粟嶋神社境内にあり

「潮みたば いかにせむとか わたつみの 神のとわたる あま処女(おとめ)ども」

 「神の門」とは陸地から沖へ向かって伸びる「砂嘴」(さし)の様な地形を海を支配する神、
海神の手と見立てたのであろう。
 海神を祀る小島の粟嶋へ、干潟(神が手)を選んで漁村の乙女達が渡って行く。しかし
潮が満ちて潟州が水没してしまったら帰りはどうするつもりなのだろうと、
案じてはらはらする気持ち詠んだ都人の歌である。

 沖行く乙女達の姿をとらえ、行幸時の明るく長閑な雰囲気を漂わせ乍らも、
一方で怒れば恐ろしい海神の支配する海への畏怖の念も込めた歌である。