実で考えるとそれぞれのキャラクターが結婚して家庭を持ってという設定ではあの
世界は非常に難しいな。
家庭持ちの歯医者さん、広瀬さんが光っているのも美也さんと不倫すれすれボーダーの関係
だから、やっぱり続編はないのがよいかも。
しかし、最近の西村作品の女性は強すぎてやっぱり美也さんほど好きになれない。古風なとこ
ろが落ち着きどころがあって人気なのはよくわかる。
あと西村作品ですきなのは『VOICE』にある作品群、どれも『サードガール』とは違う魅力があっ
てお勧めしたい。でもこれも震災前の設定だったように思うで。
きわどい関係の男女がいいテンションで恋愛を海と六甲山に囲まれた街でしているスタイルが
たまらない。うんうん。
やっぱり最初に言ったように震災でイメージが傷ついてそして街並みが変わり産業流失、人材
流失した影響が最近特に影響してきているようにこのような話からもますます感じる。
やっぱり復興、復旧ではなく、都市として自然を活かして文化人が集まるまちにならないと、我々
ができることは何か・・・・・・」
SAM 「 うん、実際我々のぶいぶいいわしてた時代は、ファッションでも神戸流なんてのがあったやん。
最近は有名ブランド点が幅利かせてるような気がすんのは、自分自身が流行を追ってないせい
やろか?
いずれにせよ地震でアパレル、靴業界の撤退などが利いてるやろな。
そんでまた西村作品の話になるけど、最近順調に連載されてる『ライン』はええで。
主人公のキャラ的には『アルコール』の方が好きやけど。
どちらも今の話しやから地震後。
男達と女達が、恋に仕事にのびのび日常してる。
舞台はたまたま神戸。
そやけど”絵”になる不思議な街。
観光がどうの知名度がどうのは、住人にはどうでもええことなんかもな。
しかしながら、某地方新聞のアンケートで、”ルミナリエがなかったら神戸には
来ていない”という答えが多かったのはやっぱりショックやな。
また朝の連ドラか大河ドラマで神戸が舞台にならんとあかんのかなぁ。・・・・・。
話がちょっと変になってきたか?
今回のテーマにもどろか。
え〜、今の神戸観は歴史。
意外と史跡多いねんで。
それを子供達と遊びつつ、”KOBE PHOTO GALLERY”で紹介していくつもり。」
HIRO 「 建築家の安藤忠雄が『神戸は日本の都市で一番魅力的な街だ。なぜなら、海と山が
接近しているから。』と言ってたけどそのとおりと思う。イタリアのジェノバ、オーストラリア
のシドニーなど美しい街は港街。
しかし!!!今の神戸はその自然がくれた街の良さを壊す建築物が多すぎる。土地
所有者でもないものが言うのは申し訳ないけど、人が見ていいなというような風景を創
らないと本当にただの地方都市で終わってしまう。
それこそ規制緩和特区で例えば明治、大正期をほうふつさせる外壁や店舗の建設す
れば建築確認の迅速化や容積緩和、設計費全額補助などして増やしていく。まあ人に
よっては明治大正期の建築物がよいとも限らないけど、いつまでも百貨店的な政策では
ダメダメ!特徴を出すために絞る!
う〜ん。次の市長選挙出ようかな。
感性に訴えるまちづくりを選挙公約にして。
そして、もう一つ忘れてはならないのは、雇用があること。
神戸に行けば働ける。ということで人が集まり、また文化が生まれる。
東京はまさにそれで今なお膨張に膨張を続けている。
神戸の魅力を語るのがテーマだったけれど、西村作品の話に傾いたけど、作品を通して
その要素は見えてきたのでは。それは、かっこいいライフスタイルが実現できる街、海、港
と山に囲まれた独特な空間と僕は総括したい。
でもこれって明治の開港以来からある魅力だったと思うと、
やはりこの源流をより深めることと思う。さっきのルミナリエがなければ神戸に来ないという
話は、今は海外、国内の本物を市民が体験したことからまがい物はもうだめだということで、
神戸で本物といえばルミナリエということかもしれない。そうそう神戸祭りは住んでいる市民の
まつりなので、観光客を呼ぶには弱いということになる。
あと洋菓子やアパレルは伝統的に神戸は蓄積と伝説があるけど、いかんせん全国展開して
いるので逆に神戸的にならないのがつらい。
京都烏丸の大丸でモロゾフやユーハイムを西宮市民が買う気になれんで。やっぱりその地域
の何かを求めるから。北海道なら「ロイズ」の生チョコとか。
出来る限り、神戸の魅力を出せるようにこのサイトで呼びかけよう。」
SAM 「 ところで!俺らが会話してる間に成人式終わってもたな!
この行事には一言言いたいことがあんねん!
ちょっと日を改めて話しせえへんか?」
HIRO「 おおっ。久々のSAMの成人式への見解が聞けるやんか。
今度はこのティールームでなくて、北野坂にあるジャズバー『北野アベニュー※』で話をしようや。」