不連続な読書日記(1995.1〜1995.6)


★1995.1

 

☆トム・クランシー『いま、そこにある危機』上下(井坂清・文春文庫)

 昨年暮からハリソン・フォード主演の映画が上映中で原作も売れているらしい。CIA情報分析官ジャック・ライアンとは10年前の「レッド・オクトーバーを追え」以来久々のつきあい。

 

☆『数学セミナー 1995.2』(日本評論社)

 ラマヌジャンの特集が面白かった。

 

☆司馬遼太郎『坂の上の雲 三』(文春文庫)

 震災後、仕事を終えて歩き疲れてぼろくずのようになって乗り込んだ電車の中で辛うじて接することができた活字。

 

★1995.2

 

☆『数学セミナー 1995.3』(日本評論社)

 特集の「純粋数学vs応用数学」が試験管の中の繰り言めいていた。モニターの仕事はこれでおしまい。

 

☆司馬遼太郎『坂の上の雲 四』(文春文庫)

 日露戦争と震災後の救援、復興の仕事がだぶっている。今月はほとんど活字が読めなかった。

 

★1995.3

 

☆司馬遼太郎『坂の上の雲 五』(文春文庫)

☆堺屋太一『組織の盛衰』(PHP研究所 '93)

 日本的組織の、というより近代的官僚組織一般の病理を余すところなく描いた旅順要塞の攻防戦を読んだ後で、たまたま人から借りてそのままにしていた組織論の本を読んだ。

 

☆山口椿『entre nous -ここだけの話ですが -』(徳間オリオン文庫 '94)

☆牧村僚『熟女と家庭教師』(フランス書院文庫 )

☆小菅薫『放課後の女教師・少年狩り』(フランス書院文庫 )

 山口椿の本は実に刺激的。これは二重の意味で刺激的な短編集で、一つは官能小説としての斬新さ(つい隠れ愛読書のフランス書院文庫を漁ってしまった)、いま一つは亀井俊介氏が「谷崎、三島を越える性的表現」と絶賛したその文体で、去年読んだフィリップス・ソレルスの「黄金の百合」の読後感が蘇ってきた。文学的表現に飢えている。

 

☆永井均『ウィトゲンシュタイン入門』(ちくま新書 '95)

 筆者の思いとは違ってこの書物は入門書としては失敗しているだろう。「語りえぬ」ものとしての「私」の不思議さよりも、むしろ「他者の現存」の方にいまのぼくは問題性を、つまり魅力を感じている。

 

☆ジェームズ・レッドフィールド『聖なる予言』(山川紘矢・山川亜希子 '93:'94)

 前半は退屈でニューエイジ系の書物のもつ独特の底の浅さが鼻についたが、第六の知恵から面白くなってきて、第八の知恵あたりでとうとうはまってしまった。

 

☆朝日ワンテーママガジン44『あぶない数学』(朝日新聞社 '95)

 ウィトゲンシュタインとハイデガーに依拠した数学の可能性を示唆する小島寛之の文章が刺激的だった。

 

☆AERA MooK 6『哲学がわかる。』(朝日新聞社 '95)

 哲学者25人の「自画像」と題されたエッセイで、現在、もしくはこれから手がけようとしている研究テーマを思い思いに綴った部分が面白かった。池田晶子と永井均の文章が光っていた。

 

☆『月刊ピーシーファン '95.4』(毎日コミュニケーションズ)

☆『ニューズウィーク日本版 '95.3.8』(TBSブリタニカ)

ニューズウィークの特集は「デジタル革命の明日を占う」。

 

☆山口椿『湘南少女歌劇団』(徳間庫 '95)

 日刊スポーツに連載されて好評を博した作品だそうだ。「entre nous」の透明感はないが、破天荒な物語的逸脱がいっそ小気味いい。

 

☆司馬遼太郎『坂の上の雲 六』(文春文庫)

 奉天会戦へ、日本海会戦へと緊迫する叙述の合間に、随想風の文章が、そして文明論が展開される司馬文体の妙味。

 

☆『特選街 1995.2』(マキノ出版・特選街出版)

Entertainment Mac Magazin Vol.6宝島社

☆『MacWalker ゲームウォーカー3月号増刊』(角川書店)

☆『CD-ROMスコラ Vol.5』(スコラ)

 マッキントッシュを買った(Performa575)。CD-ROMを見る、パソコン通信をやる、音楽を作る。

 

★1995.4

 

☆司馬遼太郎『坂の上の雲 七』(文春文庫)

 奉天会戦から日本海海戦へ。

 

☆ル・グイン『影との戦い ゲド戦記』(清水真砂子・岩波書店)

 東京への主張の帰りの新幹線の中で4時間かけて読んだ。

 

☆J.R.ヒックス『価値と資本 上』(安井琢磨他・岩波文庫)

 経済学の語彙が、というより論理がまだ身につかない。通勤電車の中で朝、一月以上かけて眺めた。

 

☆司馬遼太郎『坂の上の雲 八』(文春文庫)

 読後の静かな感動が快い。

 

☆吉村昭『関東大震災』(文春文庫)

 ウィルスと地震が文明を破壊し、文明を生む。

 

☆『PLAYBOY 日本版 1995.5』(集英社)

☆『ワイアード 1995.5』(同朋舎出版)

PLAYBOY は随分といい雑誌になっていた。ワイアードはすごい。

 

 

★1995.5

 

☆吉田茂樹他『インターネット漂流記』(オーム社 '95)

 連休中に初めてインターネット接続に成功した。少し興奮した。

 

☆『ワイアード 1995.6』(同朋舎出版)

 パソコン通信とCD-ROM漬け。ワイアードは本当にすごい雑誌だ。

 

☆中尾浩他『マッキントッシュによる人文系論文作法』(夏目書房 '95)

☆志賀隆生『マッキントッシュがヴィークルになる日』(ビー・エヌ・エヌ '90)

☆はやしとしお『Macintosh ユーティリティの達人』(JICC出版局 '92)

 「論文作法」はマッキントッシュ入門を兼ねた「知の技法」パソコン版。結構面白い。

 

☆山口椿『リラの門』(太田出版 '93)

 素晴らしい。が、危うい。

 

☆国枝史郎『神州纐纈城』(講談社大衆文学館 '95)

 実に刺激的な文体。

 

☆J.R.ヒックス『価値と資本 下』(安井琢磨他・岩波文庫)

 とにかく読み終えた。いつか「数学付録」を読もう。

 

☆吉本隆明『わが「転向」』(文藝春秋 '95)

 この人の思想の分かりにくさ、というより文体の分かりにくさは語り言葉になっても変わらない。それでいてトゲがあり刺激的なのだから、これこそが思想を語る言葉なのだろう。

 

★1995.6

 

☆瀬戸賢一『空間のレトリック』(海鳴社)

 2年前に出版元に注文してようやく手に入った。『レトリックの宇宙』ほどの刺激はなく、ややスコラ的。

 

☆小島寛之『数学オリンピック問題にみる現代数学』(講談社ブルーバックス '95)

 繰り返し読めばきっと現代数学通になれる。良書。

 

☆小室直樹『日本経済破局の論理』(光文社カッパビジネス '92)

 ヒックスを読んだのもこの人がどこかで必読書と書いていたからで、経済学、というより経済学的な思考方法を身につけたいとここ数年の間折りにふれ思い続けてきた。これが法律学だったら、現実の問題を法律学的な思考枠組みの中で扱えるようフィクショナライズし、直観的な正義の感覚によって到達した結論の正当性を論証し、当事者を含む他者を説得するために条文や理論や判例を素材として駆使する技法のこと、または感覚(リーガルマインド)のことだと、たどたどしいながらも自分なりの言葉で要約することができるのだが、経済学はいま一つよく解らなかった。ところが、さすが小室直樹、経済学あるいは経済学的思考の本質は、要するに経済的「循環」の構造を解明するため現実の問題を簡明なモデルに置き換えることにあると、単刀直入に解らせてくれた。

 

☆グレッグ・ベア『ブラッド・ミュージック』(小川隆・ハヤカワ文庫)

 何年ぶりだろう、読み終えるのてしまうのを恐れたのは。

 

☆荒木博之『日本語が見えると英語も見える』(中公新書 '94)

 自発・受身・可能・尊敬の先後関係をめぐる議論が面白い。

 

☆ルーディ・ラッカー『ホワイト・ライト』(黒丸尚・ハヤカワ文庫)

 数学小説。結構いける。

 

☆辻井喬・鶴岡真弓『ケルトの風に吹かれて』(北沢図書出版 '94)

 アイルランドヘ行きたいと思う。

 

☆一条真也『リゾートの思想』(河出書房新社 '91)

 再読。

 

☆コンノケンイチ『ホーキング宇宙論の大ウソ』(徳間書店 '91)

 トンデモ本