A

アルボレアス/Alboreas

  1. ソレアーレス系(またはセギディーリャ系)
  2. ミの旋法
  3. 歌、ギター(独奏はされない)、踊り
  4. チーコ
  5. ヒターノ
  6. 「夜明け」の意
  7. 発生地はセビーリヤ・カディス両県内と思われるが、グラナダなどにも行なわれる。ヒターノたちの婚礼祝い唄で、みだりに演唱すれば不幸を招くと伝えられてきたが、近年レコード録音が行なわれたり映画に収録されたりし、このタブーは薄れつつある。
  8. 六音節四行のコプラを基本とするが変化もある。

アレグリーアス(・デ・カディス)/Alegrias(de Cadiz)

  1. ソレアーレス系
  2. 長調。ギター・ソロの場合にのみ短調をとることあり。
  3. 歌、ギター、踊り
  4. チーコ、ただし踊りとしてはグランデに属する
  5. どちらともいえない
  6. 「よろこび」の意
  7. カディスのヒターノたちによって歌われ(踊られ)始めたと信じられるが、メロディの比較検討からは、アラゴン地方の名高い民謡ホタJotaとの類似が明らかである。すなわち、19せ紀の初め頃、ナポレオン軍の侵入に対する愛国歌の役割をもってスペイン各地に普及したホタが、カディスにおいて、ソレアーレス系のリズムに乗ったものと判断される
  8. クァルテータを、通常2123434の順で7行にして歌う。ふつう本唄に続けて歌われる<フゲティーリョjuguetillo>、つまり軽い挿入句の部分は、セギディーリャまたは2行のアレグリーアの詩形をとる。

アレグリーアス・デ・コルドバ/Alegrlas de Cordoba

  1. ソレアーレス系
  2. 短調
  3. 歌、ギター、踊リ
  4. チーコ
  5. アンダルース
  6. 「コルドバのアレグリーアス」
  7. コルドバに歌われたカンティーニャ(軽いはやり唄)のひとつをアレグリーアスのリズムに乗せたものであろう。「カンティーニャス・デ・コルドバ」とも呼ばれる。
  8. セギディーリャとクァルテータを組合わせてある

アレグリーアス・デ・ピニーニ/Alegrias de Pinini
→カンティーニャス・デ・ピニーニ


B

バンベーラス/Bamberas

  1. 本来は自由リズム、ただしブレリーアスもしくはファンダンゴスの調子で伴奏されることがある。
  2. 短調(ミの旋法への傾きが強い)
  3. 歌、ギター(独奏はされない)
  4. チーコ
  5. アンダルース
  6. 「バンバ」すなわち、祭り日にさいして広場などに設けられる大がかりなブランコに由来する。
  7. 「バンバ」(または「コルンピオColumpio」ともいう)を立てて遊び興ずる慣習は、スペインでもアンダルシアだけに伝えられてきた。このときに歌われた古謡のひとつをとりあげ、カンテ・フラメンコの仲間に加えたのはニーニャ・デ・ロス・ペイネスであった。彼女のあとしばらく歌われなかったが、最近ナランヒート、M・マイレーナ、ガブリエル・モレーノらによって復活している。

バンドラ(バンドラー)/Bandola

  1. フアンダンゴス系
  2. ミの旋法(ファンダンゴス式)
  3. 歌、ギター(独奏はされない)
  4. チーコ
  5. アンダルース
  6. Bandola(マンドリンの一種)にちなむ?
  7. コルドバ県の南部からマラガ県北部にかけて行なわれる地方的なファンダンゴスの一型。ファンダンゴス・デ・ルセーナとのあいだに区別はつけにくい。
  8. ファンダンゴスに属す

ブレリーアス/Bulerias

  1. ソレアーレス系。ただし、はなはだ複雑化している。
  2. 正調のものはミの旋法、ただし、のちに種々の曲調が取入れられたため、長調・短調の場合も多くなり一定しなくなった。
  3. 歌、ギター、踊リ
  4. チーコ
  5. 本来はヒターノ
  6. 「からかい」を意味するburleria、もしくは「ボレロ風の」を意味するbolera(前者の方が強い)。
  7. おそらくヘレスにおいて、前世紀の後半、ソレアーレスの一型から派生したと思われる。世紀末より各地に普及、ヒターノの最も好む踊り唄となった。ヘレスをはじめカディス、トリアーナなどで、幾つものスタイルに分れた。もっぱら踊りのための活発なものを「ブレリーアス・フェステーラスfesteras」または「ブレリーアス・リガーダスligadas」と呼び、もっぱら歌のためのゆっくりした型を「ブレリーアス・アル・ゴルペ(ア・ゴルペ)al golpe(a golpe)」という。これらは古く純枠な曲調の場合であるが、今世紀に入ってのちはスペイン内外のさまざまな流行歌や、ほかの種類のカンテがこの快活なリズムに好んで乗せられるようになり、ありとあらゆるヴァラエティが生まれた。もちろん、その真の味わいは正調のものに求められる。(「本当のブレリーアスはカンテ・グランデの知識がなくては歌えない」アウレリオ・セリェス)
  8. 正調のものについてはソレアまたはクァルテータが多いが、自由奔放なものだけに多種多様。

ブレリーアス・ポル・ソレア/Bulerias por Solea

  1. ソレアーレス系
  2. ミの旋法
  3. 歌、ギター、踊リ
  4. チーコ〜インテルメディオ
  5. ヒターノ
  6. 「ソレアーレス風のブレリーアス」
  7. ブレリーアスのうち、ゆっくりしたテンポをとり、”母”であるソレアの気分を守った一型。生粋のカンテ・ヒターノとして重んじられるもののひとつである。なお、これと「ブレリーアス・アル・ゴルペ」とのあいだに、はっきりした境界を引くことはむずかしく、前者を後者のうちの一型とする見方も成立つ。
  8. ソレアまたはクァルテータが普通、ただし変型もある。

C

カバ−レス/Cabales

  1. シギリーヤス系
  2. 長調
  3. 歌、ギター、踊リ(近年始められた)
  4. グランデ
  5. ヒターノ
  6. 「完全な」の意
  7. おそらくセビーリャで生まれたものであろう。前世紀の中葉、シギリーヤスの”替え手”または”緩唄”のひとつとして編み出されたもので、創唱者はエル・フィーリョであるといわれる。今日もシギリーヤスに続けて歌われることが多いが、独立して行なわれる場合もある。一般のシギリーヤスと異って長調のため趣を異にし、明るく誇らかである。
  8. シギリーヤスに準ずる。

カチューチヤ(ラ・カチューチヤ)Cachucha(La Cachucha)

  1. セギディーリヤに類似
  2. 長調
  3. 歌、ギター、踊リ
  4. チーコ
  5. ヒターノ
  6. 「小舟」の意?
  7. もとは広く歌われた古謡であるが、グラナダのジブシーによって現代まで伝承された。
  8. クァルテータのあとに短いリフレインがつく。

カンパニリェーロス(カンパニジェーロス)/Campanilleros

  1. 3拍子系
  2. 短調
  3. 歌、ギター
  4. チーコ
  5. アンダルース
  6. 「小さな鐘を鳴らす人」の意
  7. アンダルシアで祭日の早朝、信徒たちが鐘を鳴らしながら歌い歩いた宗教民謡。マヌエル・トーレがこれをカンテ・フラメンコのレパートリーに加え、のちに1930年代から、ニーニャ・デ・ラ・プエブラがこれを流行させた。一方、ラモン・モントーヤやニーニョ・リカルドが、これにギター曲としての定型を与えた。
  8. M・トーレの歌った歌は、十音節・十二音節の交互する独特なもの。のちにはさまざまなものができた。

カンテス・デ・トリーリャ(トリージヤ)/Cantes de Trilla

  1. 自由リズム
  2. ミの旋法、ただしやや持殊なもので長調にもきこえる。
  3. チーコ
  4. アンダルース
  5. 「麦こきのうた」
  6. アンダルシアの囲囲に行なわれた民謡のひとつで、その歴史はきわめて古いことが想定される。もともとカンテ・フラメンコの範囲に入るものではないが、ときにカンタオールたちが取上げる。
  7. セギディーリャ

カンティーニャス/Cantinas

  1. ソレアーレス系
  2. 長調
  3. 歌、ギター、踊リ
  4. チーコ
  5. どちらともいえない
  6. 「軽い唄」「小唄」の意
  7. カディスに歌われた俗謡のひとつが、アレグリーアスのリズムに乗ったもの。本来カンティーニャスとは軽い歌の総称で、時には正調のアレグリーアスすらこの言葉で呼ばれる。ここでは、一般にカンティーニャスで通っている、のちのロメーラスによく似た一型について述べた。
  8. クァルテータまたはソレア(セギディーリャも挿入される)

カンティーニャス・デ・コルトバ/Cantinas de Cordoba
→アレグリーアス・デ・コルドバ

カンティーニャス・デ・ピニーニ/Cantinas de Pinini

  1. ソレアーレス系
  2. 長調
  3. 歌、ギター、踊リ
  4. チーコ
  5. ヒターノ
  6. 「ピニーニのカンティーニャス」
  7. ウトレーラに住むヒターノ、エル・ピニーニが創唱した。今日もおもにこの町の人びとによって歌われているが、たとえぱニーニャ・デ・ロス・ペイネスのように、他の町の出身者でこれを得意とした人もある。

カーニャ/Cana

  1. ソレアーレス系
  2. ミの旋法
  3. 歌、ギター、踊リ
  4. グランデ
  5. ヒターノ
  6. 古くアラビア語のGaunia(歌)に由来するという説が立てられたが、ほかに「酒をつぐグラス」の意とも。また〈Cana dulce de mi…〉という古謡のリフレインから取ったともいわれる。
  7. セビーリャ、カディス両県内に起った最む古いカンテ・グランデのひとつで、19世紀前半から格調高いものとして重んじられていた。音階練習のような、呪文めいた母音歌唱のリフレインが特色で、アラビア歌謡にもとづくという説もうなづける。長らく「あらゆるカンテの根幹」と考えられてきたものだが、現在、学問的にはこの説は受入れられていない。なお”後唄”として、マチョMachoと呼ばれる特別の曲調がつく場合と、ソレアの一型を転用する場合とがある。
  8. クァルテータによるが、詩行の中断やリフレインの挿入によって独特な型となる。

カラコーレス/Caracoles

  1. ソレアーレス系
  2. 長調
  3. 歌、ギター、踊リ
  4. チーコ
  5. ヒターノ(?)
  6. リフレインの句から。カラコーレスは「かたつむり」を意味し、食用のそれを売り歩く人のふれ声から来たという説もあるが、歌詞内容からの判断では、たんに「おやまあ!」といった間投詞にすぎないようである。
  7. 前世紀後半、おそらくカディスに起り、のちにマドリードでも流行した。創唱者としてはホセ・エル・デ・サンルーカル、パコ・エル・ガンドゥルらの名があげられるが、これを広くポピュラーにしたのはA・チヤコンである。
  8. 特別の詩形をとり、もっばら〈Como reluce…〉に始まる古い詩が歌われる。

カルセレーラス/Carceleras→マルティネーテス

カルタヘネーラス/Cartageneras

  1. 自由リズム
  2. ミの旋法(ファンダンゴス式)
  3. 歌、ギター
  4. インテルメディオ
  5. アンダルース
  6. 「カルタヘーナのうた」
  7. ムルシア地方の港町、カルタヘーナに生まれたといわれる。カンテス・デ・レバンテ(東方のうた)の一種だが、曲の感じはマラゲーニャスに近い。ゆたかな風格をもった歌であり、「レパンテの最高の芸術的表現」(リカルド・モリーナ)という評価もある。過去の名人として有名なのはコンチャ・ラ・ペニャランダとA・チャコン。

コロンビアーナス/Colombianas

  1. タンゴス系
  2. 長調
  3. 歌、ギター、踊リ
  4. チーコ
  5. アンダルース
  6. 「南米コロンビア国のしらべ」
  7. 中南米起源の曲のひとつに数えられるが、厳密に、コロンビアのどのような民謡に由来するかという段になると、証明するものは何もない。あるいは、コロンビアの娘のことを歌った歌詞にもとづく形式名なのかもしれない。
  8. 八音節六行の詩形が普通

チュフラ/Chufla

  1. タンゴス系
  2. 一定せず
  3. 歌、ギター、踊リ
  4. チーコ
  5. ヒターノ(?)
  6. 「駄じゃれ」の意
  7. カディスのヒターノたちによって歌い踊られるもので、タンギーリョスのとりわけユーモラスな一型といえる。
  8. 一定しない