此のすばらしい玉津嶋の景色をいくら見ても、私はいい気持ちにはなれません。
都に帰ってからも、もう一度きっと見たいという恋しい思いにかられるから。

 いつの世にも物事を 逆説的な表現をする人はいるものである。
玉津嶋のすばらしさは十分理解した上で、「都に帰ったら恋しく思い出すから、今はいい気持ちになれないと」逆な物の言い方をしている。
 大和の国から数日かけてやっとたどり着いた紀伊の国の輝くばかりに美しい海、このすばらしい景観をもう二度と見られないのではないかと思う気持ちと、故郷を思う懐かしい気持ちが相互に重なり合い、都に戻ってからの心境をこの様な形で歌にしたのであろう。