不連続な読書日記(1995.7〜1995.12)


★1995.7

 

☆中沢新一『哲学の東北』(青土社 `95)

 高橋世織との対話は雑誌で読んだことがある。文庫あとがきが素晴らしい。

 

☆森谷正規『よみがえる日本の技術力』(祥伝社ノンブック '95)

 速読して結構刺激を受けてすぐに忘れた。

 

☆山田詠美『ぼくは勉強ができない』(新潮社)

 実に、実に素晴らしい。

 

☆渡辺保史『はじめてナットク! マルチメディア』(講談社ブルーバックス '95)

☆諏訪邦夫『パソコンをどう使うか』(中公新書 '95)

 結構、刺激的だった。

 

☆ロバート・A・ハインライン『夏への扉』(福島正実・ハヤカワ文庫)

 いつか読みたいと思い続けていた。ようやく読んだ。古典的だが、感動的。

 

★1995.8

 

☆吉本隆明・梅原猛・中沢新一『日本人は思想したか』(新潮社 '95)

 吉本の発言が難解。

 

☆ケン・フォレット『大聖堂』上中下(矢野浩三郎・新潮文庫)

 盆休みを潰して読みふけった。面白いが疲れた。

 

☆村上龍・山岸隆『「超能力」から「能力」へ』(講談社 '95)

 この時期に出版されたことに何か意味があるのだろうか。

 

★1995.9

 

☆NHK取材班『ボランティアが開く共生への扉』(日本放送出版協会 '95)

 かなりしっかりした理論的な裏打ちが感じられた。

 

☆クライブ・カッスラー『インカの黄金を追え』上下(中山善之・新潮文庫)

 単純明快で波乱万丈で息もつけない読物に接したかった。

 

☆志賀浩二『無限のなかの数学』(岩波新書 '95)

 無限級数は実に面白い。

 

☆柄谷行人『探求U』(講談社 '89)

 最後まで読み通すことがこれまで出来なかった。途中から自分の頭で考え始めるからだが、今回は受身のままで最後まで読み終えてしまった。

 

☆高木貞治『近世数学史談』(岩波文庫)

 文体が実にいい。啓蒙書風でなく本格的に数学を扱っているのもいい。ほとんど理解できなかったが、香りがいい。

 

☆コリン・デクスター『キドリントンから消えた娘』(大庭忠男・ハヤカワ文庫)

 3冊目にしてようやく「アクロバティック推理」の味が分かってきた。うまくはまれそう。

 

★1995.10

 

☆コリン・デクスター『ウッドストック行最終バス』(大庭忠男・ハヤカワ文庫)

 本格推理小説としては、これまで読んだ中で一番結末がすっきりしている。

 

☆ディヴィッド・マレル『偽装者』上(山本光伸・早川書房 '95)

 映画ランボーの原作者による「ノンストップ・サスペンス」のはずなのだが、下巻を一気にという勢いが湧いてこない。

 

☆埴谷雄高「死霊」九章(『群像』'95.11所収)

 初めて読んだ。文体が「新青年」風で新鮮。

 

☆池田晶子『オン! 埴谷雄高との形而上対話』(講談社 '95)

 池田晶子の語る<存在>論にはリアリティがある。

 

☆和田純夫『量子力学が語る世界像』(講談社ブルーバックス '94)

 量子力学の多世界解釈の紹介本。存在論をまず物質から考えてみようと思い付いて読んだ。しばらく経ってまた忘れた。いずれ再読すべし。

 

☆清水一向行『小説M資金 懲りねえ奴』(徳間書房 '95)

 休日の暇潰し本。

 

★1995.11

 

☆林望『ホルムヘッドの謎』(文春文庫)

 気持ちよくて癖になりそうな文体。

 

☆加藤和也『解決! フェルマーの最終定理』(日本評論社 '95)

 「数学セミナー」掲載時にはかかさず読んでいた。まとめて読むとなおスリリングでわくわくさせられる。

 

☆大沢在昌『炎蛹 新宿鮫X』(光文社カッパ・ノベルス '95)

 新宿鮫は青山晶でもっているのではないか。その意味では第1作や前作を凌ぐのはよほど難しい。

 

★1995.12

 

☆池波正太郎『鬼平犯科帳15 特別長編 雲竜剣』(文春文庫)

 鬼平は一度雑誌で読んだことがあるだけ。病みつきになりたいと思い、試しに図書館で借りて読んだ。やはり短編をまとめて読むべきだったか。

 

☆村井純『インターネット』(岩波新書 '95)

 浮わついた雑誌記事のたぐいばかり多く接してきた後だけに、この抑制された文章はとても気持ちがいい。

 

☆小林信彦『ムーン・リヴァーの向こう側』(新潮社 '95)

 東京小説と恋愛小説の説妙な調合。どこか村上春樹の「国境の南、太陽の西」を思わせる。

 

☆アスキー書籍編集部『漢字Talk7.5便利ブック』(株式会社アスキー '95)

 7.5が欲しい。

 

☆ヨーシタイン・ゴルデル『ソフィーの世界』(池田香代子・NHK出版 '95)

 初期ギリシャ思想家やキリスト、中世のあたりは「哲学」入門書として新鮮。中盤から俄然面白くなった。虚構の中の虚構やミステリー仕立ては、ミヒャエル・エンデの焼き直し程度にしか思えなかったが、それでは一体何が面白かったのだろう。(後日、蓮実重彦が朝日新聞に寄せた評言に接して読後感が一変した。というより、潜在的に感じていた不満、うさんくささをうまく表現した文章に目を覚まされたということか。)

 

☆ローザ・ルクセンブルグ『獄中からの手紙』(秋元寿恵夫・岩波文庫)

 実に実に豊かな感性、良質の文章。

 

☆北村薫『覆面作家の愛の歌』(角川書店 '95)

 大沢在昌(ただし新宿鮫しか読まないが)と北村薫は期待を裏切らない。これほど対象的な作風もない。

 

☆大岡信『光の受胎』(小学館 '95)

 文章を読む愉楽。古典に目覚めつつある。ドナルド・キーンの日本文学史を是非読みたい。

 

☆保坂和志『この人の閾(いき)』(新潮者 '95)

 表題作ほか数編を読む。語られない出来事、時間、沈黙が手触りのない実在感を伴う奇妙な時空間。

 

☆夏目漱石『坊っちゃん』(新潮文庫)

 背広の内ポケットに入れてかさばらない文庫本ということで「緊急避難的に」忍ばせていた。何気なく読み始めたらもう止められない。何度も読んだ気になっていたが、新鮮。