日々折々日々折々に思うことを書き連ねます
第5回 NSAより怖いもの
スノーデンという若者が正義感に駆られて、全世界のスパイ業務を暴露したことについて、いろいろ考えさせられました。
私自身は、自分のメールを盗み見られたり、電話を盗聴されても、些かも痛痒を感じません。
それは、盗聴されるような価値のある人間でもないし、その種の重要な情報を扱う職にも就いていないからです。自分が盗聴されていると感じて憤る人々は、どれほどの人たちなのだろうと考えてしまいます。まさか、NSAが自分の一挙手一投足を常に監視している等と真剣に考えているとしたら、これは膏肓に至る病と言わざるを得ません。
郵便配達の職員に自分の住所を知られてしまった!
宅配便のユニフォームを着た人に自宅を知られてしまった!
プロバイダに自分のメールアドレスを知られてしまった!
区役所の係員に戸籍情報を知られてしまった!
税務署員に自分の所得を知られてしまった!
このようなことで大騒ぎする人がいるでしょうか。問題は、それを知って必要な仕事をする人が、その情報を漏洩することではありませんか。つまり、知っているけれども、それは一般には漏らさないと言うことを前提にして、この社会は機能するものなのです。住所は知られたくないが、郵便は配達して欲しいということを言う人は、この社会の構成要件を理解していない人だと言わざるを得ません。スノーデンという若者は、前述の仕事に向いていない人なのです。たぶん、郵便局に就職しても悩んでしまうのでしょう。郵便局員は個人情報を知っても良いという法律はありませんから。無論知った情報を漏洩すると守秘義務違反に問われますが。
NSAは国家の安全を職務とする部署ですから、傍受はテロ対策のため等と事例を挙げること自体手の内を見せることになるので、当局は完全に沈黙すべきだと思います。現今のメディアは、いやメディアに従事する人にも大いに反省を促したい。犯罪解決に繋がったときには、街角の監視カメラの充実を褒め称える記事を書き、今回のような内部告発者が出たときには、個人の私生活がまるでテレビ中継されるかのような錯覚を与える報道をする。無定見、無教養と言わざるを得ない。
私たちは、安全は何かを犠牲にしなければ保障されないということを理解しなければならない。もっと言えば、社会生活とは何かしら犠牲の伴うものなのである。一切の自己犠牲を峻拒するというのならば、無人島を購入して原始生活をするほかないのである。スノーデンは単なる純真な若者だが、それを大問題にしようと企図しているメディアは悪質です。もしも、軽薄なメディアの煽動に乗せられて、厳格な「個人情報保護」を施行されたら、監視カメラは撤去され、安心して町を歩けなくなるかもしれない。携帯データから犯罪の証拠を引き出すことも禁止されたら、ストーカー犯罪はやり放題でしょう。振り込め詐欺も激増しますよ。要するに犯罪者にとって最も都合の悪い行為が、「傍受」なのだと知らなければならないのです。
閑話休題。
行動ターゲティング広告というのをご存じでしょうか。これはNSAのメタデータ収集などより遙かに悪質なものだと、筆者は感じています。政府機関が行っていないので、監視するものもいない。長文の契約書の小難しい行間に紛れ込ませて、デフォルト設定では承認していることになっている。ちゃんとユーザに了解を取っていると平気で嘯く様相は、悪徳商法となんら変わりない手口で、私たちの生活データを売買している。IT関連のビッグネームはほぼすべてこれを積極的に使っているのである。
インターネットを使っていて、なぜか自分の興味のある広告がよく表示されると気づいた人は、「行動ターゲティング広告」でググってみて下さい。インターネットの黎明期にはクッキーが、そして今はもっと手の込んだ手法でユーザ情報は蓄積され、売買されていることに多くの人が気がついていない。スノーデン君よ、若者が怒るのはそこら辺ですよ。国家機密は、君の手に余る事柄です。
この話題については、もう少し煮詰めてから書きたいと思うので、この辺で筆を置きます。(キーボードから手を離す?、と表記すべきかな。)
Night July 17 , 2013 綴
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