★1997.1
☆ヘーゲル『大論理学 上巻の二』(武市健人・岩波書房)
第1巻有論を読み終えた。毎週、ほぼ1章ずつ要約してコメントとノートを付けてインターネットの「ヘーゲル論理学フォーラム」へメールで送った。実に楽しく、そして疲れる作業だった。上巻の一では意識から物質(素粒子から元素まで)へ、二では物質から生命への過程がロゴスの自己展開のプロセスとして描かれていた(と思う)。中巻(第2巻本質論)では生命と精神を媒介するもの、脳という器官の誕生と進化が描かれている(と思う)。
☆八木誠一『キリストとイエス』(講談社現代新書)
ほぼ10年ぶりの再読。統一から自由へ、そして「統合」へ。八木神学にはじめて接したときの、ここには何事か根源的な事柄が述べられているといったこころとからだを超えたところ、霊的な次元で感じ取った感覚(啓示のようなもの)がよみがえった。
★1997.2
☆ティモシー・リアリー『大気圏外進化論』(菅靖彦・リブロポート '95)
哲学の8つの領域(宇宙論、政治学、認識論、倫理学、美学、存在論、目的論、終末論)が8つの生命圏につながり、進化の24のステージが啓示される。荒唐無稽ではない。リアリティがある。
☆小坂井澄『終末論の正体』(文藝春秋 '96)
カタログ本。
☆『ヨハネの手紙・黙示録 シュラター新約聖書講解14』(蓮見和男・新教出版)
黙示録本文のみ読んだ。なるほどこの類の書物に幼少時から親しんでいれば、歴史とは編集であり、解釈と批評が一つの社会的実践であるという観念が生まれるはずだ。
☆D.H.ロレンス『現代人は愛しうるか 黙示録論』(福田恆存・中公文庫)
本書を読むことがここ10年来の宿題だった。
☆ウィリアム.L.デアンドリア『ホッグ連続殺人』(真崎義博・ハヤカワミステリ文庫)
噂通りのミステリー。
☆ジョン・ダニング『死の蔵書』(宮脇孝雄・ハヤカワミステリ文庫)
絶品。これぞミステリー。
☆武満徹『時間の園丁』(新潮社 '96)
これぞ散文。
☆佐々木正人『知性はどこに生まれるか ダーヴィンとアフォーダンス』(講談社現代社 '96)
この本を読み終えたとき世界の見え方が変わっている、ことを期待していた。概説書ではそこまでいけないか。ダーウィンが面白い。ヘーゲルの概念論と「種の起源」。
★1997.3
☆R.スペンサー『ヘーゲル FOR BEGINNERS シリーズ 77』(椋田直子・現代書館)
☆西研『ヘーゲル・大人のなりかた』(NHKブックス '95)
ヘーゲル本はいろいろ読み散らかしたが、読了したのはこの二冊。精神現象学をちゃんと読んでおきたくなった。
☆小岸昭『離散するユダヤ人』上(岩波新書 '97)
ユダヤ教の世界は深い。歴史紀行の本。
★1997.4
☆坂口尚『石の花 1侵攻編』『石の花 2抵抗編』(講談社漫画文庫)
実にいい。惜しみながら少しずつ、物語の進行に沿って読み込んでいこう。読み終えたら、続いて「虹色のトロツキー」を読んでみよう。
☆マックス・ヴェーバー『古代ユダヤ教 上』(内田芳明・岩波文庫)
やや期待はずれ。読物として血湧き肉踊るものではないが、読み込んでいくと味が出てくる。
☆市川伸一『考えることの科学』(中公新書 '97)
認知心理学はもっとすごい議論をしているのかと思っていた。感染者問題その他話の種になりそうな話題は豊富(ほとんど忘れた)。統計学が面白くなった。
☆ヘーゲル『大論理学 中巻』(武市健人・岩波書房)
本質論。二元論の世界。ヘーゲルの鋭さが感じられない。退屈。
★1997.5
☆坂口尚『石の花 3内乱編』『石の花 4激戦編』『石の花 5解放編』
感動的。良質。絶品。
☆マックス・ヴェーバー『古代ユダヤ教 中』(内田芳明・岩波文庫)
毎日通勤電車の中で少しずつ読んでいるうち、語り口に馴染んできた。
☆松岡正剛『情報の歴史を読む』(NTT出版 '97)
この人の文章はそれが扱っている素材や観念に比べて平板すぎて、いまひとつ刺激を受けなかったが、この書物はこれまでのものとは少し違っていた。講義録だからだろうか、それとも最近NHK教育の番組で生の語り口に触れたからだろうか。読後、新しいソフトがインストールされたような感じ。データベース、ではなくデータベースの検索と編集のソフトが。
☆松岡正剛監修『増補 情報の歴史』(NTT出版 '96)
毎日少しずつ読み、眺めている。
☆司馬遼太郎『菜の花の沖 (一)』(文春文庫)
NHKの大河ドラマにどうかと問われて、嘉兵衛は大きすぎてドラマになりにくいと作者は答えた。この話を知って読んでみようと思った。
☆五十嵐敬喜・小川明雄『公共事業をどうするか』(岩波新書 '97)
世の中のことを少し真剣に勉強してみようと思って、いろいろ考えて公共事業の実態を覗きみることが一番だと直観して購入した。多くの情報が得られたが、展開されている議論のいくつかが一面的だと感じるのは「体制側」の人間だからだろうか。
☆多田富雄『生命の意味論』(新潮社 '97)
深く考えずに読んでいる分には結構面白いのだが、さて「超システム」という概念の新規性がどこにあるのかと考えはじめると、読後の好印象が曖昧になる。
☆長谷川宏『新しいヘーゲル』(講談社現代新書 '97)
これは啓蒙書なのだろうか。入門書なのだろうか。どこが「新しい」のだろうか。それなりに楽しく読めたのだから難しいことをいうこともないか。
★1997.6
☆鶴岡真弓『ジョイスとケルト世界』(平凡社ライブラリー '97)
☆鶴岡真弓・辻井喬『ケルトの風に吹かれて』(北沢図書出版 '94)
☆養老孟司『身体の文学史』(新潮社 '97)
☆デヴィッド・ノリス『コミック版ジョイス』(心交社 '96)
☆W.B.イエイツ『ヴィジョン』(鈴木弘・北星堂書店 '78)
☆高井春繁・斉藤忍随『ギリシア・ローマ古典文学案内』(岩波文庫)
☆山之内靖『マックス・ヴェーバー入門』(岩波新書 '97)
☆松浦寿輝『折口信夫論』(太田出版 '95)
☆グレッグ・ベア『女王天使』上(酒井昭伸・ハヤカワ文庫)