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 ■ 不連続な読書日記                ■ No.272 (2005/03/31)
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 □ ルドルフ・ジュリアーニ『リーダーシップ』
 □ 神戸新聞但馬総局編『城崎物語 改訂版』
 □ 河合隼雄・養老孟司・筒井康隆『笑いの力』
 □ 河合隼雄『大人の友情』
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●942●ルドルフ・ジュリアーニ『リーダーシップ』
                     (楡井浩一訳,講談社:2003.4.25)
●943●神戸新聞但馬総局編『城崎物語 改訂版』
                  (神戸新聞総合出版センター:2005.2.25)

 昨年、台風23号で被害を被った豊岡市で講演会があった。2月下旬のことだった。
講師は、「未来をひらく日本委員会」[http://www.nihoniinkai.com/]の主催者、
元NHK専務理事の尾畑さん。ひょんなことで知り合いになり、時々会ったり、メ
ールのやりとりをしている。月に一度の日本委員会にも時折参加させていただいて、
旬のジャーナリストや時の人の話を直に聞いている。(河合文化庁長官も講師の一
人で、その時のことは No.238 で書いた。)

 尾畑さんは、ブッシュ大統領の就任祝賀式に招かれた。帰国したばかりで体調が
すぐれず、豊岡の講演の後で寝込まれたらしい。それでも話は(別の意味で)熱っ
ぽかった。講演の話題にも出てきたのだが、尾畑さんは帰国後ジュリアーニさんに
会って、とても感銘を受けたという。その話を先に聞いていたので、豊岡へ向かう
車中で『リーダーシップ』を読んだ。『城崎物語』の方は、その夜、城崎温泉で催
された尾畑さんを囲む懇親会で、町長さんからいただいた。城崎には二泊して、外
湯を中心に朝夜計八回も温泉につかった。湯あたりが一週間は続いた。体調がもど
ってから『城崎物語』を読んだ。

●944●河合隼雄・養老孟司・筒井康隆『笑いの力』(岩波書店:2005.3.16)
●945●河合隼雄『大人の友情』(朝日新聞社:2005.2.28)

 河合隼雄さんを尼崎市に招いて講演会をやることになった。私が事務方の責任者
のような立場なのだが、実際の仕事はほとんど部下に任せっきり。仕事にかこつけ
て河合さんの最近の本を何冊か購入し、仕事を装って読んだ。(藤原書房から、カ
トリック教会大司教のヨゼフ・ピタウさんとの対談『聖地アッシジの対話──聖フ
ランチェスコと明恵上人』が出ているようだが、これは買い忘れ。)

 河合さんの文章はうっかり読み飛ばすと何も残らない。じっくり読んでも(たぶ
ん)何も残らない。エッセイよりは対談、対談よりは講演録、講演録よりは実際の
講演の方がはるかに面白い。何も残らないのは同じだけれど、残らなさの質が違う。
白州正子さんとの対談に「魂には形がある」というのがある。(対談集『こころの
声を聴く』に掲載されているし、最近、新潮文庫から出た白州正子の『おとこ友達
との会話』にも収録されている。「魂には形がある」は青山二郎のオリジナル。)
魂の形のひとつの実例が河合隼雄さんご自身で、だから生身・肉声に接すること自
体がひとつの経験になる。蒸留された魂の形をかいま見たことが大切なのであって、
何も残らないのは最上質の酒の特典。

 『笑いの力』は、以前に読んだ『声の力』(阪田寛夫・谷川俊太郎・池田直樹と
の共著)や『絵本の力』(松居直・柳田邦男)と同様、小樽の「絵本・児童文学研
究センター」が主催して行われたシンポジウムの記録。気楽に読み始めたらやめら
れなくなった。養老さんの一神教の話がめっぽう面白くて、このことは河合さんも
発言している。

 『大人の友情』は論座連載中から気になっていた。というのも、以前から「友情
」というものに関心があったからで、それはたぶんフランチェスコ・アルベローニ
の『友情論』を読んで以来のこと。(もっと以前には、有島武郎の友情、永井荷風
の非情、だれだか忘れた文士の無情といった組み合わせで、日本近代文学を一刀両
断にすることを目論んでいた。)近年では白州正子の『いまなぜ青山二郎なのか』
を読んで、そこに出てきた小林秀雄と青山二郎の「高級な友情」とか、むうちゃん
(坂本睦子)やお佐規さん(長谷川泰子)をめぐる男たちの関係が強烈だったから
で、これらの話題は本書でもとりあげられている。

 「友人の死」に出てくる「友情の背後には魂がある」(77頁)という言葉がすべ
てを語っている。「死んだ友人たちが、自分を見ている、あるいは、見てくれてい
る、と考えることは、生きてゆく上で大切なことと思う。」(81頁)ホモエロス(
同性・愛)とホモセクシャル(同・性愛)の違いも面白かった。(本書を読み終え
て、丸谷才一の『挨拶はたいへんだ』を無性に読みたくなった。)

 そのほか、たまたま仕事場にあった『深層意識への道』や『父親の力 母親の力
──「イエ」を出て「家」に帰る』や『無為の力──マイナスがプラスに変わる考
え方』(谷川浩司との対談)や『いのちの対話』などにも目を通した。これらにつ
いては、また別の機会に。

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