私の書棚記憶に残る書籍について思うことを書き連ねます
第8回 元素周期表で世界はすべて読み解ける
〜宇宙、地球、人体の成り立ち〜
吉田 たかよし Kindle 版
吉田氏は、東大工学部を卒業された後、NHKのアナウンサーとして就職し、退職後北里大学に進学しw
て医師となる。大物政治家の秘書をした後衆議院議員総選挙に自民党から立候補し、落選。総務省ICT利活用遠隔医療研究のプロジェクトリーダーをされたり、大学の客員教授をされれたり、テレビ・ラジオでタレント業をされたり・・・とにかく吃驚するほど多才多芸な方のようです。
と、この経歴のどこに元素周期表と結びつくのかと訝りながら読んでみました。ご自身の言によると「量子化学」の専門家だそうで、ちょうど私も量子論に興味を持っていた時なので、思わずこの本にも手を伸ばしたのです。
確かに、本文の数カ所に量子論に触れられたところはあったが、主として人体の機能が元素によっていかにうまく動作しているかという所が主眼であった。医学的見地からのそれはそれでおもしろかったのですが、それだけのことでした。嫌みな言い方をすれば、この本には哲学の片鱗もない。クイズ番組的な、現今流行の言葉で言えばwikiに過ぎないという印象でした。もっと厳しく言えば、教養に乏しい作物だった。知識が人間の精神活動の触媒となるものが教養だと信じている私には、この作者の多才で豊富な知識が少しも生かされていないと感じられる。私たち凡人が求めるものは、知識だけではないのである。吉田氏の類い希な能力を、そろそろ省察へと向ける日が来ることを楽しみにしています。
とは言え、高校で暗記力を試される表に過ぎないと思っていた物が、少しだけ理解できた気がすることは、賞賛しておこう。
Evening Dec 12 , 2013 綴
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