私の書棚

記憶に残る書籍について思うことを書き連ねます

第14回 iPS細胞騒動〜ヒトiPS細胞に関するHopeとHype〜
著者 森口尚史
発行 アドグッド


 何を物好きな、そんな本を買うなんて、・・・他人に言われなくても自分でもほとんど呆れているのです。表紙にはマスコミでお馴染みの森口尚史の非科学的なとぼけた顔がアップで載っていた。手に取るだけでも恥ずかしくなるような装丁でしたね。
 しかし、マスコミの報道だけで判断せずに、本人の弁明もきちんと読んでおきたいと思ったのである。
 私の読後感は、米国のS嬢とのお付き合いについての自慢話の間に、何やら科学的な用語を使っての軽い雑談を聞かされたという印象であった。副題にHypeとあったが、この方にとってはHopeとHypeはほぼ同義語なのだろう。小保方さんと違って、我が国の学術界で誰一人味方をする人がいないという、正しく孤立無援の状況でもこのような本を出せる精神は並大抵ではなかろう。
 詐欺師で逮捕された人の中には獄中で、悪事を働いたことを反省するのではなく、詐術の至らなさを反省し、次こそ完璧な詐欺を実現しようと期する人もいると聞いたことがある。森口さんは、今回の騒動で落ち込むわけでもなく、本まで出版して稼ごうという方なので、同情など必要ともしないであろう。

 読者諸氏に助言をします。この本は立ち読みで済ませる類いのものです。しかし、いい本に巡り会う喜びを得るための道すがらには、この手の本に騙されることも読書家の常と心得るべきなのかもしれません。私の場合は、はじめからリスクを承知で読み始めたのですから、本代を返せとは言いませんが、時間は返して欲しいと思いました。

Night July 9 , 2014 綴

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