不連続な読書日記(2012.11-12)



【購入】

●佐藤正午『身の上話』(光文社文庫:2011.11.20/2009.7)【¥743】

 なにやら傑作らしい雰囲気を漂わせていたので。(11/12)

●山田風太郎『伊賀忍法帖 山田風太郎ベストコレクション』(角川文庫:2010.10.25)【¥629】

 出石永楽館の歌舞伎を観にでかけた際、山田風太郎記念館に立ち寄り、土産に買った。(11/17)

●ブライアン・トレーシー他『メンターのチカラ 自己啓発編──日米の超一流実業家・メンターが教えてくれる人生の勝ち方』( ミラクルマインド出版:2012.3.20)【¥1300】

 山田風太郎記念館から少し足をのばして贔屓の燻製屋さん(香味煙)に立ち寄り、土産にいただいた。娘婿が登場する。(11/17)

●八木雄二『神を哲学した中世──ヨーロッパ精神の源流』(新潮選書:2012.10.25)【¥1400】

 ヨーロッパが精神的につくられたのは中世で、だから中世を知らずに本当のヨーロッパを知ることはできない。古代から伝えられた哲学とキリスト教がケルト 民族の生活領域(アルプスの北側)でつくった世界が今につながるヨーロッパで、この中世の哲学をよく知っていれば近代哲学はいらない。(「はじめに」か ら)
 本気で哲学を知りたければ、じっくりとプラトン全集を読み、トマス・アクィナスの文章をプラトンにならって対話文に書き換えるか十倍の分量の説明に書き 換える作業を繰り返せばよい。なぜなら西洋哲学の本質は対話で、対話によって獲得すべき知識とはわかりやすい説明にほかならないから。(「あとがき」か ら)
 この著者の書物は『「ただ一人」生きる思想』が常備本、『天使はなぜ堕落するのか』が読みかけのままお蔵入り。(11/23)

●九鬼周造『偶然性の問題』(岩波文庫:2012.11.16)【¥1140】

 九鬼周造にはいずれとりつかれるだろうという予感があった。もう少し先だと思っていた。図書館から借りた全集第四巻とあわせて年明け、最初に読む本の候 補。(11/24)

●柄谷行人『哲学の起源』(岩波書店:2012.11.16)【¥2100】

 『トランスクリティーク』は最後まで読み通さず、『世界史の構造』はとうとう手にとることさえなかった。卒業したわけではない。柄谷行人を卒業すること などできない。どこへ行くのかを見定めて後追いしたいと思っていた。(11/301)

●『BRUTUS』No.745[文芸ブルータス](マガジンハウス:2012.12.15)【¥619】

 文芸誌8誌(新潮、小説新潮、オール讀物、群像、小説すばる、文藝、yomyom、en-taxi)とのコラボ。(12/02)

●村上由佳『ダブル・ファンタジー』上下(文春文庫:2011.9.10/2009.1)【¥495×2】

 吉行淳之介の『美少女』が極上のエンターテイメントだった。食後のデザートを物色して選んだ。(12/03)

●横山秀夫『64 ロクヨン』(文藝春秋:2012.10.25)【¥1900】

 刊行されたときから気になっていた。年末に読む本として買った。週刊文春「2012ミステリーベスト10」国内部門の第1位。(12/09)

●アンドレ・ルロワ=グーラン『身ぶりと言語』(荒木亨訳,ちくま学芸文庫:2012.1.10)【¥2000】

 和歌のメカニスムについて考えていて、この本のことを想起した。
 和歌のメカニスムとは吉本隆明がいう「転換」(認識の転換、場面の転換)のこと。転換は比喩に極まり、また翻訳(としての詩作)と同義である。和歌にお ける比喩は映画的なアナロジーに、和歌における翻訳(引用=本歌取りを含めて)は意味生成にそれぞれつながっていく。
 ここで「俳句は、表意的な内容を持たない頭語反復的な身振り、意味(意味の希求)が抹殺された一種の傷跡なのである」(『ロラン・バルト映画論集』収録 の「第三の意味」)という指摘を重ねあせ、最近ネットで入手した九鬼周造の『日本詩の押韻』(http: //uwazura.seesaa.net/image/kuki_nihonsioin.pdf)への関心の高まりと組み合わせると、たとえば「押韻と は身ぶりである」という命題が得られる。
 このとりあえずは使い道のない仮説に関して思いをめぐらせているうちに、どうしてもこの本を読まねばならないという気持ちが高じていった。
 本書は「技術と言語活動との地質学的な関係」を物語るという文章(26頁)を見つけて、技術(身ぶり)=下部構造、言語=上部構造に対応していることに 気付づいた。(12/16)

●メルロ=ポンティ『言語の現象学』(木田元編「メルロ=ポンティ・コレクション」,みすず書房:2001.1.7)【¥3000 古600】

 いよいよ「貫之現象学」における「強い私的言語」について考える段階をむかえた。その準備のために、ソシュールとあわせてこの本を読んでおかなければな らないだろうと感じていた。(12/21)

●池谷裕二・中村うさぎ『脳はこんなに悩ましい』(新潮社:2012.12.20)【¥1300】

 池谷裕二さんの本にははずれがない。年末に『64』と並べて読むつもり。(12/23)

●篠原資明『空海と日本思想』(岩波新書:2012.12.20)【¥760】

 「明治以降の日本にあって、九鬼周造ほど、日本思想の基本系の変奏者としてふさわしい人物は見つかるまい。」(151頁)この文章が目に入ってしまって は買わずにおけない。6年前の岩波新書『ベルクソン』とも響きあっているように思う。『ベルクソン』(12/29)

●ポール・ブーイサック『ソシュール超入門』(鷲尾翠訳,講談社選書メチエ:2012.12.10)【¥1600】

 今年の最後に『空海と日本思想』とあわせて買った。年が明ければ、ソシュールを中心にすえてパースと空海とベルクソンを同時に、それにフロイトやラカ ン、時枝誠記などをからめて読み込んでみようと思っている。まるで『言葉と在るものの声』(前田英樹)の焼き直しだが、これだけは自分の頭と手と眼をつ かってやっておかねばならないと思っている。
 中沢新一の「解説 ブーイサックという人」に、「心の科学としての記号論」という言葉がでてくる。(12/29)


【読了】

 今年も多くの本が読みかけ、積ん読のままですぎていく。年末年始に「見切り」をつけるつもりだが、どうなることか。

●小林敏明『フロイト講義〈死の欲動〉を読む』(せりか書房:2012.6.29)

 柄谷行人の書評(朝日新聞、07/29)は、本書が、フロイトの「死の欲動」の概念を、ラカンのように自己流に解釈するのではなく、フロイトがそうした ように文字通り生物学的観点から受けとめ、分子生物学の成果である「死の遺伝子」の考え方によって裏づけようとした点に注目していた。また、死の欲動の変 容態である破壊(攻撃)欲動の「昇華」に言及したところにも。
 数年前(2009年7月)から「快感原則の彼岸」を精読している。前半まで読書ノートをつくってその後さぼっている。(11/01)

●中沢新一『大阪アースダイバー』(講談社:2012.10.10)

 週刊現代連載中に「土と墓場とラブホテル」(第四部アースダイバー問題集)を読んで以来、刊行を心待ちにしていた。最近、中沢新一の本が最後まで読み通 せなくなっていた(かつて柄谷行人の本がそうだったように)。この本は一気に読み通せた。(11/02)

●佐藤正午『身の上話』(光文社文庫:2011.11.20/2009.7)

 よくできた語り物。小説らしい小説。(11/21)

●平田オリザ『わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か』(講談社現代新書:2012.10.20)

 この本は今年読んだ新書のなかでベストかもしれない。平田オリザの「演劇的知性」。(11/22)

●吉行淳之介『美少女』(新潮文庫:1975.4.25)

 透明人間のこと、複数の交わりのこと。(12/01)

●九鬼周造『偶然性の問題』(岩波文庫:2012.11.16)

 美しい本だ。九鬼周造の「実存的経験」(私は誰の子か)が濾過されている。
 原始偶然と絶対的形而上的必然性とが「必然─偶然者」としての絶対者の両面であること(263頁)。ヘラクレイトスとパルメニデス(注解、367頁)。
 「定言的(論理的)」「仮説的(経験的)」「離接的(形而上的)」と、八木雄二(『神を哲学した中世』30頁)の「より大とより小」「全体と部分」「一 と多」、柄谷行人(『哲学の起源』154頁)の、というよりカントの「物自体」「現象」「仮象」、井筒豊子の「言語フィールド」「意識フィールド」「認識 フィールド」との関係もしくは無関係。(12/11)

●柄谷行人『哲学の起源』(岩波書店:2012.11.16)

 柄谷行人はどうしてここまで断定的に書けるのか。見てきたようにかけるのか。ひさしぶりに柄谷本を一気読みした。(12/19)

●村上由佳『ダブル・ファンタジー』上下(文春文庫:2011.9.10/2009.1)

 二日で読んだ。(12/25)