私の書棚

記憶に残る書籍について思うことを書き連ねます

第2回 「虐殺器官」伊藤計劃

 伊藤計劃さんは、若くして亡くなった方です。上記の作品は、デビュー作だということでした。ジャンルはSFということで、楽しい暇つぶしのつもりで購入したのですが、はっきり言って楽しいものではなく、また私のカテゴリーではSFと呼べないものでした。執拗なスプラッター表現と、自己陶酔気味のボキャブラリーと、累層的な衒学が鼻につくストーリーテリングは、近年あまり見かけないものでした。決して論難をしているわけではありません。衒学と言わしめるくらいの知識があることには敬意を払います。しかし「知的」と言わずに衒学と言ったのは、果たしてこのジャンルの小説にふさわしいとは思えなかったからなのです。伊藤計劃氏風に言えば、純文学のテリトリーにイントルードするメタヴァイオレンスを感じたからなのです。
 SF小説としては、小道具やテーマはとても興味をそそられるものでした。直前に今野敏氏のギガースものを読んでいて、浅学さを感じていただけに、とても新鮮でした。(今野敏氏やっぱり警察ものの人ですよ)
 もっとスプラッターを巧く言い換えて、豊かな発想を前面に出してもらっていたら、楽しめたと思いました。私は誉田哲也氏のようなスプラッター好きの小説家は苦手なのです。伊藤計劃さんの作品は暇なときにもう1冊くらいは読んでもいいかなと、思わせるものでした。くどいようですが、スプラッターは苦手なので、次に読む作品にも血飛沫が出てくるようなら、その時点で終わりにします。
 それにしても、表題のインパクトはすごいものでした。

Night Nov 16 , 2013 綴


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