一日の終わりに
はぁー。白く煙る息。 彼の部屋は暖房機具、なんてものはなくて。 布団にくるまって、主の帰りを待っている。
時計の針とさっきからにらめっこするけれど、まるで意地悪されているような気分。ちっとも動かない。 まくらを抱えて、また一つ二つ白いため息をつく。
何か特別な話をするわけでもないけれど。 学校でもクラブでも一緒にいるけれど。 でもやっぱり。
瞳を閉じて考える。 今日は何から話そう。 たくさんありすぎて順番を決められない。 今度は幸せなため息を一つ。
バイトを終えて、彼は家路を急ぐ。 やがて小さなアパートの2階の窓に明かりが見えてくる。 帰りを待ちわびている人がそこにいる。
いつしかそれを確認するのが習慣となった。 どんな北風に吹かれても、心に灯る安らぎとぬくもり。
カン、カン、カン。 階段を静かにのぼる。でも心は駆け上がる。 ドアを開けると、笑顔で出迎えてくれる人が待っている。
ガチャリ。反応無し。 「江藤…?」 いつもと違う静けさに少し肩透かし。
不思議に思って近づいてみた。
まくらを抱えて、布団にくるまって。 幸せそうに微笑みながら、眠る彼女。すっかり夢の中。
「まいったな…」 彼女の前に座って頭をかく。 それは彼女が自分の布団を占領しているからではなくて。 起こすのが可哀想なくらい、よく眠っているからでもなくて。
あまりにも無防備な彼女の唇が原因だとは、彼女は知る由もなく。
かるさんへプレゼント。 お話というよりは、限り無く詩に近いですね。 内容よりは語感、韻を重視して書いたものです。 でもありがたいことに、かるさんから「一番好きかも」と言って頂けたり、 そして和紗さんがこの前後のエピソードをお話にして下さったという、 とっても嬉しい作品になりました。
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