安土さまからのありがたい頂き物・その2。

君からの電話が、こんなにも快いのは、
僕が君の声を、とても好きだからかもしれない.




              君の声が…




「もしもし、シンジ君、今、閑かい?」

「あっ、カヲル君、
うん、何か用?」

「用、っていう訳じゃないけど、さっきテレビでね…」


30分ほど、他愛無いお喋りをして、
カヲル君は電話を切った.

一息ついて、考えたら、
落ち込んでいた気持ちが、すっかり治まっている.



数学の時間、ボンヤリしていて、注意されて、
その後、ずうっと、自己嫌悪に苛まれていた僕、

いつもだったら、
帰りがけに、カヲル君が、
それとなく癒してくれるから、

最近の僕は、
学校での憂鬱を、
家にまで持ち帰る事はなくなっていた.


だけど今日は、カヲル君は委員会で、
僕一人で帰ってきたから、

一人で帰る寂しさと相まって、
余計落ち込んでしまったけれど…

夕飯後の一時に、
カヲル君が掛けてくれた電話は、
僕のささくれ立った心を、すっかり癒してくれた.




「もしもし、シンジ君、今、時間ある?」

「あっ、カヲル君、
ご、ご免ね、今夕飯の用意してて…」

「そうなの、
それじゃあ、又後でかけるね、
7時半なら、空いているかな.」

「うん、7時半に待ってるね」



もうすぐ7時半だ、
カヲル君は、時間をたがえる事がないから、
僕は電話の前でスタンバイ、

ジリジリジリー

あれっ、5分ぐらい早い?

不思議に思いながら、受話器を取ると、

「もしもし、シンジ、あのさ…」
飛び込んできた声は、アスカだった、


「う〜ん、だからね、ちょっと聞いてるの?シンジ…」
僕の気持ちにお構い無しに、
アスカはべらべら喋ってる.

ああ〜、もう40分、
カヲル君、怒ってるよね.


「あらっ、もうこんな時間、
嫌だなあ!数学の宿題があるのに…
じゃあね。」

僕の気持ちにお構いなく、
アスカは、自分の言いたいことだけ喋って、
一方的に電話を切った.



「なんなんだよ、まったく…」
泣きたくなりながら、
慌てて、カヲル君に電話を掛ける.

ジリジリジリー
一回目のコール、

ジリジリジリー
2回目のコール、

ジリジリジリー
3回目のコール、

寝ちゃった?
それとも、怒って出てくれない?


不安で胸が締め付けられた時、
コールがやんで、綺麗な声がした.

「もしもし…」

「あっ、カヲル君、ご免ね、
アスカが長電話で…」
慌てていうと、受話器の向こうから優しい声が返る.

「そうだったの、
誰と話しているのかな?って思ったよ」
その声の中に、責める調子がないので、
なおさら心苦しくて…

「アスカは人の都合なんて、お構いなしなんだもの…」
用がある、といって断れなかった自分の弱さを、
アスカのせいにして言い訳する.

電話の向こうでカヲル君が小さく笑う.
「それはシンジ君は、アスカには断れないよ」

「あっ、どういう意味?酷いなあ!」
見透かされているようで、
照れくさくって、
でも、心地よいお喋り…


話してる相手が、カヲル君だから?
それとも、こんなに綺麗で、僕の好きな声だから…?


「それで、何の用事なの?」

「大した事じゃないんだけど、
今日の数学の宿題、
3番が引っ掛けになっているから、気を付けた方がいいと思って、
ああ、もうやっちゃったかな?」

「ううん、まだやってない、
ありがとう、
カヲル君は、もう終わっちゃったんだ…
そう言えば、さっきアスカがね…」

心地よさを手放したくなくて、他愛ないお喋りを続ける.
カヲル君は優しい声で、
相槌を打ってくれる.


クッシュン、

受話器の向こうで、小さなクシャミ、


「カヲル君、風邪でもひいたの?」

「え?、いや…」
カヲル君らしくない、歯切れの悪い返事の後、

「実は、シャワー、浴びていたんだ」

ええ〜っ!
シャワーの途中?
「風邪ひいちゃうよ!、カヲル君!」


アスカの事なんて言えない、
人の都合を考えないのは、僕のほうだ、

考えてみれば、
カヲル君が何故、すぐ電話に出られなかったのか、
まず聞くべきだったんだ…

「大丈夫だよ、
バスローブは着てるから…」
裸を想像しただろう?って、からかわれても、
一緒になって笑えないよ.

「風邪をひくから、早く入り直してよ」って言ったら、

「大丈夫だけど、
それじゃあ、出てから又掛けるね」って、
やっと電話を切ってくれた.




カヲル君の電話を待ちながら、
カヲル君のことを考える.

何故、カヲル君からの電話が心地良いか思い当たった.

「もしもし、今閑かい?」
「少し時間ある?」

カヲル君はいつでも、まず僕の都合を聞いてくれる.
だから、断る事の苦手な僕でも、
忙しい時は、そう言う事が出来る.

勿論、カヲル君だって、急な用で掛けて来ることはある.
そんなときは、カヲル君はまずそれを告げる.
「急ぎの用なんだ、悪いけどシンジ君・・・」


電話というのは、相手の状態が見えない、
自分は閑でも、相手はそうとは限らない.
忙しい時、一方的に掛かってくる電話にいらいらする事が多いから、
僕は電話は、あまり好きではなかった.

だけどカヲル君からの電話はそうではない、
相手が見えないからこそ、
まず、こちらの事情を気遣ってくれる.

だから、こんなにも、
カヲル君の電話は快いのだと思う.
勿論、僕がカヲル君を大好きだ、というのも大きな理由だけど…


ジリジリジリー
程なくして、カヲル君から電話が掛かってきた.

「お待ちどう様」って、綺麗な声が告げる.

「大丈夫?、風邪ひかないかな?」って言ったら、

「ひいたら、看病してね」って笑いながら言う.

「もう、シャワーだって、言ってくれれば良かったのに…」
つい、恨みがましい声を出して、

それから今までの事を謝ってしまう.

「僕、いつも自分の事ばかりで、
カヲル君が用があるかも聞かないで…」
「カヲル君も、遠慮しないで言ってよ、
僕、気が付かない事、多いんだから…」

「だって、本当に用なんかないんだよ.」
閑で可哀相だろう?と笑った後で、

「シンジ君からの電話より大事な用なんて、
僕にはないよ」と真面目な声で告げられ、
その後、
「知っていた?
僕は、シンジ君の声が大好きなんだよ」と、
綺麗な声が囁いてくれた.

ああ〜、僕だって、
僕のほうこそ、
君の声が大好きなのに、
役立たずな僕の口は、
何でそれを告げられないんだろう.

せめてこれが電話でなければ、
想いをこめて、見詰める事が出来るのに…





安土さまからまたまた可愛いお話を頂いてしまいました〜!!

渚さんは碇君の精神安定剤という感じで非常にええ感じッス!!
そして、カヲルさんにシンちゃんのからの電話より大事な用事など、全宇宙探しても存在しないでしょうとも!!
二人とも正座して電話してそうです(笑)

それにしても、好きなのは「声」だけか?ん〜?とどっちにも
ツッコミを入れたい気持ちです。可愛い二人だ〜!

あとカヲシン好きとかそういう立場を超えて純粋な声フェチの感想としては

そんな耳元で碇シンジの声聴いたら脳ミソとろけるよ絶対!!

ってことで一つ。コハー!

この声フェチめのツボにはまる素晴らしいお話をありがとうございました〜!!


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