立山・黒部アルペンルート 2006

[室堂平から撮影した立山のパノラマ画像 2006-08-07]

 念願の立山・黒部アルペンルートに出かけるチャンスに恵まれた。立山・黒部の眺望は何物にも代え難い美くしさで、偶然雷鳥にも出会うことが出来た。まだ訪れたことのないみなさんには、是非その雰囲気を楽しんでいただき、既に訪れたことのあるみなさんにはそのすばらしさろを思い出していただこうと思う。
 改めて自然を守ることの大切さを実感した。ゴミを背負って息を切らしながら室堂を行き来する青年たち。みなさん、自分のゴミは自分で持ち帰りましょう。
[ルート]
JR信濃大町―(路線バス)→扇沢―(関電トロリーバス)→黒部ダム―(徒歩)→黒部湖―(ケーブルカー)→黒部平―(立山ロープウェイ)→大観峰―(立山トンネルトロリーバス)→室堂―(立山高原バス)→弥陀ヶ原―(立山高原バス)→美女平―(立山ケーブルカー)→富山地方鉄道立山駅―(富山地方鉄道)→JR富山

[ちょっとアドバイス]
 上記の逆ルートで回る旅行者が多いようだが、上記ルートのメリットとしては下記の点がある。
1.乗り換えの待ち時間が少なくてすむ。
2.散策コースが多いが、最後に室堂だと、健脚の方は別として高地のため結構息が切れて疲れる。気力のある内に回ることが出来る。
3.室堂での宿泊をお勧めする。ご来光に感動し、運がよければ満天の星空を見ることも出来る。今回は残念ながら、夜中は曇って星を見ることは出来なかった。是非、再挑戦したい。
写  真 解  説
 松本から乗ったローカル電車は、信濃富士の見える駅で対向車の待ち合わせのため20分の停車。
 都会の時間感覚を忘れ、外を散歩し、後は車内で昼寝と決め込んだ。
 トロリーバスを降りて、展望台まで約200段の階段を登ると(がんばって是非登ってください)、いきなり別世界が広がっていた。立山を背景にしたクロヨンの姿は、いつまで眺めていても飽きない絶景だった。
 満々と蓄えられた水はやや緑色。森の緑が溶け出したような色だ。
 毎秒15トンの放水量と聞いたが、間近で見ると大迫力だ。
 この巨大なダムは、尊い大勢の方々の犠牲があって完成した。これはその慰霊のモニュメント。
 展望台から黒部渓谷を望む。
 この険しい自然に立ち向かいながら建設されたことに、改めて畏敬の念を感じる。
 ケーブルカーで、黒部渓谷を見下ろす黒部平に到着。立山はもう目の前だ。
 展望台から、人造湖が見える。
 このあたりまで来ると、残雪(万年雪)が残っている。草木の緑と残雪の白さとのコントラストが、立山の美しさの特徴だ。
 トロリーバスでトンネルを抜けると、そこは室堂だ。残雪はそこらここらにあり、人の通る道にも積もっている。
 山の午後は雲がかかることが多い。この日も霧が(下界から見れば雲が)次々とかかっては去り、日が差したと思うと、すぐに周りが見えなくなる。
 とりあえず初日ということで、ミクリガ池周辺を散策。長袖を着ていてちょうどいい涼しさだ。
 雪解け水が、ザーザーと音を立てて流れている。分水嶺の日本海側で、川の源を目の当たりにした。
 森だけでなく、高地では雪が水を蓄えていることを実感。
 幸運にも、ミクリガ池の歩道近くで雷鳥に遭遇。近くのおばさんが教えてくれた。
 シャッターの音に驚いて、すごいスピードで目の前を駆け抜けて行った。おまけに夏の保護色の土色なので、周りと見分けることが難しい。
 翌朝、早くに起きて、空が白み山頂から太陽が顔を出す様を、飽きもせず眺めていた。
 空は真っ青に晴れて、朝の室堂は天国のようなすがすがしさだった。
 次第に朝日に照らされていく山々が、何とも神々しい。
 宿泊先の、「ホテル立山」。背景の山が次第に朝日に照らされて行く。
 日本一星に近いホテルと言われていて、周りも明かりがほとんどなく、晴れていれば満天の星空が見えたはずだったが、残念ながら今回は、夜何度も目を覚まして外を覗いてみたけれど、雲がかかったままだった。いつかリベンジしたい。
 手前の丘で隠れて見えないが、立山の山麓にはキャンプ場があって、多くのキャンパーがテントを張っていた。
 このあたりで3000m弱。階段が多く、普段では考えられないほど息が切れる。でも思い切り息をしないと、酸欠になってしまう。
 慣れていない人は、無理をせず休み休み歩いたほうがいい。
 それにしても、本当に絵葉書のような美しい光景だった。
 ここは硫黄の臭いの立ち込める地獄谷。空気が薄い上に、毒性のガス。でも、鼻で感じるほどの害はなさそうだ。
 熱湯を噴出しているところもあって、地殻変動で突然危険が迫ることも十分考えられる。
 こんなところが観光地になっているなんて、怖いもの見たさの人間の性(さが)かも知れない。
 血の池地獄。少しわかり辛いが、水溜りの水が酸化鉄を含んでいて、真っ赤に見える。向こう側は残雪。
 室堂を後に、立山高原バスで弥陀ヶ原に途中下車。ここでもまだ2000mくらいはあるが、階段でもあまり息が切れることはなかった。高地トレーニング(?)で、心肺機能が鍛えられたのかも。
 夏の暑さも戻り、室堂を見た後ではあまり感動的な風景もなかった。
 道路を隔てて、立山カルデラがあったが、不案内で実損ねた。砂防工事の様子が見えるらしい。
 一ヶ所だけ水芭蕉が咲いていた。自然発生ではなく、栽培されているようだったが。
 再び立山高原バスで、美女平へ。
 美女平では散策の予定だったが、バスの係員に熊が出るかもと脅され、コースに踏み込むと如何にもそんな風だったので中止。
 ケーブルカーの駅周辺にも、こんな立山杉を発見。少しわかり辛いが、幹の間に空洞が開いている。
 立山駅近くで一泊し、翌日は称名滝へ。途中バスの窓から、悪城の壁と呼ばれる断崖が見える。高さ約500m。
 これが落差350mの称名滝。午前中は逆光になって、きれいな写真は撮れなかったが、滝の手前の橋では、しぶきが風に運ばれて、きっと大量のマイナスイオンを吸い込んだはずだ。
 帰り道で、路肩の壁の排水口にヘビを発見。
 これがこの旅の最後のスナップだ。
[高山植物の写真]。
 ここでは、室堂や弥陀ヶ原で見かけた高山植物をまとめて紹介。
 花の名は、詳しい方にお任せするが、冬の間雪の下に埋もれているせいか、小さなかわいらしいものばかり。
 特に、チングルマという花をたくさん見かけた。


[所感]

 山の天気は変わりやすいというが、午後に雲が多いときもあったものの、まずまず天候に恵まれ、久しぶりに大自然のすばらしい景観に触れ、心洗われる3日間だった。
 すれ違う人がみな「こんにちわ」と挨拶を交わし、下界で起きている様々なおぞましい事件が、嘘のように思えた。
 人は自然の中にいてこそ自然な心を取り戻せる。人口の世界ですさんでいく心を清めるために、自然を汚さない、傷つけないという最低のルールを守ることを前提に、都会の人間はもっともっと自然に触れたほうがいい。
 こんな気分にさせてくれるから、ぼくは山が好きだ。