私の書棚

記憶に残る書籍について思うことを書き連ねます

第9回 毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記
著者 北原 みのり 出版社: 朝日新聞出版
Kindle 版


 作者の北原氏は、よく分からない人である。少なくとも旧来の倫理観に囚われない、半世紀前ならば、破廉恥と呼ばれたであろうことは想像に難くない。よく知らない人だったのでwikiをググってみたけれども、少しも分からない。多分、量子論的に言えば多世界宇宙の、私とは異なる時空に存在しているのだろう。

 それはともかく、タイトルの「毒婦」というのが、作者の疑似「進歩的」な言動とあまりに噛み合わないので、読んでみた。男女雇用機会均等法発布以来死語となったこの言葉が、これ程人口に膾炙するとは意外だった。

 本の内容と言えば、事件の深刻さとは裏腹に軽い描写の羅列で、被疑者の服装ばかりが矢鱈丁寧に描かれていて、心象の観察など無いに等しい単に冗長な裁判傍聴記と言ったところであった。

 にも関わらず、ここに取り上げたのは、読書にはこういう無駄や徒労もつきものだと言うことを自戒の意味も込めて書いておきたかったからだ。胃に穴を開けたり、精神を病んでしまうほど刻苦勉励して表出してくれる作家が生前は評価されず、死後に名を残すと言うことがある反面、本書のような駄文でも衝撃的な表題だけで売れていくという現実もあるのである。

Night Dec 12 , 2013 綴


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