いごっそう随想へ

《アーカイヴ 1》
*1989年 三友社出版 COSMOS ENGLISH COUSE II  TEACHER'S MANUAL より

 教師用指導書など不要だと思っている私に何故か執筆依頼があったことがある。後にも先仁もそれ1回だけであるが、読み返してみると偉そうな書き方をして恥ずかしい気がするが、青年海外去力隊員になったこともなければ、柔道もしたことがない、ザンビアはおろかアフリカにも行ったことがないのによく書いたなとは思う。世界情勢も少しは変わったが、ザンビアの状況はますます悪化しているようだ。もっと有効な援助がなぜできないんだろう。原著者の松下文治氏もさぞ辛いことだろう。
 書いたことすら忘れていたので、松下文治氏にも未だにお会いしていない。お元気で機会があれば会ってみたくもなってきた。(2006年10月28日)

Lesoon 10 Judo in Africa
解説
<この課のねらい>
 ザンビアなどという国の名前は聞いたこともなかった、という生徒がほとんどにちがいない。いや、英語を教えているわれわれでも、アフリカにありそうだということはなんとなくわかったとしても、そこが英語を公用語とする国であるという知識はもちあわせていなかったりすることがあるかもしれない。しかし、世界三大滝の一つヴィクトリア滝のあるところだとわかかると、子どものころ読んだ「リビングストン探検記」を思い出して少しは親しみを増すかもしれない。
 経済大国になってしまった日本は、同じアフリカにあり、アパルトヘイトで悪名高い南アフリカ共和国の最大の貿易相手国として全世界の非難を浴びている。わが国はその経済力を使って防衛という名の軍事力増強をして近隣諸国に不安を与えるよりも、その力をアジア・アフリカ・ラテンアメリカの発展途上国の自立と援助のために使い、世界の平和友好にもっともっと貢献せねばならないだろう。
 アメリカの平和部隊 (the Peace Corps) にならって、1965年に誕生したのがわが国の「青年海外協力隊」である。「国と国との友好も人と人との友好に始まる」とい点で、経済進出ばかり考えてきた日本人としては画期的な事業であるといえるだろう。いろいろと問題もあるようであるが、意欲に満ちた青年たちの活躍はおおいに評価されているようである。ザンビアへの派遣は1970年に始まり現在もつづけられている。
 この課はその第1次派遣隊員の1人がその思い出を語ったものである。この課を通じて、ザンビアという国のことを知るだけでなく、まだまだ多くの援助を必要としている国々がたくさんあることを知り、本当の援助とはどういうものかということを考える手がかりとしたい。とかく学ぶことの意義を見失いがちな生徒たちに、この青年のように一つ得意なものがあれば、それだけで国際的な活躍の道があり、英語はそれを生かすための手段にもなりえることを伝えられたらと思う。
 文法事項としては話法と It… that の強調構文であるが、受験英語を学んできたわれわれはこれらを書きかえ問題としてとらえがちである。同じ事柄でも表現の方法はいろいろあるということと、なぜそのような語法となるのかということを教えたい。

<出展と題材>
 ザンビアの青年海外協力隊第1次派遣隊員の1人、松下文治氏の著書『ブリバンジ!太陽の国――730日の青春』(三友社出版、1986年)とその英語教材版『サバンナの青春 ZAMBIA IN THE SUN』(三友社出版、1988年)をもとに書かれたものである。

<内容と背景>
 上掲の著書の柔道指導事始めとでもいうべき部分がとりあげられている。両方の著書は大部分重複しているし、「太陽の国」のほうが詳しいのだが、「サバンナの青春」のほうにはその後のことが1章付け加えられている。また若者らしい恋の話や武勇伝もあってなかなかおもしろい。
 日本とザンビアの友好関係の継続発展は、著者たちをはじめとする青年海外協力隊の活躍に負うところが大きいという。英語が苦手であった著者は、その後イギリスに留学し、本格的に英語の勉強の後、松山市で英語塾を開設し、英語を教えるばかりでなく、国際人の養成につとめている。ザンビアの状況は、銅の国際価格の下落もあり、日本の紐付き援助も増えており、かなり悪化しているという。

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