不連続な読書日記(2018.01-03

 


【購入】

●樋口桂子『日本人とリズム感──「拍」をめぐる日本文化論』(青土社:2017.12.05)【¥2200】[01/07]《ジュンク堂 書店明石店》

 今年の初買いは『言語と呪術』(井筒俊彦英文著作翻訳コレクション、安藤礼二訳)と決めていたが、なかなか刊行されないので、いま一番興味をそそられる テーマの書物を選んだ。
 中沢新一『アースダイバー 東京の聖地』や山本貴光『文学問題(F+f)+』や『別役実の混沌・コント』など、他にも入手予定の本がいくつかあったが、勘を頼りに樋口本を買い求め た。まえがきとあとがきを読み、勘は間違っていないと確信した。
 まえがきから。「言語は言語を使う人の感性と思考と所作・仕草をも変えていく。言語は独自のリズムをもっているように見える。」
 あとがきから。「リズムは常にかたちになることを希求し、外へと出たがっている。」「リズム感はわたしたちの身体の深層にこびりつき、生理現象となって おり、意識しなければ見えてこない」。

●森山徹『モノに心はあるのか──動物行動学から考える「世界の仕組み」』(新潮選書:2017.12.20)【¥1200】[01/14]《ジュンク堂 書店明石店》

 『言語と呪術』が刊行されないまま、買いたい本がどんどん増えていく。中沢本、山本本、別役本に加えて、ヘルダー『言語起源論』、川端康成『反橋・しぐ れ・たまゆら』、内田樹『ローカリズム宣言』、伊集院静『文字に美はありや。』、それから本書。これらのうちで、いますぐ読みたい本を選んだ。

 新潮選書は講談社選書メチエに次いで「あたり」が多い。
 ここ数年では、松木武彦『進化考古学の大冒険』、傳田光洋『皮膚感覚と人間のこころ』、芳川泰久『謎とき『失われた時を求めて』』、互盛央『日本国民で あるために──民主主義を考える四つの問い』などが心に残る。
(片山杜秀『未完のファシズム──「持たざる国」日本の運命』は図書館で借りて流し読みをした。自腹を切ってきちんと読んでおきたい。松本武彦『美の考古 学──古代人は何に魅せられてきたか』は入手して読むべき時の到来を待っている。)

 上記以外にも昨年来気になっている本がいくつかあるので、書き出しておく。
 新書で、鶴岡真弓『ケルト 再生の思想』、大隈典子『脳の誕生』、渡辺正峰『脳の意識、機械の意識』。
 文庫本で、ヴァレリー『精神の政治学』、山崎正和『世界文明史の試み』、川端康成『反橋・しぐれ・たまゆら』。
 エンタメ系では、『ミレニアム5』『特捜部Q 自撮りする女たち』『音もなく少女は』『水底の女』『スパイたちの遺産』など。
 その他、ヘイドン・ホワイト『実用的な過去』、ハーバート・フーバー/ジョージ・H・ ナッシュ『裏切られた自由』、ロラン・バルト『サド、フーリエ、ロヨラ』、神崎繁『内乱の政治哲学』、川田順造『コトバ・言葉・ことば』、石川淳「江戸人 の発想法について」等々、気になる本がたくさんある。
 これらは図書館で探すつもり。(石川淳の作品は自宅の書庫に眠っていた。)

●中沢新一『アースダイバー 東京の聖地』(講談社:2017.12.25)【¥1500】[01/19]《梅田蔦屋書店》
●川端康成『反橋・しぐれ・たまゆら』(講談社文芸文庫:1992.09.10/2016.03.01第10刷)【¥951】[01/19]《ジュンク堂 書店明石店》
●ジークムント・フロイト『メタサイコロジー論』(十川幸司訳,講談社学術文庫:2018.01.11)【¥880】[01/19]《ジュンク堂書店明石 店》

 今年は一冊読み終えたら新しい本を一冊買う方針で臨むべく、昨年暮れから購入本をセレクトし禁欲していたところ、ふとした気の緩みから大量買いに走りそ うになった。中沢本と川端康成は元々予定していたし、読む時と場所は確保できていたが、フロイトは川端本を手にレジに移動する途中で目にとまり胸騒ぎを感 じたので勢いで購入した。

●ダヴィド・ラーゲルクランツ『ミレニアム5──復讐の炎を吐く女』上下(ヘレンハルメ美穂・久山葉子訳,早川書房[電子書籍版]: 2017.12.20)【¥1458×2】[01/26]《楽天kobo》
●ユッシ エーズラ・オールスン『特捜部Q──自撮りする女たち』(吉田奈保子訳,ハヤカワ・ミステリ[電子書籍版]:2018.01.15)【¥2041】 [01/26]《楽天kobo》

 堪え切れずに二冊同時購入。一気読みの誘惑に抗いつつ、春先までじっくり楽しむつもり。どちらを先にするか。

●山本貴光『文学問題(F+f)+』(幻戯書房:2017.12.08)【¥3600】[02/04]《ジュンク堂書店明石店》

 今頃入手したのには訳があって、今朝(2月4日)の朝日新聞・読書欄で円城塔の書評を目にし、いよいよ機が熟したと思い定めた。問題は、いつ読むか。

●斎藤慶典『「東洋」哲学の根本問題──あるいは井筒俊彦』(講談社選書メチエ:2018.02.09)【¥1800】[02/11]《ジュンク堂書店明 石店》

 書店で井筒俊彦の本を探すときいつも「なぜ宗教、イスラムのコーナーに置かれているのか」と疑問に思い、「あきらかにミステークだ」と思う。「井筒の言 う「東洋」哲学とは、…「哲学そのもの」にほかならない」という序章の文章に最大級の共感を覚える。

●九鬼周造『「いき」の構造 他二篇』(岩波文庫:1979.09.17/2016.03.04第89刷)【¥680】[02/24]《ジュンク堂書店明石店》
●『九鬼周造随筆集』(菅野昭正編,岩波文庫:1991.09.17/2016.06.16第9刷)【¥660】[02/24]《ジュンク堂書店明石店》
●『現代思想』2017年1月臨時増刊号[総特集|九鬼周造──偶然・生き・時間](青土社:2016.12.25)【¥1800】[02/24]《ジュ ンク堂書店明石店》
●坂部恵・藤田正勝・鷲田清一編『九鬼周造の世界』(ミネルヴァ書房:2002.10.15)【古¥2000】[03/01]《Amazon(books キャプチュード)》
●『九鬼周造全集 第十一巻』(岩波書店:1980.12.19/2012.04.10第3刷)【¥4800】[03/09]《楽天ブックス》

 九鬼周造を「究めたい」と思って。いま一番関心があるのは「文藝論」。とくに押韻論。

●前田英樹『批評の魂』(新潮社:2018.03.01)【¥2400】[03/05]《梅田蔦谷書店》

 『小林秀雄 美しい花』の次に読むつもり。

●『一個人』2018年4月号[特集|名作を生んだ!文士と画家が愛した宿へ](KKベストセラーズ:2018.03.09)【¥685】[03/09] 《喜久屋書店明石駅ビル店》

 文人墨客という生き方に興味が向かっている。

●『漱石文芸論集』(磯田光一編,岩波文庫:1986.05.16/2014.08.18第10刷)【¥760】[03/11]《ジュンク堂書店明石店》

 九鬼周造の文芸論を漱石の文学論と比較しながら読みたいと思って。

●渡仲幸利『観の目──ベルクソン『物質と記憶』をめぐるエッセイ』(岩波書店:2017.12.13)【¥2000】[03/18]《ジュンク堂書店明 石店》

 この著者の『新しいデカルト』を以前読んで、とても面白かった。

●佐藤航陽『お金2.0──新しい経済のルールと生き方』(幻冬舎[電子書籍]:2017.11.29)【¥1000】[03/21]《honto》

 普段読まない本を時々は読む。科学本とか歴史本とか時事本とか。経済本はとくに意識しないと読まない。

●小林秀雄『モオツァルト・無常という事 』(新潮文庫[電子書籍版]:2013.05.03)【¥626】[03/21]《楽天kobo》

 小林秀雄の電子書籍はかなり買い置き分がたまってきた。「常識について」とか「歴史について」とか、折にふれて読んでいる。
 昨年末から読み進めてきた若松英輔著『小林秀雄 美しい花』がいよいよ「当麻」を取り上げた佳境(第二十一章「背編みという詩魂」)に入っている。

●山崎正和『リズムの哲学ノート』(中央公論新社:2018.03.25)【¥2200】[03/25]《ジュンク堂書店明石店》

 この期は樋口桂子著『日本人とリズム感』に始まり、山崎正和著『リズムの哲学ノート』で終わる。


【読了】

●カズオ・イシグロ『夜想曲集──音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』(土屋政雄訳,ハヤカワepi文庫:2011.02.15) [01/19]

 昨年来、一篇あたり二、三日かけて、頭と体と心と魂に染み込ませ熟成させるようにして読み込んだ。幸福な時間。

●田中優子・松岡正剛『日本問答』(岩波新書:2017.11.21)[01/20]

 物知り顔と訳知りの語り口に時折り(ほんの少し)鼻白み、挫折しそうになりながら。

●森山徹『モノに心はあるのか──動物行動学から考える「世界の仕組み」』(新潮選書:2017.12.20)[01/22]

 「モノの心」(井筒俊彦流に言えば「物のココロ」)をめぐる不思議な議論。隠れた活動体、潜在決定機構という心の定義。

●正岡子規『俳諧大要』(岩波文庫:1955.05.05/2016.09.16第14刷)[01/27]

 毎晩少量ずつ声に出し口に含み噛むように玩味してきたがそれも今日で終わり。つづけて折口信夫の『日本文学の発生 序説』に取り組むつもり。(就眠前の音読は『夜明け前』から始まった。)

●ジークムント・フロイト『メタサイコロジー論』(十川幸司訳,講談社学術文庫:2018.01.11)[02/11]

 何事か天才的な思考が立ち上がる現場に立ち会えた読後感。
 訳者解説も力作。「精神分析とは、体系を作ることでも、既成の理論を同じように反復することでもない。それは常に新しく再開される運動なのである。」

●樋口桂子『日本人とリズム感──「拍」をめぐる日本文化論』(青土社:2017.12.05)[02/16]

 面白い本を読んだ。
 日本の文化は「ソ」の文化である。「「ソ」は境界を決めず、凝視されることを拒みながらそこにいる。「ソ」は人を近づけず、「ア」からも「コ」よりもさ らに遠く、その緩衝作用の中に日本人の感性を浮かび上がらせる。この「ソ」が日本的なリズムをつくり、日本的な感性をつくり出している。」(272- 273頁)
 この本書の末尾に置かれた謎めいた「結論」の意味合いを心ゆくまで玩味できたとき、西洋と日本にあいわたって、絵画、舞踏、音楽、演劇、文学、等々のあ らゆるジャンルに通底する「リズム」をめぐる著者の議論に圧倒される。
 切り出して吟味もしくは活用すべき事柄は数多いが、いま一つだけ「終章」から引く。
「「ソ」は私とあなたの間にあって、どちらにも近く、またどちらからも離れた位置取りをする。日本絵画の中景描写にはそれが表れされて[ママ]いた。小津 安二郎の映像世界も、「ソ」の具現化であったと言える。」(278頁)

●柳田国男『都市と農村』(岩波文庫:2017.09.15)[02/20]

 職場に常備して少量ずつ数か月かけて読了。

●ダヴィド・ラーゲルクランツ『ミレニアム5──復讐の炎を吐く女』上下(ヘレンハルメ美穂・久山葉子訳,早川書房[電子書籍版]: 2017.12.20)[02/24]

 前作と比較してやや不満が残る。話の流れがブツ切れで緊張が途切れる。サランドルの出番が少ない。二つの物語の流れがうまくつながっていかない。

●藤田正勝『九鬼周造──理知と情熱のはざまに立つ〈ことば〉の哲学』(講談社選書メチエ:2016.07.10)[03/04]

 九鬼周造への関心がますます高まる。

●中井正一『美学入門』(朝日選書:1975.02.20)[03/09]

「常にこころを虚ろにし、柔らかく流動してやまざるもの、変化し、清新なるもの、あくまで滞ることを嫌い、重きをのがれ、軽く軽く、浅川を流れる水のごと く、あくまで自由に、自在にあきらかなるものを求める日本のこころ」(「日本の美」209-210頁)。

●川端康成『反橋・しぐれ・たまゆら』(講談社文芸文庫:1992.09.10/2016.03.01第10刷)[03/13]

 日に十頁ほど、身に染み入るのを確認しながら、惜しみながら読み進めた。「文藝」という語がこれほど似付かわしい文章はもう長く読まなかった。

●若松英輔『小林秀雄 美しい花』(文藝春秋:2017.12.10)[03/21]

 ほぼ3か月かけて熟読した。斬新かつ刺激的な評伝。