ペンギンドクターの
診察室


血圧計

自宅で血圧を計ると、計るたびに違っているんですよ、何故でしょうと、患者さんからよく質問されます。人によっては毎日5,6回も計り、几帳面に記録をして来られます。こうなりますと患者さんが科学者に見えてきます。本当の血圧は幾らなのか、真実はどこにあるのかと熱い研究心に頭が下がります。

この際まず血圧はいつも同じではないことを分かってもらわねばなりません。一日の間に血圧はかなり上下するのです。たとえば貴方が健診で並んでいる列の先頭になって、血圧を計ってもらっているところを想像してください。後方で順番を待っている大勢の視線が、貴方の血圧計に注がれているようで、緊張のあまり貴方の血圧は普段のはるかに上になってしまう。こんな事が実際によくあります。血圧はその時その時の精神状態や、身体にかかる負担などで大きく変わるものなのです。

たいていは朝目が覚めたときに血圧は急に上がります。それから次第に下がっていきますが、仕事中のストレスなどでまた上がってきます。帰宅をして晩酌などをすれば、お酒の影響で普段より低い血圧になります。床についてぐっすり寝込むと血圧は一日の内で一番低くなります。高血圧の患者さんの場合も大体同じですが、高いままほとんど変化しない方や、朝極端に血圧が高くなる方など色々のケースがあります。

それではどの血圧をもとに薬の量を決めるかと申しますと、診察に来られて医者が計った数値をもとに薬を処方します。したがって患者さんが精神的にも身体的にも十分リラックスした状態で血圧を計るよう努力します。それでも自宅で計るよりも大分高いと思われたら、実際に計ってきていただいた結果を参考にして決める方が安心です。

最近では自宅に血圧計を置いておられる方は多くなってきました。血圧計も非常に扱いやすくなり、電動式のであれば、手を丸く輪になった布の帯に肘まで差し込んで、ボタンをポンと押せば勝手に血圧の数字が出てきます。手首や指先で計るのもありますが、正確さの点では肘の上で巻いて計るタイプがお勧めです。

立ちくらみのように一時的ですが血圧が普段より相当下がりますと、ふらつきなどの自覚症状がはっきりと出てきます。反対に血圧がかなり上がっていても症状になることは余りありません。とくに長年ゆっくりと血圧が上がってくるとますます自覚しにくくなります。このため健診では血圧を必ず計り高血圧の発見に努めるのです。中年以降の方では自宅に血圧計を備えて置いて、時々血圧を計るのは健康管理の上で大変有益なことだと思います。

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