Ethan Weisgard
World Jazz Monthly

 

The Danish Radio Big Band's Tour Canada / USA January 2003

 ここデンマークは、まだとても寒く、たった今マイナス摂氏六度です。貴方の国では、より暖かい事を願っています。

 デンマーク放送ビック・バンド(DRBB)は、今年の1月にトロントで行われた「国際音楽教育機構(IAJE)」が主催する大会に出演を依頼されました。この IAJE は、音楽業界及び音楽教育者の国際的な組織で、35ヶ国から約7000名の人々が参加して、講演会(研究会) やワークショップ、コンサートが催され、広大な展示エリアでは最新の楽器をはじめCD、譜面などが紹介されていました。
 コンサートは、昼間に高校や大学、ミリタリー・バンドの演奏があり、日没後、約2000人を収容する大ホールでプロのバンドによる熱演が繰り広げられました。DRBBは、ジム・マクニーリーの指揮で、カナダのピアニスト、リニー・ロスネスをゲストに迎えての演奏でした。この春に、Blue Note からリリースされるニュー・アルバムでも二人をフィーチャーしており、このCDのプロモートをしている最中です。リニーはコンベンションの間、他にも幾つかのコンサートでソロイストとして出演していましたが、私達の演奏した夜も、ご機嫌なベーシストであるジョン・パティトゥッチ率いるスモール・バンドとプレイを行い喝采をあびていました。このコンサートの聴衆は、すべての人がミュージシャンと音楽の先生でしたから、音楽に対する要求度に大層厳しいものがありました。しかしDRBBのコンサートは、非常に上手くいき観客の好意的な評価を受け、並み居るコンサートの中でも最も魅力的なひとつであったと自負しています。
 私は、サックス奏者のボブ・ミンツァー (イエロー・ジャケッツやビッグ・バンド、その他の活躍で知られていますネ) と会う機会があり、彼からDRBBのサウンドと演奏に対して大きな称賛を頂き、一月の下旬に私達と一緒に演奏するためコペンハーゲンを訪れることになりました。
 また、サルサ・ピアニストで編曲家のMark Levine による「Clave のアレンジ? ラテン音楽における特殊なリズム構成と、その重要性」 という大変興味深いレクチャーを受けるなど、多くの素晴らしい音楽に触れる機会を持つことができました。
 私達は、トロントの大会に三日間滞在して、次ぎの公演先であるボストンへ移動。バークレー音楽学校のすぐ近くにある「Ryle's」 というジャズ・クラブで二夜の演奏を行いましたが、ここでもまた聴衆の殆どはミュージシャンと音楽学校の学生で盛況でした。このクラブはご機嫌な所で、その長い歴史の中で多くの著名なミュージシャンが出演したそうです。予定表の中に、以前我々の音楽監督を務めていたボブ・ブルックマイヤーの名前も見付けることができました。小さなクラブで演奏するのは、大きなコンサート・ホールで演奏するのと違った素晴らしさがあります。バンドは、ほとんど観客と密着した状態で座るので、私達の演奏に対する反応がつぶさに解るのです。これは奮い立ちますヨっ!
 私達のツアーは、ニューヨーク市が最後でした。ボストンからのバスの旅はとても快適で、美しいニューイングランド郊外を見ることができ、とても素晴らしかったです。私は、元々コネチカットの出身なので、まるで故郷を見る思いで大変嬉しかったです。そう云えば、貴方の国の言葉には、何かを見て良い思い出を呼び戻してくれる “懐かしい” という美しい言葉がありましたネ。
 ニューヨークでは、グリニッジヴィレッジにある「Joe's Pub」 でのコンサートが、今回のツアーにおける最終公演となりました。このクラブは、約200席の小さな会場で、ステージも非常に狭く、楽器をぶつけるくらいに寄せ合わせ、何とかやりくりしてステージに乗ることができました。観客は、まるで私達に覆い被さるようでした!(注:1)しかしここでも私達は、観客との距離が非常に近かったので、奮い立ちました。そしてこの日が、今回のツアーにおけるベストだったと確信しています。リニー・ロスネスの美しいピアノは、とても素晴らしかったです。彼女のソロを盛り立てる私達のリズム・セクション・・・。聴衆は、私達のバンドを初めて聴いたようでしたが、とても感銘を受けていた様子を、その反応で実感しました。私はこの夜、演奏できたことを誇りに思っています。(注:2)
 有名な評論家であるDan Morgenstern が、こうコメントしてくれました。
 「The Danish Radio Big Band は、疑いなく世界一素晴らしいジャズ・オーケストラのひとつです。恐らく最高だと思います! 私は、彼等を聴くことができて本当に仕合せだ。音楽的な環境や状況の幅広い変化の中で、数年の間にメンバーが入れ替わりながらも、オーケストラの力量はいつも最高の状態で維持されてきました。このバンドの連中(注:3)ときたら、作曲家や編曲家、そして聴衆達が求めている良い音の何たるか(価値)を知っているし、それを演奏することができる。まったくもって素晴らしいアンサンブルだっ!」
 この言葉は、メンバー全員に自信と誇りを与えてくれました。

The Danish Radio Big Band との今後の予定>
 次ぎのプロジェクトは、有名なアメリカのサックス奏者・作編曲家であり、バンド・リーダのボブ・ミンツァーとのデンマーク・ツアーが直ぐに待っています。このツアーの様子を、今度レポートしましょう。
 その後、デビット・サンボーンと共に、ギル・エヴァンスの作品を演奏するヨーロッパ・ツアーに出ます。このツアーは、女性ビッグ・バンド・リーダであるマリヤ・シュナイダーが指揮をすることになっています。そして伝説のサックス奏者、ベニー・ゴルソンと共にデンマーク・ツアーと、CDのレコーディングが予定に入っています。
 お分かりのように、こんなに沢山のエキサイティングな仕事があって、とても忙しくなると思いますが、引き続きThe Danish Radio Big Band のニュースをお伝えしたいと思います。

音楽万歳!

イースン・ウイスガード (デンマーク放送ビック・バンド)
200321

注:1、恐らく立ち見も出て、すし詰め状態だったことを言っていると思います。
注:2、「初めて聴いたにもかかわらず絶賛された。」 の意。
注:3、catsは、男性。chickは、女性!

 
Back In English Home