読んで不愉快になっても責任はとりません的、6月6日お誕生日記念駄文。




前回までのあらすじ(嘘)

やあ。僕はカヲル。渚カヲル。
シンジ君と同じ仕組まれた子供、フィフスチルドレンさ。
と同時に、最後の使者でもある。つまり、かなりの重要人物ってことさ。
元々はゼーレという主に年金生活者で構成されたご老体集団から、
なんだかよくわからない使命を背負わされてネルフにやってきた派遣チルドレンだったんだけど、

あの日、あの時。

夕日に赤く染まる芦ノ湖湖畔で、彼、−碇シンジ君−に出会ってから…
僕の運命は大きな音をたてて変わったんだ。

まあ、いろいろなことがあったけどその全てを記すにはあまりにも時間が足りない。
とにかく、今、僕が彼と共に生きていて誰もが羨むラブラブっぷり(ここ重要)
だということだけ知っておいてくれれば問題ないよ。



6月6日
第三新東京市新市街地

(旧市街は綾波レイ(二人目)の自爆でふっとんでしまったからね。)

「ねえ、カヲル君、何処へ行くの?」
学校が終わってから「ちょっとつきあって欲しい」と、行き先を言わずにシンジ君を引っ張ってここまでやってきたんだけれど、
当たり障りの無い会話(主に西洋哲学史について)をしながらも避けていた問題にとうとう触れられてしまったようだ。
さすがにもう、学校を出てから2時間は道程を経ているからね。

2時間の間、この質問をするかどうか悩んだのだろう。
少しだけ不安そうに、小首を傾げて僕を見るしぐさは、このまま星になっても良いくらい超絶に愛らしい。
なにげない日常のしぐさでさえ、僕を魅了してやまない、そして、その魅力に無自覚な僕の運命の人。
その彼と時空間を共有する喜び。

嗚呼!生きてて良かった。
神様僕は幸せです…!

歴史上でリリンに創造された全ての神々に感謝をささげたい気持ちで一杯さ!
というか、ささげよう。今すぐ。
まずは、日本の八百万の神々からだね…。



「ね、ねえカヲル君…。僕、なんか、悪いこと聞いちゃった…?」
しまった、少しトリップしてしまったようだ。
急に黙り込んだ僕に、シンジ君はやはり触れてはいけないことに触れてしまったのかと思ってしまったらしい。

慌てて僕は彼にしか見せない特別な笑顔をつくる。
「そんなことはないよ、シンジ君。すまないね、少し考え事をしていたんだ。
もうすぐそこだからあと少しだけついてきてくれるかい?」
「う、うん…・。」

ふう、僕の28ある必殺技の一つ、「風のように爽やかな笑顔」でこの場を取り繕うことに成功したよ。
目的地までなにも告げずに彼を連れていくのが今の僕の使命なのだから、失敗は許されない。

「ここがそうだよ。」
ある超高層ビルの最上階、そこが今日の目的地だった。
会員制の高級カラオケBOXのワンフロアをぶち抜いた一番広い部屋。
もう、準備も終わっている頃だろう。

「さあ。入って。」
何故こんなところに連れてこられたのかまだ釈然としない様子のシンジ君を促す。
彼が扉を開けて、一歩その部屋に踏み出した瞬間。

「「「ハッピーバースデー!!」」」×13人
「クッ、クエ〜!!」
そこかしこでクラッカーの音が鳴り響く。

「・・・・・・。」
何が起こったのかよくわからず、キョトンとするシンジ君。

ガラス窓から空が見えるだだっ広い室内は綺麗に飾り付けられて。
誕生日には欠かせないろうそく付きの大きなデコレーションケーキや、美味しそうな料理も所狭しとテーブルに並んでいる。

部屋の中には関係者各位が笑顔で彼を待ちかまえていた。

葛城三佐、赤木博士、綾波レイ、弐号機パイロット、三重スパイ、オペレーター三人組、
ジャージとメガネ、委員長、冬月副司令、温泉ペンギン、さらには、
なんと、晴れがましい席には凄まじい場違い感を放つ、
青空が似合わない男三年連続NO.1(ネルフ諜報部調べ)碇ゲンドウまでも。(もちろん笑顔で。)

ちなみに、何故サプライズパーティーをカラオケボックスで行うことになったかというと、
碇シンジ君誕生会計画第17次会議で僕の「歌はいいね。」という意見が採用されたからなんだけどね。

「あ、あの、えと、みんなどうして…?」
「何言ってんの〜今日はシンちゃんの誕生日じゃない♪」(すでにほろ酔い)
「ク、クエェ〜」
「忙しいこの私が、わざわざあんたを祝ってやろうってのよ!力一杯感謝しなさい!」(仁王立ち)
「ク、クエエエエェ〜」
「碇君…。」(心の中でポエム作成中)
「クエェエエェ〜!」
「センセ、ビックリしたか?」(ジャージ)
「クエクエックッくええええ〜!」
「シンジ、良く来たな。」(威圧感)
「クエックエクエクエクエーッ!」

等々、集まった人々が口々にシンジ君に話しかける。
…それはいいとして、鳥、自己主張が激しすぎ。一体何を狙っているんだい…?

何はともあれ、主賓の到着で祝宴が始まった。

「カヲル君・・・あの、僕こんな風にしてもらうの初めてで…・」
感激にうるんだ瞳でどうしたらよいかわからない、と僕を振り返るシンジ君。

「みんな、君がこの世に生まれた日を祝うために集まったんだよ?
さあ、主賓がそんなところに立っていてはいけないよ。」
と、席を勧める。いわゆるお誕生日席って言うヤツだね。
もちろん、自分がその隣に座ることも忘れない。

…そこで僕は計算違いをしてしまった。
「僕はここにいてもいいのかな?」

それはシンジ君が年の割には妙に礼儀正しいというか、社会的儀礼に厳しいというか、
変に折り目正しいという事。
つまり、彼には「上座には目上の人が座るべき」という常識があって。
この席にいてもいいのか?という意味で「ここにいてもいいのかな?」と、言ったんだけれど。

主賓なのだから気にしなくてもいいんだよ、と彼に告げる。
彼はホッとして、やわらかく微笑んで、

「僕は、ここにいてもいいんだ。」と納得してくれた。

パキンッ!

しかし、その言葉によって恐るべき「最終呪文」が発動してしまったのだった。

それまで、思い思いに飲んだり食べたり選曲の為に歌本をめくっていたりしていた面々の動きがピタリと止まる。

そして、次の瞬間にはズラーッと立ち位置に整列してシンジ君を囲む。

「おめでとう。」
「おめでとう。」
「おめでとう。」
「おめでとう。」
「おめでとう。」
「おめでとう。」
「めでたいなあ。」
「おめでとさん。」
「ク、クェ〜!」
「おめでとう。」
「おめでとう。」
「おめでとう。」
「おめでとう。」

「「おめでとう。」」


ああ、居ないはずの碇ユイまで何故か復活して来ているよ・・・。
そして、シンジ君は虚をつかれたようにしていたが、
晴れ晴れとした微笑みで最後のセリフを口にした。

「ありがとう。」

もう、それは人々の意志とは関係無く。

あたりがフェイドアウトして
黒地に白い文字で例のテロップが。



父に、ありがとう
母に、さようなら

そして全ての子供達に

おめでとう




………補完完了。

ああ、やってしまったよ。
この呪文の何が恐ろしいかって、この僕、渚カヲルは
強制排除っていうところだよ。
不可視の力で一瞬にして部屋の外まで吹っ飛ばされる。

鳥でさえ…!鳥でさえ出番があるというのに…!僕は鳥にも負けるのか。
これがリリンの感じる情けないって感情かい?うう。

とにかく終わったようなので、
部屋に戻る。
何事も無かったかのように場は盛り上がっている。碇ユイも消えているし。
綾波レイがちらりと無表情で僕を見る。
彼女を除いて全員さっきのことは記憶に残ってないようだ。

「カヲル君、どうしたの?急にいなくなったから心配したんだよ。」
ああ、シンジ君は優しいね。

急に嬉しくなって僕は彼を思いきり抱きしめる。

「わっ!ちょ、ちょっとカヲル君、いきなりどうしたのさ。」

顔を真っ赤にして恥ずかしがるシンジ君。
相変わらずだね、気にしなくてもいいのに。
まわりのみんなもいつもの事として全然気にしていないし。
碇ゲンドウだけはもの凄い殺気を含む視線を送ってきたが当然無視。

僕は彼のいい匂いのする髪に顔を埋め、改めてさっきは言えなかった言葉を囁く。

「おめでとう。シンジ君。」

「…ありがとう、カヲル君。」

僕の腕の中で、ふわり、と微笑む彼は、もう最高に可愛かった。








終わっとけ。








なんだかよくわからないが、ダメだということはハッキリわかる物を書いてしまった。
カヲルさんはなんかアレな人って感じだし。
反省。
しかし、祝う気持ちだけは凄まじくあるんだよ。
その辺をくんで下さい。
叙情酌量の余地ありじゃよ?
2000,06,07

2004,06,06微妙に改訂

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