日々折々

日々折々に思うことを書き連ねます

第6回 「行動ターゲティング広告」について

 前回に予告しましたが、この広告についてしっかり考えてみました。一般社団法人インターネット広告推進協議会というところが、この「行動ターゲティング広告」に関するのルールを作っているのです。
 ただし、この協議会のメンバーというのがとても胡散臭い。ad4Uという広告システムを批判を浴びてもなお使い続けた楽天。かつて、会社ぐるみで障害者の郵便援助を食い物にしたことのある博報堂。営利企業なのだから何より優先するのは利益なのだろうが、まるで振り込め詐欺師が自分たちの手口の許容範囲について規則を作っていると言っては多少過言かもしれないが、性格上の分類は正しいと考える。そのように揶揄されるような役員体制なのだ。役員一覧をご覧いただければ一目瞭然だ。IT関連企業と広告業界の人が集まって、カルテルを結んでいるのだ。大手全国紙もメンバーに入っているから、マスコミが批判することもない。

その協議会でのガイドラインというものが、このリンクにあります。

 そのガイドライン第4条の一番最初に挙げられているものが、「取得の事実」を通知するとなっている。そもそもホームページを訪れた時点で、デフォルト設定が"On"になっているということが筆者には気に入らない。盗んだ後で、気がついた人には「盗むと通知していたじゃないか」と開き直るような姿勢なのです。さらに「通知」とは何事か。「お知らせ」ならばまだしも、法的拘束力を仄めかすような「通知」という用語の使い方には不快感が先に立ちます。インターネットのweb閲覧を上から目線で言われるのは失礼千万。盗みはしても、アリバイは作っておくこと。そんな風に読めてしまう。この「通知」を含めた用語については、項を改めて考察してみたい。

 IT関連場事業者とホームページ制作者が連んで、マスコミが後押しをする。厄介なことは、ホームページを運営する側だけの問題だけではないことである。インターネットを閲覧するためにはブラウザが不可欠だ。そのブラウザを提供する企業が限られてしまっていることと、その企業もこの現象に荷担していることが不透明で難解な状況を作り出しているのである。最近では、トラッキングに使用されるサードパーティCookiesの禁止に対応する技術も登場したので、IE(インターネット・エクスプローラ)がデフォルトでトラッキング拒否になったけれども、もはや遅きに失している。穿った言い方をすれば、新技術が確立されるまでのデフォルトが「受入」だったことを考えると、これも出来レースだったかと切歯扼腕します。
 インターネットの本家米国では米連邦取引委員会(Federal Trade Commission)が乗り出しているが、我が国の総務省はすでに承認している。総務省主催の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」のメンバーにはやっぱり博報堂の方が入っていたので鼻薬が効いていると考えるのが妥当であろう。所管官庁がすでに許可しているので、誰にも文句を持って行くところがないというのが現状である。では、「おまえはこの広告のどこが不満なのか」という人にお答えしなければなるまい。
 スノーデン君が暴露したNSAの通信傍受の問題は、彼が暴露しなければ誰も知らなかったことである。知っている役人には守秘義務が課せられている。その情報を活用して悪人が捕まるのならば少しもかまわない。私は戦前の特高警察なようなことを心配していない。シビリアンコントロールは定着していると考えているからだ。
 しかし、この広告システムは、毎日の生活の中に入り込んでくるのである。目的があってネット検索をしているときに、私の趣味に合致するからと言って、現下の検索事項とは無関係なものがポップアップされたのでは精神衛生上非常に良くない。効率が落ちることはもちろん、多の人と画面を共有しているときには余計な心配をしてしまう。そんな不安を覚えたことはありませんか。ことさら隠しているわけでもないのに、かつて持病について検索したことがあったというだけで、その関連サプリの広告が頻々と表示されたのでは堪らない。この広告システムのことを知っている人にとっては、他人の画面を覗いているだけでその人の年齢や趣味・嗜好や病気のことが知れる、ということになってしまう。
 プロジェクタでプレゼンをするときにインターネット検索をしたりすると、会場中の人にあなたのことが知れ渡りますよ。そういうことを国家の安全と天秤にかけるというのならまだしも、そのメーカーの利潤のためだというのは、どう考えても可笑しいでしょう。

ひとつだけ、安心なこと(「情けない」の方が適切か)があります。私個人について収集された情報を「Google Ads Across the Web」で確認したところ、年齢も性別も大ハズレでした。主に使う言語に至っては「ロシア語」ですって。なんだこりゃ。時々、自分の趣味とは無関係のことをググってみて、広告システムを攪乱しておくことも対抗策として有効のようです。まぁ、そんな程度の広告システムではあるのです。しかし油断していると長足の進歩を遂げますから、ご用心、ご用心。
Early morning July 19 , 2013 綴


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