不連続な読書日記(2011.05)



【購入】

●古東哲明『瞬間を生きる哲学──〈今ここ〉に佇む技法』(筑摩選書:2011.3.15)【¥1600】
 風邪をこじらせてゴールデン・ウィーク後半の三連休が台無しに。病み上がりの養生のため、そして生活の再起・建て直しを心に期して、古東哲学に挑むこと にした。

●『日本映画名作集』(株式会社コスミック出版:2011.4)【¥1980】
 DVD9枚組BOXセット。小津安二郎全集につづき購入。
 「青い山脈」(今井正監督・170分・モノクロ・1949年)、「雨月物語」(溝口健二監督・96分・モノクロ・1953年)、「地獄門」(衣笠貞之助 監督・88分・カラー・1953年)、「西鶴一代女」(溝口健二監督・136分・モノクロ・1952年)、「祇園囃子」(溝口健二監督・81分・モノク ロ・1953年)、「お遊さま」(溝口健二監督・89分・モノクロ・1951年)、「武蔵野婦人」(溝口健二監督・84分・モノクロ・1951年)、「雪 婦人絵図」(溝口健二監督・85分・モノクロ・1950年)、「銀座化粧」(成瀬巳喜男監督・87分・モノクロ・1951年)。

●杉田圭『超訳百人一首 うた恋い。』(メディアファクトリー:2010.8.14)【¥950】
●杉田圭『超訳百人一首 うた恋い。2』(メディアファクトリー:2011.4.29)【¥950】
 こんなマンガ本が出ていることをうかつにも知らなかった。

●『講座日本思想5 美』(相良亨・尾藤正英・秋山虔編,東京大学出版会:1984.3.26)【¥1200古】
 秋山虔「「みやび」の構造」、久保田淳藤「幽玄とその周辺」、平春男「日本の美論──中世歌論の追究したもの」、渡辺守章「美しきものの系譜──花と幽 玄」など、必読論文が収録されていた。

●『一個人』2011.7[特集|美しい日本の言葉](KKベストセラーズ)【¥680】
 最近、日本の仏教思想家の文章を読みたいとしきりに思っている。空海や道元より、法然や親鸞の浄土系がいいなどとも。
 だったらひるまず原典に挑めばいいものを、いま挙げた四人に日蓮を加えた第2部「日本仏教開祖の救いの言葉」が第1部「美しい“やまとうた”の世界」に つづいて特集されているのを見つけてとりあえずお茶を濁すことにした。

●別冊宝塚『誰も書けなかった日本のタブー』(宝島社:2011.5.12)【¥838】
 「さらば八百長メディア。」巻頭(と裏表紙)におかれた言葉。

●水野敬也『「美女と野獣」の野獣になる方法』(文春文庫:2010.10.10)【¥657】
 4月以来、わけあってネットで恋愛心理に関する情報検索に没頭している。
 文庫化された『夢をかなえるゾウ』が平積みされているそのすぐ横に本書を見つけた。見つけてすぐ買って、中級の「DK心変わりの理論」と初級の「執着の 分散理論」とを拾い読みした。凄い。(恋愛、性愛の世界を「感覚」や「記憶」からではなく、徹底的に「知覚」の線からプラクティカルに追究している。この 徹底が素晴らしい。だから理論的水準、というか純度が高い。)

●小川洋子・岡ノ谷一夫『言葉の誕生を科学する』(河出ブックス:2011.4.30)【¥1200】
 ほぼ一年近く『〈私〉の哲学』(永井均)が積ん読状態になっていて気になってしかたがない。そろそろ腰をすえて読み始めようかと思っている。
 でも、その前に『意識する心』(チャーマーズ)と『なぜ意識は実在しないのか』(永井の前著)を再読しておこう、いやいっそのこと、これまでに買いため てきた心脳関係や言語に関する本をまとめ読みしておこうなどと話が大きくなった。
 手始めに山鳥重著『言葉と脳と心』を読み始めたところ、いまひとつ乗れず、せっかくの目論見が崩れそうになったので、口直しに読むことにした。


【読了】

●三宅裕之『夢を“勝手に”かなえる自己洗脳』(マガジンハウス:2011.2.22)
●渡部昇一『知的余生の方法』(新潮新書:2010.11.20)
●古東哲明『瞬間を生きる哲学──〈今ここ〉に佇む技法』(筑摩選書:2011.3.15)
 けっこう集中して真剣に読み、読んでいるときはずいぶん刺激と影響を受け、読み終えて深く感ずるところもあったのに、しばらく経つと読中読後の印象は すっかり薄れ、はては、何が書かれていたのか、そしてまた何をどう深く感じてもいたのだろうかと訝しくなる。
 それでも古東本は、もっとも弛緩した記憶の底面にまで達している実感がある。とりわけ第三章「水中花──プルーストの瞬間復元法」以後は、『言葉と在る ものの声』(前田英樹)の議論と重なりあってくる。

●荒木博之『やまとことばの人類学──日本語から日本人を考える』(朝日選書:19983.12.20)
●竹内整一『「かなしみ」の哲学──日本精神史の源をさぐる』(NHKブックス:2009.12.25)
 古東本を読み終えて、ひさしぶりに本を読むことの愉しさを(一瞬)味わった。その勢いをかりて読んだ。

●杉田圭『超訳百人一首 うた恋い。』(メディアファクトリー:2010.8.14)
●杉田圭『超訳百人一首 うた恋い。2』(メディアファクトリー:2011.4.29)
 実に素晴らしい。

●山田宏一・和田誠『ヒッチコックに進路を取れ』(草思社:2009.8.14)
 風邪で棒にふった連休が明けても依然体調がすぐれず、そうこうしているうち3年前に患ったのと同じ病気で1週間入院することになった。
 3日ほど経ち熱が引いてようやく活字が読めるようになったので、直感的に選んだ本書を丹念に読み終えて退院した。退院してすぐに『泥棒成金』を観た。
 その後数日の自宅養生中に、植草甚一の『ヒッチコック万歳!』とヒッチコック/トリュフォーの『定本 映画術(改訂版)』を眺めたが、これは結局眺めるだけに終わった。

●別冊宝塚『誰も書けなかった日本のタブー』(宝島社:2011.5.12)
 まる一日、読み耽った。「金と権力で隠される東電の闇」の特集が面白かった。

●前田英樹『言葉と在るものの声』(青土社:2007.4.20)再読
 貫之論の前半部が最終局面を迎えている。パースによる十の記号のクラスを使って、ドゥルーズの『プルーストとシーニュ』をまじえながら、(吉本隆明著 『初期歌謡論』から切り出してくる予定の)「定家十体」を解読し再分類してみようと考えている。
 そのパースの記号分類がいかに「驚くべき」ものであるかが書かれた箇所を読み返していて、結局、まるごと再読した。この書物もまた、驚くべきものだと思 う(とりわけ空海の「声字実相義」をめぐる議論)。