不連続な読書日記(2014.04-08

 


【購入】

●『和楽』2014年5月号[特集|「書」こそ最高のアートだ!〕(小学館:2014.04.01)【¥1204】

 この雑誌を買うのはこれで2度目。前回は2010年12月号で、特集が「書、大人のたしなみ案内」。次号予告に「歌舞伎、能、文楽の本当の面白さ、教え ます」「蒔絵、七宝、螺鈿 スゴイゾ! ニッポンの超絶技巧」とあって、たぶんまた発売日に買うことになる。
 特別付録が井上有一の書「感嘆符」のポスター(雑誌の表紙にも使われている)。東京都美術館で19日から始まるバルテュス展にちなんだ小特集や倉敷の小 特集、ブックインブックの美術館カレンダーがうれしい。(04/01)


●『なごみ』2014年4月号[特集|日本的ということ 感じる、かなの書](淡交社:2014.04.01)【¥800】

 安田登さんのCD付本『日本語を生かすメリハリ読み!──漱石で学ぶ「和」の朗読法』を借りるため、神戸の図書館に出かけ際、たち寄った書店でみつけて 買い置きした。(04/05)


●與那覇潤『日本人はなぜ存在するか』(集英社インターナショナル:2013.10.30)【¥1000】

 毎日新聞・今週の本棚の鼎談[https://o.twimg.com/2/proxy.jpg?t= HBgtaHR0cDovL3N0YXRpYy5vdy5seS9waG90b3Mvb3JpZ2luYWwvNTRIS0UuanBnFJAmFO4dABYAEgA& s=hI6UO2zqmKjdxjvr04W7FpeCMZBukwyx5zH3GP8ZA0Y]でとりあげられていた。(04/07)


●連城三紀彦『私という名の変奏曲』(文春文庫:2014.04.10/1984)【¥700】

 久しぶりに一泊で遠出をすることになった。車中の友の選択に数日迷った。北欧ミステリーか翻訳もののハードボイルドと決めていたのに、選びつかれてふと 目にとまった「超絶技巧」ミステリーに落ち着く。高校生の頃に読んだ『シンデレラの罠』を想起した。(04/11)


●村上春樹『女のいない男たち』(文藝春秋:2014.04.20)【¥1574】

 村上春樹の短編を、時おり無性に読みたくなる。その気持ちが高じていた。(04/18)


●水原紫苑『桜は本当に美しいのか──欲望が生んだ文化装置』(平凡社新書:2014.03.14)【¥860】

 毎日新聞「今週の本棚」での書評(評者:小島ゆかり)を読んで気になっていた。高橋睦郎さんとの対談「人は なぜ歌うのか」がユーチューブで観られる。(04/29)


●『和楽』2014年6月号[特集|能、文楽、歌舞伎 最速入門〕(小学館:2014.04.01)【¥1204】

 連休後半の友として、昭和の爆笑喜劇『社長漫遊記』のDVDと一緒に買った。(05/02)


●エース・アトキンズ『帰郷』(小林浩明訳,ハヤカワ文庫:2013.08.15)【¥1000】

 体内に(脳内に?)巣食う暴力衝動にかたちを与えたくて、衝動的に読みたくなった。(05/16)


●赤坂真理『愛と暴力の戦後とその後』(講談社現代新書:2014.0520)【¥840】

 以前読んだ『東京プリズン』の印象がいまだに像を結んでいなくて、気になっていた。(05/17)


●坂爪真吾『男子の貞操──僕らの性は、僕らが語る』(ちくま新書:2014.04.10)【¥800】
●菊間ひろみ『英語を学ぶのは40歳からがいい──3つの習慣で力がつく驚異の勉強法』(幻冬舎新書:2011.07.30)【¥760】

 いま気になっている本、富岡幸一郎著『川端康成』と互盛央著『言語起源論の系譜』と室井光弘著『柳田国男の話──柳田国男の詩学への扉』のうちどれかを 購入して、休日の昼下がりの友にしようと思い、電車で二駅移動してやや大型の書店にでかけたが完敗。
 せっかく来たのだから、前から手元においておきたかった、かな書道の本と英語の学習本を物色していて菊間本に心ひかれ、ついでに気になった坂爪本とあわ せわざで買って帰った。
 坂爪という珍しい姓に心当たりがあったので、家に帰ってから調べてみると、以前『セックス・ヘルパーの尋常ならざる情熱』という本を読んでいた。 (05/25)


●齋藤希史『漢文脈と近代日本』(角川ソフィア文庫:2014.05.25/2007)【¥840】

 NHKの語学テキスト(英語とハングル)を買う予定で書店に足を運び、決断がつかないうちふと目にとまり心惹かれた。(05/29)

 後日「入門ビジネス英語」6月号を購入。8月から「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」と「攻略!英語リスニング」も追加。「NHKゴガク」 [https://cgi2.nhk.or.jp/gogaku/index.cgi]の「マイ語学」にも登録した。
 韓国語はユーチューブの「やさしい〜韓国語」[https://www.youtube.com/watch?v=GHBZs_dPIeM& list=PLAR6PIbgTNh333_flUM97M7wKeWkdnh7s&index=2]に決めた。


●富岡幸一郎『川端康成 魔界の文学』(岩波現代全書:2014.05.16)【¥2200】
●互盛央『言語起源論の系譜』(講談社:2014.05.22)【¥2300】
●内田樹『日本の身体』(新潮社:2014.05.30)【¥1500】

 富岡本を買うために休日、三宮の書店に出かけ、つい気になった(なっていた)本をまとめて買った。(06/01)


●長谷川三千子『バベルの謎──ヤハウィストの冒険』(中公文庫[中公eブックス・Kindle版]:2014.01.31)【amazon¥600】

 『言語起源論の系譜』が面白い。「バベルの塔問題」と「ホッブス問題」の関心が高まった。(06/09)


●池井戸潤『下町ロケット』(小学館文庫:2013.12.26/2010)【¥720】

 この4月からNHK大河ドラマなど5本のTVドラマを毎週観ている。習慣になるとやめられない。そのうち2本が池井戸潤の原作。小説も読みたくなった。 (06/19)


●ウンベルト・エーコ『完全言語の探究』(上村忠男・廣石正和訳,平凡社ライブラリー:2011.12.09)【¥1900】

 バベルの塔問題に関連して。常備本として。(06/22)


●安藤礼二・若松英輔責任編集『井筒俊彦 言語の根源と哲学の発生』(KAWADE道の手帖,河出書房新社:2014.06.30)【¥1600】

 巻頭の対談「安藤礼二×若松英輔 コトバの形而上学」が面白い。
 『意識と本質』は詩的言語の起源を探究した著作であり、和歌論であり、空海を正面から論じた書物でもあると安藤氏が語り、九鬼周造は井筒俊彦にとても近 く、むしろ先取っていると若松氏が語る。面白い。
 『神秘哲学』は西田哲学と『悲劇の誕生』と『道徳と宗教の二源泉』への挑戦が意図されていた、だから『意識と本質』とダイレクトにつながってく(安 藤)。未刊行資料中のメモに「日本の哲学は古典文学の中にある」と書かれている(若松)。面白い。(06/22)


●トム・クランシー/マーク・グリーニー『米中開戦1』(田村源二訳,新潮文庫:2014.01.01)【¥630】
●トム・クランシー/マーク・グリーニー『米中開戦2』(田村源二訳,新潮文庫:2014.01.01)【¥630】
●トム・クランシー/マーク・グリーニー『米中開戦3』(田村源二訳,新潮文庫:2014.02.01)【¥630】
●トム・クランシー/マーク・グリーニー『米中開戦4』(田村源二訳,新潮文庫:2014.02.01)【¥630】

 時を忘れる読書がしたくなった。(06/24〜07/06)


●小林敏男『事業創成──イノベーション戦略の彼岸』(有斐閣:2014.04.20)【楽天ブックス¥2100】

 著者の(たぶん)二冊目の単著。読み終えたら感想をメールして、旧交を温めよう。(07/08)


●水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書:2014.03.19)【¥740】

 数年前、萱野稔人との共著『超マクロ展望 世界経済の真実』を読んだ。スケールの大きな話だった。(07/16)


●中島義道『生き生きした過去──大森荘蔵の時間論、その批判的解読』(河出書房新社:2014.04.30)【¥2500】

 大森哲学を和歌論に「応用」する。そんなことをずっと考えてきた。いよいよその作業に取り組む時がきたのかもしれない。(07/19)


●ヴァルター・ベンヤミン『ベンヤミン・コレクション7 〈私〉記から超〈私〉記へ』(浅井健二郎編訳,久保哲司他訳,ちくま学芸文庫: 2014.7.10)【¥1700】

 最近またベンヤミン菌が繁殖し始めている。そのうち臨界点を超える。(07/19)


●アンリ・ベルクソン『物質と記憶──身体と精神の関係についての試論』(竹内信夫訳,新訳ベルクソン全集2,白水社:2011.07.25/電子書籍発 行日:2013.12.01)【楽天電子ブック¥2400】

 白水社全集(田島節夫)、ちくま学芸文庫(合田正人・松本力)に続いてこれで三冊目。村上春樹の作品(『海辺のカフカ』?)に『物質と記憶』がでてくる らしい。(07/20)


●グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ『シャンタラム(上)』(田口俊樹訳,新潮文庫:2011.11.01)【¥990】

 『米中開戦』の一気読みの余韻をかって、なにか良質かつ濃密なエンタテインメントを読みたいと物色していて発見。養老孟司さんの解説が決め手になった。 (07/21)


●『西脇順三郎詩集』(那珂太郎編,岩波文庫:1991.11.18)【amazon¥1506古】
●井筒豊子『白磁盒子』(中公文庫:1993.03.10)【amazon¥1600古】

 前々から入手したいと思っていた二冊。真夏日の午後、執務室でPCに向かい半醒半睡の状態でいるときに思いたち速攻でネット注文。(07/25)


●池井戸潤『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社:2014.07.28)【¥1500】

 ずっと前から読みたかった。(08/01)


●『世界』2014年9月[特集|歴史認識と東アジア外交]【¥800】

 「消滅する市町村」論批判のニ論文(小田切徳美、坂本誠)を読みたくて。『世界』を買うのも読むのも何十年かぶり。(08/09)


●冨山和彦『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP新書:(2014.06.14)【楽天ブックス¥780】

 最近、柳田国男モデルというものを考えている。一言でいえば「自給持続」(自給自足+循環持続)のローカルな経済モデルで、グローバルな勝者総取りの経 済モデルに対抗する。対抗するというよりも並存する。
 たとえば「道州制」は後者の経済モデルを念頭に、メガ・リージョンの競争力強化などといった発想で考えられがちだが、むしろグローバルな経済(金融資本 主義)とローカルな経済(里山資本主義)の媒介機能を果たす統治機構としてとらえるならば、その意義はあるのかもしれない。
 そんなことをある人に話したらこの本を教えられた。(08/09)


●『SINRA』2014年9月[特集|田園回帰の時代]【¥1111】

 復刊1号。玉村豊男責任編集。(08/10)

 その復刊宣言「森羅万象に耳をかたむけ、地球の声を聴こう!」から、「森羅万象の不思議を信仰や宗教でしか語れなかった時代は終わりを告げ、私たちはい ま、科学的な知見や詩的な想像力によって、旧来の枠組みを超えた共通の理解をもてるようになった」に続く編集長の言葉。
 「拡大することなしに維持できる経済活動」を「ローカルな経済」と名づける。グローバルな経済活動に「対抗」するローカルな経済活動の実践を通じて、 ローカルな文化の枠組みを超えたグローバルな文化(共通理解)が育まれる。それは「倫理」と名づけることができる。

《NATURE(海山の営みや森の命)とCULTURE(人の暮らしとそのスタイル)の接点を注意深く設定しながら、土地に根差したローカルな文化によっ て、土地から暮らしの根を引き抜こうとするグローバルな文明に対抗すること。
 逆に、NATURE(森羅万象の真実)に対する生き生きとした感覚をよみがえらせることによって、CULTURE(ローカルな文化の枠組み)を超えた、 現代に生きる個人としての共通理解に到達すること。そのようにして私たちは、拡大することなしに維持できる経済活動のあり方や、脱成長社会でのよりよい生 活の質の獲得について、憚ることなく世界中の友と語り合うことができるようになるのである。》


●グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ『シャンタラム(中)』(田口俊樹訳,新潮文庫:2011.11.01)【¥890】

 少し逡巡して、続けて中編を読むことに決めた。逡巡したのは、この濃密な言語表現がもたらす圧倒的なリアリティにはたして体力がついていくかどうか心配 になったから。(08/14)


●グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ『シャンタラム(下)』(田口俊樹訳,新潮文庫:2011.11.01)【¥840】

 解説者(養老孟司)のような「読み始めたら、もう止まらない」状態ではないが、「ここまで来たら、最後までつきあうしかない」の心境。(08/21)


●笠井潔・白井聡『日本劣化論』(ちくま新書:2014.07.10)【¥840】

 時々『永続敗戦論』を読み返したいと思う。が、その前に読みかけの與那覇本(『日本人はなぜ存在するか』と東島誠との対談『日本の起源』)をすませてお かねば。(08/21)


●ベルクソン『道徳と宗教の二つの源泉』T・U(森口美都男訳,中公クラシックス[電子書籍版]:2014.02.07)【楽天電子ブック ¥900× 2】

 ときおりベルクソンが無性に読みたくなる。(08/23)


●伊東邦武『九鬼周造と輪廻のメタフィジックス』(ぷねうま舎:2014.07.24)【¥3200】

 久しぶりに書店にたちより、渡辺恒夫『他者問題で解く心の科学史──心の科学のための哲学入門2』(北大路書房:2014.07.24)と柄谷行人『帝 国の構造──中心・周辺・亜周辺』(青土社:2014.07.24)と本書、同じ発行日付をもつ3冊の書物が目にとまった。(08/25)



【読了】

●若松英輔『岡倉天心『茶の本』を読む』(岩波現代文庫:2013.12.17)

 語り尽くせない話題に満ちた書物。(04/10)

 日本人は『茶の本』に「直接」ふれることができない(48頁)。若松氏はそう書いている。
 なぜなら、『茶の本』は英語で書かれている。これほど訳本の多い著作も稀だが、翻訳で読むかぎり、すでに誤読は免れ得ない(51頁)。
「天心のコトバを読むところには常に外国人作家の作品を読むとき【ママ】は別な、日本人が書いた英語を翻訳で理解するという、日ごろあまり接することのな いコトバの壁は常に存在しているのである。」(53頁)


●連城三紀彦『私という名の変奏曲』(文春文庫:2014.04.10/1984)

 連城ミステリーの最高峰、と文庫のカバーに謳ってある。別の時、別の所で読んでいたなら、その評価に賛同できたかもしれない。(04/18)


●村上春樹『女のいない男たち』(文藝春秋:2014.04.20)

 私立探偵ものハードボイルドのテイスト。極上至極の逸品、絶品、神品。堪能した。(04/26)


●安田登『日本語を生かすメリハリ読み!──漱石で学ぶ「和」の朗読法』(春秋社:2006.08.30)

 オリジナルな詞章とオリジナルな音楽とからなるオリジナルな朗読(用)作品をつくってみたいと思った。それもDTMで、たとえば初音ミクによる朗読や演 読のかたちで。(04/27)


●安田登『身体感覚で『論語』を読みなおす。──古代中国の文字から』(春秋社:2009.11.20)

 途方もなく射程が長く、計り知れない深度をそなえた書物。
 読みやすいからといってすいすい読み終えてしまってはいけない。できればどこか寺子屋のようなところで、師についてで一文一文からだに刻み込むようにし て学ばねばならない。(05/05)

 『聖書』に載るキリストの言動は、実はたった三年の間のことだった。それと同じように、『論語』の中の孔子の思想は、実は顔回の死から孔子自身の死まで 三年の間に確立されたのかもしれない。目覚まし時計が鳴った瞬間に物語りが作られる夢のように、孔子による心の発見とともに、すべてが奔流のようにすごい 勢いで逆行して作られたものだったのではなかったか。本書の末尾で、著者はそのように書いている。

《天は私たちの中に入ったのです。いや、天という漢字自体が「人=大」の頭部を強調した形であるということは、人々の信奉する超越者が「帝(殷)」から 「天(周)」に代わった時点で、超越者は実は私たちの中に入っていたのです。(中略)だからこそ周の時代になって「心」が生まれた。「心」は超越者が天に 変わった時点で生まれ、私たちの内部に潜んだ。そして、いつか発掘され、本来の力を発揮できる日が来ることをずっと待ち望んでいた。
 しかし、孔子の誕生まで、それに気づく人はいなかった。孔子ですら、顔回の死という、かつて経験したことのなかった喪失感を体験することによってようや くそれに気づいたのです。》(274頁)

 『旧訳聖書』に「魂」(生命力)や「霊」(息)とともにでてくる「心」。もう一つの「心の指南書=マニュアル」をめぐる書物が読みたい。


●アンドリュー・ロス・ソーキン『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』上・下(加賀山卓朗訳,ハヤカワ文庫:2014.02.15)

 上巻「追いつめられた金融エリートたち」はサクサクと快速で読み進めたのに、下巻「倒れゆくウォール街の巨人」に入った頃から減速し、半ばを過ぎたあた り(18章)でとうとう停止。
 ほぼ一月ほどの中断をはさんで、連休の終盤、部屋の片づけをした勢いで読み飛ばした。「リーマンが救済されなかったのは、どう見ても悲劇だった。」(下 巻424頁)(05/05)


●太賀麻郎『5000人抱いた男の無重力セックス』(イースト・プレス:2011.06.30)

 生きている喜びを享受する。心が満たされる。生まれてきた理由がわかる。生きていることに感謝もする。人生観が変わる。
 何も考えない。自分と外の境界が消える。聞こえなかったものが聞こえ、見えなかったものが見える。
 心を添わせよ。できることとできないことを見極めよ。イメージ力。精神的進化。素直さを引き出す。エゴを捨てろ。目的を持つな。目を見ろ。ワザを磨くん じゃなくて心を磨く。(05/05)


●弘兼憲史『弘兼憲史自選傑作集 黄昏流星群ベストオブベスト1』(小学館:2013.10.05)
●弘兼憲史『弘兼憲史自選傑作集 黄昏流星群ベストオブベスト2』(小学館:2013.11.04)
●弘兼憲史『弘兼憲史自選傑作集 黄昏流星群ベストオブベスト3』(小学館:2013.12.04)

 一気読みの愉楽。(05/06)


●山折哲雄『これを語りて日本人を戦慄せしめよ──柳田国男が言いたかったこと』(新潮新書:2014.03.30)

 柳田国男のことは(萩原朔太郎とともに)数年かけてきわめたいと思っている。究めることはできなくても、自分なりに見極めたいと思っている。
 本書はいずれまた読み返すことになるだろうと思い定め、心に残る印象的な話題をインデックスのように記憶にとどめおきながら読んだ。(05/08)


●赤坂真理『愛と暴力の戦後とその後』(講談社現代新書:2014.0520)

 この本は時間をおいて再読しなければいけない。できれば『東京プリズン』も読み直してみないといけない。(05/29)


●エース・アトキンズ『帰郷』(小林浩明訳,ハヤカワ文庫:2013.08.15)

 爽快。(05/30)


●齋藤希史『漢文脈と近代日本』(角川ソフィア文庫:2014.05.25/2007)

 読みたい本を読んだ。それを読むまでは自分が読みたかったのはこんな本だったと知らずにいる。そんな本が稀に存在する。
 反=漢文脈として立てられたことばの世界に私たちはいる。現代において漢文脈について考えることは、現代日本の言語や文化を相対化することへと通じる。 『日本外史』や『米欧回覧実記』を読んでみたくなる。優れた誘惑の書。(06/07)

漢文脈における機能性と精神性、精神性のうちの公と私、私のうちの閑適と感傷、その感傷が恋愛に、閑適が漱石の「余裕」に
「私たちが立っているのは、漢文脈の秩序の外側に開拓された領野…であり、それは、漢文脈的でないものを目指して開拓された…。極端に言えば、漢文脈と は、いったんは捨てたはずのものです。」(245頁)
「漢文脈について考えることは、現代日本の言語や文化を補強するというよりは、むしろ相対化することへと通じるのです。」(246頁)
「漢文脈は文体にとどまらない思考や感覚の型」(248)
漢文脈では、士人と文人が一体
「反=漢文脈として立てられたことばの世界に私たちはいる」(249)


●坂爪真吾『男子の貞操──僕らの性は、僕らが語る』(ちくま新書:2014.04.10)

 あとがきに、男性向け性教育書のクラシック(五年、一○年と読み継がれる古典)となることを目指して書いたとある。けっして大言壮語ではないと思う。 (06/10)

 記憶に残った言葉。「性に関わる特定の現象や対象を目の前にした際、その中に「自分の見たいものだけを見る」というのは、社会の性問題に共通する普遍的 な罠です。その意味で、性は、僕たち個人や社会の欲望や偏見を映し出す「鏡」です。」(219-210頁)


●菊間ひろみ『英語を学ぶのは40歳からがいい──3つの習慣で力がつく驚異の勉強法』(幻冬舎新書:2011.07.30)

 いい本を選んだ。(06/15)

 読み終えてからほぼ3月、ほとんど毎日のように反覆して読んでいる。この本が勧めるNHKの語学講座も三つ聴いている。いつまでつづくかわからないが、 たぶんつづくと思う。


●仲野徹『エピジェネティクス──新しい生命像をえがく』(岩波新書:2014.05.20)

 ヒストン修飾とDNAメチル化。そんなコトバが記憶に残る。この「修飾」という語が面白い。そのほかにも、ゲノムへの「刷り込み」(インプリンティン グ)、DNAからRNAへの「転写」、RNAからタンパクへの「翻訳」。(文化の伝統、たとえば和歌の歴史にもエピジェネティックなプロセスが潜んでい る?)
 HONZ[http://honz.jp/]でのレビューがいい。本の選択がいい。(06/19)


●池井戸潤『下町ロケット』(小学館文庫:2013.12.26/2010)

 爽快。(06/22)


●トム・クランシー/マーク・グリーニー『米中開戦1』(田村源二訳,新潮文庫:2014.01.01)【¥630】
●トム・クランシー/マーク・グリーニー『米中開戦2』(田村源二訳,新潮文庫:2014.01.01)【¥630】
●トム・クランシー/マーク・グリーニー『米中開戦3』(田村源二訳,新潮文庫:2014.02.01)【¥630】
●トム・クランシー/マーク・グリーニー『米中開戦4』(田村源二訳,新潮文庫:2014.02.01)【¥630】

 熱読。玩味。濃密。圧巻。(07/03〜19)


●井手英策『日本財政 転換の指針』(岩波新書:2013.01.23)

 日経新聞のやさしい経済学の連載コラム(「財政を考える」)を読んで気になった。神野直彦の熱気に似たものを感じた。優れたテキスト。(07/18)


●水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書:2014.03.19)

 構図が大きく説得力がある。とても面白い物語だった。(07/30)


●池井戸潤『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社:2014.07.28)

 爽快。構成が少しギクシャクしている。途中で一度極まり、最後の場面のカタルシスが宙に浮く。惜しい。でも、堪能した。(08/03)


●中島義道『生き生きした過去──大森荘蔵の時間論、その批判的解読』(河出書房新社:2014.04.30)

 大森哲学がこんなに簡単に要約されていいのか。しかし、「生き生きした過去」の実在というたった一つのシンプルな問題を生涯かけて考えつづけ、そうして 未完に終わった大森荘蔵の哲学的生涯が実に美しく本書のうちに描かれているのは、中島義道によるその大胆な要約によるところが大きい。(08/10)


●グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ『シャンタラム(上)』(田口俊樹訳,新潮文庫:2011.11.01)

 描写力に圧倒された。実際の出来事が下敷きになっているのだと思うから抵抗なく読める。(08/14)


●藤井隆至『柳田国男──『産業組合』と『遠野物語』のあいだ』(評伝・日本の経済思想,日本経済新聞社:2008.08.20)

 面白かった。「日本経済思想史上の奇跡」(東畑精一)といわれる柳田国男初期の思想と学問と政策論。感動的だった。
 柳田国男が「「前代」と「当代」の連続面を強調する歴史像を提示」し、「日本経済の「貨幣経済」化が農民を貧しくした」と理解したので、「協同組合の人 間的基礎を求めて、僻地に「残存」する「前代」を再評価しようとした(150頁)。
 この一文に本書の叙述の一切が圧縮されている。(08/15)


●長谷川三千子『バベルの謎──ヤハウィストの冒険』(中公文庫[中公eブックス・Kindle版]:2014.01.31)

 『言語起源論の系譜』からのスピンオフで読み始め、しだいに本編より面白くなった。最後はほとんど夢中になって一気読み。
 律法(トーラー)五書が四つの文書資料(J資料=ヤハウィスト資料、E資料、P資料=祭司文書、D資料)のパッチワークで出来ているとか、創世記1章 (天地創造)から11章(バベルの塔の物語)までの「原初史」といわれる部分が、ニュートン力学(J資料)と量子力学(P資料)との「とほうもなく支離滅 裂」な「切りはぎ」であるといった話題には、ひりひりするほど興奮する。「ヤハウィストの原初史」と「P資料による原初史」が附録についているのがうれし い。
 読んでいて、自分はメソポタミア神話が好きなのだ、メソポタミア文明に心底惹かれているのだということに気がついた。(08/16)


●互盛央『言語起源論の系譜』(講談社:2014.05.22)

 長谷川本を読み切った勢いで、やや中だるみの感のあった本書を一気に流し読んだ。
 バベルの塔の物語からホッブス問題、ルソーの一般意志の話題にいたるあたりまでは実に刺激的でわくわくさせられた。ところが18世紀、19世紀に入ると それまでの疾走感がすっかりどこかへ行ってしまった。このままだと中折れ本のストックがまた一冊増えることになると諦めかけていた。
 やはり読み終えてこそ見えてくるものがある。本書は「さながら小説のように読める思想史」(三浦雅士、毎日新聞2014/07/13)というよりある意 味で「小説」そのものなのだから、すべての伏線が最後になって回収されることになる。
 ソシュールとベンヤミンで閉じられる最終章が見事。(08/16)


●冨山和彦『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP新書:(2014.06.14)

 規模の経済性(G:グローバル経済圏)ではなく密着の経済性(L:ローカル経済圏)。
 コンパクトシティ化(穏やかな退出と集約化)で効率的な経済社会構造をつくり、雇用と労働のミスマッチを解消する。そして若者が結婚し、子育てをし、豊 かな人生を送れる社会システムをつくり出す。「Lの世界[ローカル経済圏]のキーワードは集約化だと思う。」(244頁)
 GはG、LはL。この区分は、何がリアルかを見定めるうえで有効な枠組みだ。(CはC、MはM。この区分は何をなすべきかを考えるうえで有効かもしれな い。)(08/21)


●グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ『シャンタラム(中)』(田口俊樹訳,新潮文庫:2011.11.01)

 カーラとの一夜とヘロイン体験。「私たちの舌は悶えながら、快楽の洞窟の中をすべるように進んだ。」(108頁)「ヘロインは人間の感覚を遮断する水槽 だ。」(562頁)「ヘロインの禁断症状というのは生皮を剥がれた状態で生きるようなものだ。」(603頁)
 暴力の中での赦しと善悪をめぐるカーデルの教え。「…彼らを憎むか、彼らを赦すか…生き延びたいなら、赦さなければならない…」(241頁)「宇宙はあ る種の究極の複雑さに向かっている。」(266頁)「究極の複雑さ≠ヨの動きを高め、促進し、早めるものはすべて善だ」(268-9頁)
 圧倒的な描写力。快楽と苦痛。静謐な洞察。(08/21)


●小林敏男『事業創成──イノベーション戦略の彼岸』(有斐閣:2014.04.20)

 おもしろい。いつのまにか見慣れ、聞き慣れ、ときには人前で口にさえしているものの、その正体がきちんとつかめているとは思えない概念(「ソリューショ ン」とか「プラットフォーム」とか「クラスター」)が明快に定義され、丁寧に相互のつながりをつけながら議論が組み立てられている。
 その情緒を廃した、禁欲的で「工学的」な論述のスタイルがいっそ心地よい。ときおり挿入される「肉声」めいた呟きも印象深い。
 知らない世界にふれるワクワク感のようなもの、知的刺激と言葉のシャワーを浴びる愉悦のようなものの余韻が読後のこる。
 主として90年代以降の情報企業の盛衰の事例がふんだんにとりあげられ、IBM、インテル、アップル等々、綺羅星のごときIT企業が登場するのも興をそ そる。

 「イノベーションのジレンマ」を克服するための方策。「オープンイノベーション」のもとでの「コーポレートベンチャーキャピタル」(CVC)と「プラッ トフォームリーダーシップ戦略」(PLS)。
 「破壊的技術」が「キャズム」を乗り越え、メインストリーム市場で受け入れられるための「ニッチ戦略」。
 「コモディティ化」からの脱出を図るための方法。著者が提唱する「エコロジカルニッチ戦略」(産業生態系における戦略)が「産業クラスター」論とからめ て提示される。
 「奉仕の精神なくして産業生態系は受け入れてくれないし、産業生態系の中に組み込まれなければ、企業の存続は脆弱なものにならざるをえない」(221 頁)と、実体験をふまえて、「イノベーション戦略」の「彼岸」にある奉仕の精神について語る「あとがき」の一文が濃く記憶に残る。(08/22)


●グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ『シャンタラム(下)』(田口俊樹訳,新潮文庫:2011.11.01)

 最後は流し込むようにして読み切った。野卑なのに高潔、猥雑でいて静謐、凄惨酸鼻を極めるシーンが敬虔な語らいと赦しの場面にに連続していく。
「唇が離れたとき、星々がそのキスを通って、彼女の海のような緑の目の中に雪崩れ込んだ。そのあと、彼女の眼から私の眼の中へ切望のときが過ぎた。私の灰 色の眼から彼女の眼へ情熱のときが過ぎた。あらゆる飢えが、肉体と希望に飢えた渇望が眼から眼へと流れた。私たちは思い出していた。初めて会った日のこと を。」(538頁)
 いつか完成する映画でこの世界を味わいたい。「世界に満ちては引く善と悪の潮」(548頁)にひたりたい。(08/27)