Ethan Weisgard
World Jazz Monthly

 

The Danish Radio Big Band and Bob Mintzer / Denmark Tour February 2003

ここに、私達とボブ・ミンツァーとのプロジェクトに関する報告をしましょう。
写真は、最後のコンサート後にボブとリズム・セクションが一緒に写したものです。シャンパンでコンサートの成功を祝っている所で、中央がボブ、右端に写っているのが私です
私達は、今日からベニー・ゴルソンとの仕事が始まりました。彼は、素晴らしいサキソフォン奏者で、とても親切な人です。彼と共にアルバムの為の録音もする予定です。と言うのも、彼の今までのレコーディングは、通常のビック・バンド編成で行われたのが皆無であるからです。これまでは、小編成のコンボか大編成のオーケストラでした。ですから、ゴルソンと共に彼の有名な旋律の幾つかを私達のビック・バンドで演奏したいのです!
それでは、ボブ・ミンツァーとのレポートに移りましょう。

デンマーク放送ビック・バンドは、2003年2月にかねて望んでいたことのひとつを実現しました。それは、作・編曲家であり、特に自己のビッグ・バンド同様、イエロー・ジャケッツのバンド・リーダー&サックス奏者としてもよく知られているボブ・ミンツァーと遂に共演できたことです。
1976〜77年、デンマーク放送ビック・バンドは、初めてサッド・ジョーンズと共演しました。当事、ボブは「サッド・ジョーンズ&メル・ルイス・オーケストラ」のメンバーでしたから、我々と歴史を共有しているとも言えるでしょう。
サッド・ジョーンズはこの後、私達と一緒に仕事をする為に何度も訪れ、結局この事がサッド=メル・オーケストラを離れるキッカケとなったのですが、サッド=メル・バンドにとって、この決断は非常に残念なものとなってしまいました。しかしデンマーク放送ビック・バンドにとっては、サッド・ジョーンズと長い期間に渡って一緒に仕事が出来た訳ですから、最高のチャンスを得たといえるでしょう。
現在、サッドが実際にリーダーシップをとっていた時代のメンバーは4人しか残っていません。それでも彼のスピリットは未だに大きく残っています。
私自身は、サッドのアレンジメントの多くにパーカッションが配されていた為、サッドがデンマーク放送ビック・バンドと仕事を共にする全期間に招かれることになりました。そしてこの1976〜77年以後も引き続いてバンドのメンバーとしての素晴らしい特権を得られたのです

所で、ボブ・ミンツァーに話しを戻しますが、私達はボブと5日間のリハーサルを重ねました。
彼は、此れまでに多くのビッグ・バンドを指導してきたので、どのようにすれば効率的に素早く自分の音楽を理解させる事が出来るか、その方法を熟知していますから、とても楽しかったです。
デンマーク放送ビック・バンドは、スタン・ケントン・バンドの編成に基づく大規模なビック・バンドです。即ち、トランペット×5名、トロンボーン×5名、サックス×5名、そして5人のリズム・セクションから成っています。ですから、ボブの譜面が私達のバンドに見合ったものでなく、私達のバンド・プレイヤーの数に合うように書き加えなければなりませんでした。
トロンボーン・セクションのひとり、ピーター・ジェンセンは卓越した素晴らしい編曲者です。そこで彼は、ボブの譜面に新たなパートを書き加えた所、ボブは、その新たな編曲に大変満足し称賛しました。
ラテン・パーカッショニストの私は、非常に多くのラテン・アメリカ音楽スタイルの影響を受けた彼の作品に触れる事が出来て非常に仕合せでした。「San Juan Shuffle」と彼が呼んでいる曲では、私のコンガとティンバルによるロング・ソロをフィーチャーしています。
このツアーは、忙しくも楽しくもしてくれたのは云うまでもありません。

現在のボブのビッグ・バンドにおける作曲のコンセプトは、ソフト・ミュージックを書くことにあります。終始大音量で演奏するビック・バンドは数有りますが、これは聴衆にとってもバンドで演奏するミュージシャンにとっても疲れさせるだけです。
バンドの前に立つバンド・リーダーにとって、ヒアリング・ダメージ(聴いて苦になる)を引き起こす音量レベルを決めるのは、特に難しいに違いありません。そしてまたボブの示すポイントのひとつは、ソフトに演奏する事が特に重要であるということ。このことが、特別なサウンドと風格を創り出すのです。勿論、ダイナミクスを出す為に、作品はバンドに大きな音で演奏することを要求しますが、通常の音量レベルは一般的なピック・バンド・コンサートよりも小さい音量が要求されます。このやり方で演奏することは非常に楽しいことだし、聴衆は確実に善い状態を求められるのです。

私達は今回、デンマークで5ヵ所のコンサートを行いました。デンマークの首都では最もイカシたジャズ・クラブ「コペンハーゲン・ジャズ・ハウス」で、ツアーのファイナルを迎えました。最後の仕事をここで出来たことは非常に素晴らしいことでした。それは、今回のツアーを通じて最高のサウンドを得ることができたからです。
私達の演奏に対して聴衆は、どのコンサートでも反応が良く、ショーが終わった後でも多くの人々が私達の音楽に称賛の言葉を掛けて来るほどでした。そしてデンマーク新聞の音楽批評は、私達とボブのジャズ・クラブでのコンサートについて肯定的でした。
5公演の内、2ヵ所のコンサートの模様がデンマーク放送によって録音されているので、その時のコンサートの素晴らしい雰囲気が捉えられていればと望んでいます。

ボブ・ミンツァーには世界中に本当に多くのファンがいます。デンマークのようなジャズの小国でさえも全てのコンサート・チケットがソールドアウトでした。たとえボブの音楽スタイルが多岐に渡っているとしても、私達のプロジェクト的には殆ど“ジャズ・アレンジ”と言えるものでした。ボブは、その殆どの曲でソリストとしてフィーチャーされ、その演奏はとてつもないものでした。彼のプレイは、本当に静かでソフトなフレーズから、非常に力強い、しかも強力に早いバップフレーズに至るまで、非常にダイナミックなものでした。彼の演奏は、そのテクニックで聴衆を印象づけることに重点をおくのではなく、常に最高の味わいを奏でることなのです。彼は常に、まさに音楽を感じることを演奏しています。これ以上でも、これ以下でもなく・・・。

ボブ・ミンツァーとの仕事は今回が初めてでしたが、これが決して最後ではありません。私達は、可能な限り早い内に、再び今回以上のコンサートを行うことを約束しました。私は日本にも多くのボブ・ファンが居るのを知っています。ですから私達デンマーク放送ビック・バンドは、ボブと一緒に日本ツアーに出られたらなァ〜と望んでいます。これは、私達の新たな将来的な願望のひとつで、その私達の願いが叶うことを祈ってレポートを閉じます。

イースン・ウイスガード(デンマーク放送ビック・バンド)
2003年2月17日

 
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