吹奏楽を楽しむ
はじめに

 吹奏楽部の顧問を始めてみると、「えっ、こんな事も知っておかないといといけないの」と、非常に広範囲な知識が必要なだということに、まず驚かされます。

 音楽以外の先生の場合だと、まず楽譜の読み方から始まります。そして、楽器の一つ一つの演奏方法、その楽器の特徴、演奏を合わせる練習方法のポイント、指揮法、などの知識と経験が必要なのが見えてきて、それだけでおじけづきそうになってしまいます。

 でも、そんなこと気にせずに活動はできるのです。それは、吹奏楽の一番の醍醐味、「
みんなで合奏する時間をいかに楽しく過ごせるか」が出来るようになれば、一挙に解決します。

 しかし、その合奏をする時に「何を言えばいいのか」、「きれいに合わないんだけどどこを直せばいいのか」、「ほんとにこのやり方でみんなが音楽を楽しんでいるのか」など次の課題も見えてきます。

 そこで、このホームページでは、まず、
合奏をするための準備段階の指導方法が書いてあり、次に、合奏を生徒と楽しむためのポイントについて書いてあります。

 しかし、その先にある、「技術的に完璧にする・コンクールで賞を目指す」といったノウハウについては、コンクールの全国大会に出演したような団体をサンプルにした実践例が、VTRなどで、すでに多数出ていますので、そういう資料を参考にして下さい。

 ここでは、それより生徒と一緒に吹奏楽を楽しみましょう。これが、このホームページの読んでもらいたい点です。そして、生徒と一緒に音楽の楽しむことが出来るようになれば、そこから先は、もうこのホームページを越えた
素晴らしい吹奏楽の世界が広がります。

T.いい音作ろう
1-1.基礎の基礎(1)  楽器の基礎

 まず、楽器から「いい音」が鳴らないと生徒も楽しめません。でも、「いい音」が出るようになるには、練習が必要です。そして、その練習の仕方が悪いと、「いい音」が鳴るまでに、長い時間がかかってしまいます。生徒の、この苦労を軽くしてあげましょう。

 そのためには、あたりまえのことですが
基礎が大切です。

 まず最初に押えておくべき基礎は何か。それはは、
各楽器の持ち方や、楽器の置き方、そして整備の方法などです。

 音を鳴らす前にこれらのことをきっちり覚えましょう。案外、このことは忘れがちで、特に、先輩が自己流にしてしまったのを後輩に教えると大変です。鉄は熱いうちに打てで、まず最初にこの点を注意してあげましょう。

1-2.基礎の基礎(2)  教則本

 では、この楽器の持ち方などはどこで知ればいいのかというと、
各楽器ごとに教則本が出版されているので、これを見ましょう。

 しかし、「教則本など学校に揃っていない」、「買う予算もないぞ」という場合はどうするか。今は便利なものがあります。

 インターネットで調べましょう。その楽器の
プロが書いてるホームページで大変多くの情報が得られます。それを参考にして練習するといいでしょう。

1-3.基礎の基礎(3)  姿勢

 それから、楽器の鳴らし方です。が、
まずここで、楽器を持つ姿勢に気をつけてあげてください。

 いままで、もったことのない物を、初めて長時間持つことになるわけですから、姿勢のいい人でも、
バランスを崩して姿勢が悪くなりがちです。

 最近、姿勢のいい生徒は少なくなってきているような印象を持っています。そういう人にはなおさら、注意が必要です。

 良くなっては崩れ、良くなっては崩れということを繰り返しますので、
楽器に慣れるまで、何度を正しい姿勢になるよう指摘してあげることが大切です。

 また、この
正しい姿勢は、正しい呼吸をもたらすという効果も生み出します。

1-4.基礎の基礎(4)  日本人の初心者

 基礎の基礎を押さえたら、いよいよ、音を鳴らしてみましょう。口の形や、リードやマウスピースの当て方などを、教則本を参考にやってみましょう。

 この、音を出す技術については、教則本に書いてあります。ですので、ここでは教則本にはあまり書いてない、しかし、ここを押さえないと、なかなか練習が上手く進まないというコツを挙げていきます。
 
なぜ、ここで挙げるコツが教則本に書かれてないのか。その大きな理由の一つは、吹奏楽で使う楽器は、そのほとんどが西洋で発達したもので、西洋人にとって扱いやすい状態で発展してきたことです。

 もう一つは、教則本は既に演奏できるようになった人が書いた本です。このため、初心者の状態を完全に再現しているとはいえません。

 これらのことから、
日本人が楽器を扱う場合には日本人としての注意が必要ですし、また初心者が楽器を扱う場合の前提条件を考慮に入れた指導法が必要です。

1-5.基礎の基礎(5)  日本語の問題

 では、日本人として注意する点とは何か?その一番目は、日ごろ使っている日本語から来る問題点です。

 まず、日本語は外国語に比べて、しゃべるときの息が少なく、ゆっくりしています。このため、西洋の言語を使う人たちに比べて、
しっかり息を出す練習をすることが、楽器を吹く前に必要になります。

 また、ノドを閉めて声を出す傾向が強いこともあげられます。このことにより、
楽器を吹くときにも息を詰めてしまって、硬い音を出す傾向になります。

 この点も、
注意して直していく必要があります。

1-6.基礎の基礎(6)  日本の文化  

 二番目には、日本の文化からくる問題点です。日本の伝統音楽文化の特徴の一つとして、単旋律音楽が主であったことが挙げられます。

 つまり、
和音の感覚がなかったのです。もちろん、明治以降、いろいろな西洋音楽が入ってきてこの傾向は少なくなってきていると思われます。

 しかし、それでも、和音をちゃんと聞く機会は、西洋に比べればはるかに少ないでしょう。

 ですので、
和音の感覚を育てていく必要があります。

1-7.基礎の基礎(7)  日本人の気質

 もう一つ、日本人の気質からくる問題点があります。日本人の真面目さや真剣さが、上達を妨げることがあります。

 真面目さは、
練習の時に体を硬くして力を入れすぎてしまうことが見受けられ、これにより本来はリラックスして行う練習の効率が上がらず、上達を遅らせる場合があります。

 また、日本人は全てのことを「道」にする傾向があります。つまり、学び極める「道」として「吹奏楽道」を作ってしまい、
楽器を演奏して音楽を楽しむことを忘れがちになります。

 また、この「道」の精神は、過度な精神主義による練習や、コンクール至上主義を生み、折角上達し始めた生徒たちの吹奏楽を楽しむ気持ちを潰してしまうこともあります。

 
音楽は、極めるべき物ではなく、楽しむべきものです。この気持ち一番大切です。

2.息が足りない

 「基礎の基礎」の後半で取りあげた問題点をもう少し、具体的に整理しましょう。まず(5)で取り上げた、呼吸の問題です。

 呼吸に使う息が少ないのです。(5)で、外国語に比べて、
日本語を喋るときに使う息は、少なくゆっくりしているということを書きました。

 その一つの例として、言葉の中にある「撥音」の数を比較してみるとよくわかります。日本語の方が圧倒的に少ないのです。「撥音」は、息のスピードを上げて鋭く出さないと出ません。日本人としては、その練習が日ごろから出来ていないのです。

 小学生が楽器を吹く時の練習方法として、ティッシュを細長く丸めて、それを口にくわえ、強く息で遠くに飛ばしてみるというのがあります。この練習により、息の量とスピードを上げることが出来ます。これによって、いい成果を上げているようです。

 このように、まず、
しっかりした、はっきり出す息を意識させることが必要です。この、呼吸法についての指導の方法は合唱部のページに詳しく書いてあります。

3-1.貧弱な音のイメージ

 次に、生徒の意識レベルから改革してやらなければいけない点があります。音に対するイメージです。

 西洋では、家族で演奏会に行って素敵な楽器の音を聴く機会が、日本より多いことは明らかです。そして、日曜日毎に行く教会などでも、パイプオルガンの音などを聴いて、楽器の音に対する豊かなイメージを日常の中で作っています。

 それに対して、日本人の吹奏楽の音へのイメージは、野球の応援ラッパなど音楽的には貧弱なイメージしかない場合が多く、また、生活環境としての日本の住宅は、障子や座布団など音を吸収するものが多く、音の響きが豊かでない場合が多く見られます。このため、生徒達はまずそんな貧弱な音、響きのない音を基準に音を鳴らし始めます。

 だから、音が出ただけで満足して、
いい音を出したい、よく響いた素敵な音を出したいという意識が希薄な場合が多いのです。

3-2.詰まった音のイメージ

 また、日本の特徴的な歌としての演歌や民謡などでは、喉をしめたような声が良く聞かれます。この感覚が楽器を演奏するときも影響を与えています。

 これにより、硬い音・詰まったような音しか出せない原因のひとつになっています。基礎の基礎(5)でも書いたように、もともと日本語は、喉を開けずに会話しているので、喉が開いた(口の中にピンポン球でも入れたような)状態をイメージすることが出来ないのです。

 外国語の発音にはこのように喉を開いた発音があり、喉を開くというイメージはすぐに掴めるのですが、日本の生徒にはなかなか難しいことです。

 
喉を開いて練習することによって出てくる柔らかな音質の音を、いつもイメージして鳴らす練習を意識させてやる必要があります。

4.リラックス

 これも日本人の特徴でしょう。真剣に取り組む余り、
肩に力が入って体を硬くして鳴らそうとする傾向があります。

 楽器を吹くとき、まず大事なのは、変な音でも音楽を楽しもうとする気持ちです。良い音や、高くて難しい音、早い動きなどは練習すればそのうちに出来てくるようになります。

 それよりまず、楽器を、音楽を楽しむこと、そして、みんなと合わせる時、つまり
合奏する時に最高に楽しんで吹くことを習慣にしましょう。

5.日本人の気質

 譲り合いや謙遜を美徳とする日本人の気質は、音まで謙遜して鳴らして表現力の乏しい音になりがちです。

 気持ちで感じているだけでは音楽の表現にはなりません。いい音のためには、
みんなの前で表現することが大事です。このことが出来るようになるには、演奏の前の段階として、はっきりみんなの前で意見が言えるというような、部員の気質そのもを変えていくことも考える必要がありあます。

 みんなで意見の言い合えるような、
元気な部活動の状態からいい音が生まれてきます。

U.いい耳作ろう
1.いい音楽を聞く

 前章で書いたように、いい音のイメージが貧弱では、いい音が出ません。そのためには、いい耳を育てることが大事です。これは特に大事で、この章でいくつかのポイントに分けて取り扱います。

 まずは、
吹奏楽以外の音楽も聞くことです。吹奏楽が楽しくなると、よくあることなのですが、吹奏楽の演奏ばかり聴いて他のジャンルの音楽を聴かなくなります。

 吹奏楽オタクでは豊かな感性は広がりません。ポップスやジャズ、またオーケストラや合唱曲など、いろいろな音楽から耳を磨きましょう。

2.音の三要素を意識しよう

 音の三要素とは、
音程・音量・音質です。オシロスコープなど器具を使うと音がサインカーブのような波形として表示されます。その波形は、横幅が音程を表し、縦幅が音量を、そして波の形が音質を表します。

 だから、ひとつの音を作るといくことは、どんな音程を出すか、どんな強さで出すか、どんな音色で出すかをいつもコントロール出来るように出していかなければなりません。

 音程と音量は割りと早くから意識しますが、
音色を意識して音を作ることはなかなか出来ません。同じ音程で同じ音量でも、音色を変えて音が出せるようになると演奏の幅が断然広くなります。

 この音色を作るためには耳が中心的な役割を果たします。

3.練習場所は

 意外に
耳を作るのに影響を与えているのが、練習場所の問題です。いつも練習しているところが、よく響く場所なのかどうか、その場所は広いのか狭いのかなどです。

 響きがない場所だと、自分の出している直接音のみしか聞こえてこないので、音を貧弱に感じてしまいます。基礎練習をするときなどには厳密な判断ができますが、一方、旋律を歌わせる練習をする場合はどう演奏しても下手に聞こえてきてイメージを育てられない面があります。

 よく響く場所では、逆に音がうまく聞こえてきて、それで満足してしまう場合がありますが、自分の表現がうまく出来ているかの判断をするには好都合な面があります。

また、狭いところで練習してると音の伸びがなくなる危険がありますし、だだっ広い場所では音が荒くなる危険があります。

4.歌う

 ある時、メロディーの音程がうまく取れないトランペットの生徒に、楽器を置かせて、その部分をピアノで音を聞かせて、歌う練習をしました。そうしてから、楽器でその部分を吹くと、うまく取れなかった音程が直っているのです。

 聞いた音を歌って声にするという行為が、この効果的を生みました。実は、
歌うことは、楽器を吹くことより、はるかに大きなエネルギーで、音程を作るという作業を要求されます。この音に対する能動的な姿勢が、耳を育て、いい音程感を生みます。

 さらに、「2.音の三要素を意識しよう」で、音の三要素を取り上げましたが、今度は音楽を作る時に大切な「
音楽の三要素」というのがあります。それは、「旋律・和音・リズム」です。

 この演奏に関する大切な要素に関しても、歌うことが耳を育てるとともに、さらに追加的な効果も生まれて自然に力がついていきます。吹奏楽部員に歌を歌わせるのは変な感じがするかもしれませんが、非常にいい練習方法ですので是非取り入れてみてください。

4−1 旋律を歌う@

 楽器は、解説書に書いてある指使いをすれば音程は出ます。しかし、それはその付近の音程が出るだけで、正確な音程ではないのです。

 この正確でない音程を、聞く人がきれいな音と感じるような音程にするには、まずその演奏者の耳が、自分の吹いている音が正しく出ているのか判断が出来なくてはいけません。この耳を育てることに、歌うことはとても有効な手段です。

 例えば、メロディーをピアノやハーモニーディレクターなどを使って
基準になる音を出し、その音に合わせて歌ってみる。これだけでかなり音程感は良くなります。

 また、声は音程の微妙な変化を表現することが、楽器を使うより簡単に出来ます。細かな音程の調整を行う力が歌うことによって育ち、大きな課題である純正調を理解していくうえでの基礎力となります。

4−2 旋律を歌うA

 楽譜には音符だけでは書ききれない、音楽の抑揚や強弱の変化などがあります。

 このことがまだ解らない初心者の演奏は、たいていかまぼこ型になります。つまり、どこをとっても同じ音量で、おなじニュアンスで吹いてしまいます。

 しかし、歌ってみることにより、自然に
音楽の抑揚や強弱の変化、フレーズ感などが身についてきます。

4−3 和音を歌う

 声は、チューニングを行うことなく、自然にハモります。

 しかし、吹奏楽部員3人が、例えばドミソと吹いてもハモりません。そこで、まず、歌ってみます。コツは、主音(ド)の上に第5音(ソ)を重ね、最後に第3音(ミ)を軽く合わせることです。こうすると簡単にハモらせることが出来るのです。

 こうして、まず
声でハモった感じをつかんでから、今度は楽器でその音を出してみます。今度は、きれいにハモってますよ。

4−4 リズムを歌う@

 リズムのうまく取れない人、いわゆる「リズム音痴」を治すには時間がかかり、
即効性のある特効薬のような練習はないと言っていいでしょう。

 しかし、その
リズムも歌って練習することによって、比較的早く治ることがあります。その練習のコツは、歌う時に使う言葉を、指導する側と同じにしておくことが大切です。

 具体的に言うと、模範を示すときに、「la」で歌ったら、それをまねする生徒の側も「la」で歌うようにしましょう。違った歌い方をしてると、指導したいリズムのポイントをはずして、直したいリズムがうまく相手に伝わりません。この点を気をつけて練習してみてください。

4−5 リズムを歌うA

 リズムの専門化であるパーカッションの生徒にも、この歌うということは非常に効果があります。歌うことにより、音に表情がついてくるのです。

 4−4とも関係しますが、タンタタ、と歌うか、ダンダダを歌うかは表情に大きな違いがあります。この
表情をどう歌うかで、パーカッションとしての感性が分かります。

 例えば、弾むリズムの得意な生徒は「la」を使う傾向があるのに対して、正確なリズムを大事にする生徒は「ta」を使う傾向があります。この違いを利用して、「la」を使う生徒に「ta」を使って歌わせて正確なリズムのニュアンスをつかませたりすることが出来ます。

 また、歌うと「ブレス」をしなければいけません。この
ブレスを取るタイミングを覚えた生徒の音は生き生きとした表情を出すようになります。

4−6 音の三要素・音楽の三要素

 いい耳を作ろうということで、この章を進めてきました。この耳が育つということは、実は、音楽を聞き取り理解するための耳が育ち、そして、その耳をとおして、
音楽を楽しむための基礎的な力がついてくることです。

 各楽器の教則本や指導書には、いい音の出し方は書いてあるのですが、いい音楽の楽しみ方が書いてある本は、残念ながら少ないのが現状です。

 折角、いい練習をして、いい音が出るようになっても、いい音楽作りが出来ないのでは音楽をやっている意味はありません。車の両輪のように、いい音作りと、いい耳作りの両方を同時に指導する必要があります。

 そして、その音楽作りのための基本は、音の三要素と音楽の三要素です。この基礎力を育て、次の章の、みんなで合奏をすることが出来れば、吹奏楽の、音楽の楽しみをより深く味わうことが出来ます。

V.いいサウンド作ろう
はじめに

 吹奏楽の面白さの中の一つは、いろいろな種類の楽器の音が、混じり合い、溶け込み合い、また、逆に溶け込まずに旋律を浮き出させたりすることなどを通しての音楽作りにあるといえます。最初は、ずれてぶつかりあい、うまく合わなかった音が、練習によって整理され、ブレンドされて味のある音や、表情豊かな音楽が作り出されていきます。この時に、吹奏楽の音楽作りは、素晴らしい感動をともないます。

 その
ブレンドされ、混ざり合った音のことを、ここではサウンドと呼ぶことにします。ここからは、そのサウンド作りに役に立つノウハウです。

 このサウンド作りをするためには、みんなで合奏しながら音楽を合わせていくことが必要で、この時間が大切です。そしてその時間が、合奏する人にとって楽しくなることが、いいサウンド作りにも影響します。

 しかし、指導者が、合奏のときに、どんなポイントに注意すればいいのか、何が悪くてうまく合わせられないのか、が分からなくて戸惑っていると、楽しい合奏にはなりません。そんな時に、この章に挙げたポイントを参考にして、うまく合奏をまとめてください。

 また、生徒の演奏を直すだけでなく、生徒もみんなと合せるためには何が必要かを知り、
楽しみながら一緒にサウンド作りをすることが出来るようになれば、合奏することが単なる合わせるための技術としてではなく、生徒たちの心の中から出てくる音楽作りへと繋がっていくことでしょう。

 ここからの項目は順序を決めていません。思いつくまま、随時、必要な箇所に追加していきますので、必ずしも、最後が最新の追加にはなってないので注意してください。

吹奏楽の音楽作りの全体図

 次にあげるのは、
吹奏楽で必要な練習の形を、指導者・指揮者がその練習にどのように関わっているかを、合奏の人数という軸を観点にして関係を図にしたものです。

 この章で取り上げる、
サウンド作りのノウハウが、指導・指揮する人が充実させていく力と、部活動を進める上で必要な練習内容をつなぎ、その間を埋めていくものであることが、判ると思います。

 この、合奏指導法とでも言うべきものが、個々の指導者の持っている経験には蓄積されるのですが、それをなかなか他の人には伝えにくく、また、初めて指導する人には、すぐには得られないものです。

 しかし、このサウンド作りのノウハウが、広がれば広がるほど、
充実した楽しい練習・合奏ができます。

1. 出だしを合わせる

 吹奏楽には、木管・金管・打楽器といろいろな種類の楽器があり、それぞれ音を出すための準備の仕方が違います。しかも、金管楽器という同じ種族の楽器でさえ、マウスピースの大きさの違いや、管の長さの違いにより、大きい楽器ほど早く音を出すための準備をしなければいけません。

 このため、何も意識せずに吹いたのでは、出だしの音は合わないのがあたりまえです。

 では、
出だしを合わせるにはどうするか。音を出す準備の時から合わせればいいのです。

 音を出す準備、つまり、
みんなで同じブレスをしましょう。出だしを指揮者の棒の動きに合わせようなどということに注意を払うより、みんなで一緒に同じブレスをして音を出せば、直ぐに合います。

 もちろん、演奏のために息のいらない打楽器も同じようにブレスをするんですよ。

2. 長さを合わせる

 指揮者は1拍目を上から下に向かって振り下ろして表します。ですから、1拍目の開始位置は指揮棒を上げたところです。

 しかし、実際に音が出るポイントは指揮棒が下におりたところです。つまり、開始の指示は上で出ているのに、実際に音の出るところはそこから半拍遅れているのです。

 ということは、実際の
音の長さは指揮の指示の終わりより、半拍ほど長く吹かないと正しい長さで演奏していないということです。

 この点に注意して、基礎練習で長さを合わせる練習をしましょう。

3. チューニングを合わせる

 なかなか、合わないのがチューニング音だと思っておいたほうが良いでしょう。そして、合わないのを気にしだしたら、キリがありません。でも、合わせないといけない音です。

 まず、楽器の演奏技術として、均一な音程が出せることが前提条件です。そのためには、
しっかりした、いい音で吹くことが大切です。しかし、基準になる音を聞きながら合わせようとするので、気持ちがどうしてもその音へ行ってしまいます。そして、基準音につられて、自分の吹いている音が不安定な音になっている場合が多いのです。こうなったら、合うものも合ません。

 均一な音を出すことは、楽器の吹き方の基礎ですから、教則本等を参考にして練習しましょう。

 まだいい音が出せない、どうしても基準音につられてしまう場合には、特効薬ではないけど効果のある方法があります。
響きの中で合わせるという一種のコツと言ってもいいものです。

 合わせたい音と五度の関係の音(例えばドとソ、またはドとソとドとオクターブを重ねてもよい)を同時に出して、その響きを基準に音を合わせる方法です。五度の響きが、音を聞きやすくしてくれて、合わせやすい効果を生みます。

4. 音の名前を合わせる

 吹奏楽には移調楽器というのが沢山あります。その楽器の「ド」の音が、実際に演奏される音としては「シのフラット」になったり「ファ」の音に鳴ったりする楽器です。

 そのため、楽譜に「ド」の音が書いてあっても、吹く楽器によって出る音が違っていることになります。これが、みんなで合わせるときに、勘違いを起こして混乱の元になってしまいます。

 そこで、一工夫。
楽譜に書いてある音と、実際に出ている音を区別して呼びましょう。

 例えば、楽譜に書いてある音を指摘するときには、
「ドレミ….」(階名)を使い。実際に出ている音(実音)は、英語読みもしくはドイツ語読み「C,D,E,F,G,A,B,(H)」として、使い分けるのです。

 こうして、指示を出す音が正確に伝わるようにしましょう。

 最初は、部員も迷いますが、自分で実音として音を読めるようになると、部員の楽譜に対する関心や読みが深くなって、思わぬ効果を上げることがあります。

5. 和音を合わせる

 和音をうまく合わせるコツです。第2章の4−3でも書きましたが、まず、
歌って声で合わせる練習をしましょう。

 声は、純正調で重なった和音の響きを確認することが出来ます。この時、注意することは、しっかりした声で合わせることです。小さな声、かすれた声ではこの感じは分かりません。

 
音を出す順番は根音、第5音、第3音の順です。まず、根音と第5音で完全5度の響きを作った上に、第3音を重ねます。長3和音の場合、平均率より半音の約1割ほど音程を下げたところが純正調で合うポイントです。

 でも、こんなことを知らなくても、
声だと感覚的に合うポイントが分かります。だから、この方法が有効なのです。この時、第3音の音量を少し小さめにすると、よりきれいに響きます。

 この、和音が合っている感覚を耳で覚えてから、楽器を使って同じ手順で音を重ねていくと和音を合わせる感覚が身につきます。


6. 発音を合わせる

 合唱部では普通の練習ですが、吹奏楽で「発音を合わせる」というのは奇妙な感じがするかもしれません。しかし、この発音という問題は吹奏楽にとっても大切な基礎的な要素です。

 例えば8分音符3つを、「タタタ」と吹くのか、「タッタッタッ」と吹くのか、「ダダダ」と吹くのか、と言った
音の表情の違いを表現することが発音を合わせるという意味です。

 楽譜には、音の高さや長さはほぼ正確に書いてあるので見れば分かることが多いのに、この音の表情に関しては楽譜から演奏者自身や指揮者が読み取らなければならない場合が多く、次章の指揮編でも扱う問題です。

 ここでは、基礎編として、
一つの音符にスラーやスタッカート・テヌートなどいろいろな表情をつけて基礎練習をする必要があることをあげておきます。

 このような練習は、取り入れてやること自体は、むつかしいことではないと思います。しかし、この練習が、単に音符に書いてある記号を合わせる練習という意味だけでなく、
音楽の表情つけという演奏法に必要であることを見据えて練習しましょう。

7. リズムを合わせる

 
リズムがうまく合わない初心者に対する対処法です。

 楽器を吹き始めたころには、楽器を吹くことに力んでしまい、他のことなど気にすることができずに、うまくリズムを合わせられないことがあります。こんな時に有効なのが、体を使うことです。

 例えば、行進曲のような曲を演奏するときには、
実際の足踏みをしながら演奏してみると、演奏の力みからも開放されますし、体を使ってリズムを感じることもできます。

 具体的には、まずは、座った状態で、いつもは足先だけ動かしてリズムを取っているのを、足ふみに変えてみましょう。これで慣れたら、その場で立ち上がって足踏みしながら演奏してみましょう。これで、リズムのノリはかなり良くなってきます。

 耳でリズムを聞くことも大事ですが、
リズムは体で感じるのが一番のようです。

8. 弦楽器のイメージ

 吹奏楽で弦楽器の話をするのは、変に感じるかもしれません。しかし、優れた吹奏楽の曲の中には、例えばジャズのスタイルやラテンの響きをイメージして書かれている部分があるように、弦楽器の音色や奏法をイメージして書かれている部分が含まれています。そのような部分を演奏する場合に注意が必要です。

 なぜなら、管楽器は息を送るのを止めたとたんに音が切れます。しかし、
弦楽器は弓が弦を離れてもすぐ弦の振動は止まらないので、少し音が残っています。

 この特色により、管弦楽曲を吹奏楽用に編曲した曲はもとより、管弦楽曲のような響きのする曲(弦楽器の音をイメージして書かれた曲)は、吹奏楽で演奏する場合、
音符を実際より少し長めに演奏しないと弦楽器の雰囲気はでません。

 また、弦楽器の音の出だしは、ゆっくり膨れ上がるように出る音と、弦をひっかいてすばやく立ち上がる音など、いろいろな表情を出すことが出来ます。

 ですので、
音出だしの部分についても、工夫してそのイメージに合った、音の立ち上がりにすることも注意点です。

9. 音程の不思議

 世界標準音の「ラ」の音は、周波数でいうと440ヘルツです。
 オクターヴ上の「ラ」の音はその倍の880ヘルツ。そして、オクターヴ下の「ラ」の音は半分の220ヘルツ。

 すると、ここで不思議なことが起こります。つまり、標準音から1オクターヴ上の周波数幅は、880−440=440ヘルツだけど、標準音から1オクターヴ下の幅は440−220=220ヘルツになります。

 計算が分かりやすいように、極端にして言うと、標準音より上の1オクターヴは、440ヘルツを12等分したものが半音であるのに対して、下の1オクターヴは220ヘルツを12等分したものが半音になります。つまり、
上の音ほど半音の幅が広くなります。

 このことは、1ヘルツ周波数がずれると、1秒間に1回うなりが増えるので、間隔の数値が広いほど、うなりが生まれやすいことを示しています。

 つまり、
高い音ほど音程を正確に取るのが難しいことを表わしています。

10. 録音の不思議

 いい演奏を聞くことは大切です。しかし、それを
真似して演奏してみようというのは止めましょう

 特に、ライブ録音ではなく、CD等を作成するために録音された演奏を真似するのは危険です。CD等を作成するために録音された演奏は、マイクを何本も立て、そのマイクの音をミックスして出来た演奏です。

 ということは、楽器のソロがあった場合、他の楽器の音量を落として、ソロの楽器のマイクから入ってきた音量を上げるというようなことが可能です。

 つまり、
実際の演奏では出来ない表現が可能なわけです。ライブ録音にしても、録音するマイクの位置でかなり演奏の印象は異なっています。

 このように、
録音された音は、なんらかのフィルターを通して出てきた音です。演奏は参考にしても、その演奏のように演奏する必要はありません。

 
自分の今聞いている音を大事にして、いい演奏を心がけるようにすることが大切です。

W.いい音楽作ろう
はじめに

 この章では、「Vいいサウンド作ろう」で挙げた「音楽つくりの全体図」の「サウンド作りのノウハウ」以外の残りの部分を整理していきます。

 つまり、指導者・指揮者が考えていかなければいけないスキルとしての、スコアの読み方(
スコアリーディング)と指揮棒の振り方(バトンテクニック)。

 それと、クラブ全体がうまく動いていき、みんなが上達していく、そして楽しく曲を作り上げていくための
練習方法(個人練習・パート練習・セクション練習・合奏・アンサンブル)を組み立てていくための考え方です。

1.指揮編
1-1. スコアの読み方(スコアリーディング)
はじめに

 「スコアリーディング」の本来の意味は、指揮者がスコアから
音楽を読み取り、その音楽を分析して演奏のための準備をすることです。プロの指揮者は、この「スコアリーディング」に、多くの時間を費やしています。

 しかし、吹奏楽部や合唱部の指導の準備ために多くの時間は取れないですし、そもそも、「スコアをどうやって読めば」と最初から戸惑います。

 しかし、やはり、少しでも事前にスコアに目を通しておくと、
効率の良い練習が出来ます。それより、スコアから音楽の面白さを発見した時の感動は、他では得られないものとなります。

 ここでは、スコアを読むための基本的な考え方のポイントを挙げていきます。そんなに時間をかけずに出来ることを中心にしていますので、是非、練習の前に、スコアを読んで見てください。


1-1-1.スコアの読み方(1) 

 まず、スコアから
音楽の三要素を探し出しましょう。

 音楽の三要素とは、U―4で取り上げたように、
「旋律」・「和音」・「リズム」です。どのパートに旋律があり、それを他のパートが和音やリズムで支えているのかを見つけ出しましょう。

 ついでに、旋律に絡みついている
「対旋律」がある場合は、それもチェックしておきましょう。

1-1-2.スコアの読み方(2) 

 次に見ておく点は、
同じ動きをしているパートを探しだすことです。

 三要素のそれぞれが、どのパートの組み合わせて動いているのかをチェックします。

 もちろん、練習ではそれらの同じ動きをするパートがずれていないか、よく聞いて合わせる必要があります。

1-1-3.スコアの読み方(3) 

 今度は、反対のことです。

 吹奏楽の演奏者は、演奏する時にはパート譜しか見ていません。そうすると、例えば、木管はクレッシェンドしてるのに、金管はデクレッシェンドしているというようなにスコアに書かれている場合、演奏者はそんなこと意識せずに演奏しています。

 スコアでしか、その情報を確認できません。
違った動きをしているところも確認しておきましょう。

1-1-4.スコアの読み方(4) 

 次に、
三要素それぞれの息継ぎを考えておきましょう。

 生徒は、うまくなっていけば、自分で息継ぎの位置を考えて、美しく演奏してくれます。しかし、クラブではどうしても1年から3年までが一緒に活動するため、演奏力に差がでます。

 その差に合わせて、息継ぎを
多めに設定したり、また、力を伸ばすために適正な息継ぎの配置で必ず演奏するよう指示したりする工夫が必要です。それを、スコアを見るときに考えておきましょう。

 もちろん、決めた位置を、個人練習やパート練習で、
事前に合わせる練習も必要ですが。

1-1-5.スコアの読み方(5) 

 ここまでは、分析的に曲を見てきましたが、今度は、
曲の全体をつかんでおきましょう。

 曲には、
形式というものがあります。この、形式というのは、文章で言えば、起承転結に当たります。これを意識しないで文章を読んでも、文章の意図をつかみにくいように、音楽でも、ひとつの曲としてのまとまった大きな流れを、つかむことは出来ません。

 だからと言って、あまり、厳密にこれをやろうとすると、第一主題がどうの、第二主題がどうのと、かなり専門的になり、かえって分析的になって、細部にだけ目が行ってしまってしまい、「木を見て森を見ず」になってしまいます。

 そのため、「この曲は『早い・遅い・早い』で出来ている」とか、「旋律は3種類ある」とか、
大きな流れをつかむことをまず心がけましょう。そのほうが、曲全体を把握するのに役に立ちます。

1-1-6.スコアの読み方(6) 

 では、音楽の三要素、それぞれをスコアから読む時のポイントです。まず、
「旋律」です。

 旋律を見るときは、
旋律の重なりを注意しておきましょう。

 吹奏楽の場合は、高音楽器に旋律が来た場合、よく、そのオクターブ下で音を重ねます。この方が、断然、響きが安定します。ですので、
どの楽器と、どの楽器が重なっているのか、チェックしておくといいでしょう。

 しかし、間につなぎの楽器がなく、
2オクターブ以上離れて旋律が重なっているときは、特殊な効果を狙っているときだと考えられます。例えば、フルートとユーフォのみが、旋律を吹いているというような場合です。間に、サックスなどが重なっていると響きは安定するのですが、そうでない場合は、作曲家がこの不安定な感じを必要としていると考えていいでしょう。

 合唱の場合は、音域がそんなに広くないので、オクターブの重りを見るより、
ユニゾンの所をチェックする必要があります。

 ユニゾンは全員が同じ音程を歌うので、音程は取りやすいのですが、
音質まで合わせて、完璧に仕上げるのは、なかなか、難しい事です。また、ユニゾンの所とその前後の和音が鳴っている所のバランスを整えるのも工夫がいります。ですので、合唱では、ユニゾンの箇所をチェックしておきましょう。

1-1-7.スコアの読み方(7)

 次は、
「和音」をスコアから読む時のポイントです。

 そのポイントを一言で言えば、
低音に注意です。例えば、トロンボーンに「ドミソ」の音が鳴っているときに、バスが「ド」の音を鳴らしているのなら、これは「ドミソ」の和音で問題ないのですが、「ラ」の音を鳴らしている場合があります。これだと、合わせて、「ラドミソ」という和音になります。これによって、和音の種類が変わってしまいます。

 合唱の場合も、同じようなことが声と伴奏の間で起こります。合唱は、3つないし4つの声部で判断する場合が多いので、和音の判断は簡単なように思えますが、声で「ドミソ」の音が鳴っているときに、伴奏の音に「ラ」が入っていたりします。

 ただ、厳密に言えば、「ドミソラ」という和音なのか、「ラドミソ」という和音なのか判定する必要があるのですが、いずれにせよ、単なる長三和音でなくなってしまいます。

 明るい長三和音、シックな短三和音、開放的な増三和音、緊張感のある減三和音、基本になるこの
四つの和音を判定する時に、低音に注意しながら、どの和音になるのかを読み取って下さい。

1-1-8.スコアの読み方(8)

 
「和音」をスコアから読む時のもうひとつのポイントです。

 基本的な和音は、三度を二つ重ねて作りますね。ところが、この重なって出来た三つの音が作り出す音程(三度・四度・五度・六度)のうち、完全に協和して響くのは四度と五度だけです。

 理論的に言うと、四度と五度(一度と八度もそうなのですが)は、
完全協和音程ですが、三度や六度は、不完全協和音程と言います。三度や六度には少し濁りがあるのです。

 この
五度と四度が、曲の中のどこにあるかを見ておきましょう。

 この完全協和音程の
五度や四度がちゃんと合うと、それだけで大きなパワーを出す場合があります。他の音との関係によっては、バランスが崩れてくる場合があります。

 
合唱の場合にその効果は大きく、混声合唱の場合で、男声にこの音程が響いている場合には、特に注意が必要です。

1-1-9.スコアの読み方(9)

 
「リズム」をスコアから読む時のポイントは、組み合わせの妙を見ることです。

 リズムは、いろいろな組み合わせで構成されます。ポップス系の曲の場合には、リズムをドラムが一人で演奏している場合もありますが、それでも、スネア・ベース・シンバルなど
いろいろな楽器が組み合わされています。

 音に注目して、基本の四拍子を考えてみても、1小節の四拍の中には、表拍と裏拍を合わせて8個の音があります。この8個の音を組み合わせるのに、表の拍を大太鼓・裏の拍を小太鼓という単純な組み合わせから、1拍目と2拍目の裏と3拍目はバス、2拍目の裏と3拍目の表と4拍目はホルンなど、と組み合わせはいろいろ出来ます。

 その上に、アクセントをどこにつけるかでも、その8倍変化があり、それらの変化の組み合わせは数え切れません。

 その曲が、
どんな音の組み合わせで、どんな楽器の組み合わせで、リズムを構成しているのかを見ていきましょう。

1-1-10.スコアの読み方(10)

 吹奏楽の場合、いろいろな楽器が使われます。そして、その楽器の中に
移調楽器と呼ばれるものがあります。移調楽器とは、その楽器の「ド」を吹くと、ピアノの「ド」ではなく、違った音が出る楽器のことです。例えば、クラリネットは「シのフラット」が出ますし、アルトサックスは「ミのフラット」が出ます。

 これらは、その楽器が発達してきた過程で、その音を基準にして楽器の大きさなどを決めたほうが良い響きになるので、自然とそのように楽器が発達してきたためです。

 楽器の「ド」とピアノの「ド」がずれているので、実際になっている音は何なのか、スコアを読む時に
読み替えが必要になってきます。Bb(変ロ)、Eb(変ホ)、F(へ)が、主に出てくる移調楽器の調で、たとえば、Bb(変ロ)「シのフラット」が基準になっている楽器は、「ド」と1音(二半音)離れているので、実際になっている音というのは1音低く読みかえる必要があります。

 このように読み替えた音は、V-4で書いたように、
記譜上の音と実際の音の名前を区別して読む習慣をつけるといいでしょう。

1-2. 指揮棒の振り方
1-2-1.指揮棒の振り方(1)

 よく指揮棒の振り方を習いたいという人がいますが、指揮棒の振り方はそんなに問題ではありません。「
習うより慣れろ」、で対応できます。

 プロの指揮者ならば、指揮棒から演奏している音楽に対する指示が出ることが要求されますから、棒を振る練習は大切でしょう。それでも、その棒の振り方が最優先ではありません。

 まして、部活動での指揮者は、棒を振る訓練をするわけではないのですから、そんなに振り方を気にする必要はありません。それより、
指揮棒を振ることに気を取られてしまって、大切な音楽の流れが潰れてしまっている場合があります。

 部活動での指揮は、
かっこよく振るより、わかりやすく振ることが出来るようになればいいのです。

1-2-2.指揮棒の振り方(2)

 基本は、
音楽の教科書に載っているような振り方で十分でしょう。

 あまり小さな動きは気にせずに、描いている図形が相手からはっきり見えるように動かせばいいのです。複雑に動かせば動かすほど、指揮は見にくくなります。シンプルに振る、極端な場合、三拍子なら、「三角形」を描いても音楽は表現出来ます。

 一度、鏡の前で自分の指揮棒の動きを見てみるといいでしょう。注意するところは、自分で思ったより、縦または横方向に図形が伸びたり縮んだりしていませんか。

 図形の
バランスが悪いのは、図形の形が悪くなっている付近で腕の動きが一定の速度で動いていないからです。

1-2-3.指揮棒の振り方(3)

 図形の形を見ていてきれいにするには、まず、
一定のテンポを維持する練習をすればいいでしょう。

 メトロノームで出したテンポを覚えてから、メトロノームなしで振り始めます。30秒くらい後で、もう一度メトロノームを鳴らしてみると、腕の動きとたいていずれています。腕に力が入っているほど、ずれはおおきくなりますから、
リラックスして振ることが大切です。

 まずは、レガートな一定の速度で腕が動かせるように心がけましょう。図形の大きさを変えながら、この一定のテンポを保つ練習をすれば、強弱の変化に対応できます。

1-2-4.指揮棒の振り方(4)

 
練習の時に注意することは、手首とひじです。

 手首が必要以上に曲がっていませんか?ひじを張りすぎて、脇があいていませんか?この2つとも、指揮棒と、ずれた動きをしてしまう場合があります。

 まず、ひじですが、棒の先と違った動きをしていまい、演奏者にとって指揮を大変見にくい状態になることがあります。脇を軽く締めて、あまり動かないようにして一定のテンポを出してください。

 手首は、テンポ感の微妙な表現をする時には必要なのですが、基本練習の時に大きく動かす必要はありません。
 
 こちらも、リラックスした状態で
レガートな動きをマスターして下さい。

1-2-5.指揮棒の振り方(5)

 もう一つ注意しなければいけないことがあります。基礎編の「長さを合わせる」でも書いたように、
指揮棒は演奏される音楽より先に動いていると言うことです。

 指揮棒の1拍目は、棒を上に上げた時が開始位置ですが、実際に音の出るのは棒を振り下ろした瞬間です。つまり半拍後なのです。指揮棒は半拍前に動いて、演奏者への指示を出しています。

 しかし、指揮をはじめたころは、どうしても音楽と一緒に指揮棒を動かしてしまいます。これでは、音楽を後追いしてしまっているのです。

 
演奏される音楽より、半拍早く音楽の指示を出す。(場合に寄れば、もっと早く)これが出来るようになれば、基本的な棒の振り方は出来上がりと言っていいでしょう。

1-2-6.指揮棒の振り方(6)

 次は
左手の動かし方です。(サウスポーの方、ごめんなさい。ここでは、右利きの方を前提に書きますので、左右を読み替えてください。)

 左手は主に
強弱などや音楽の表情に指示によく使われます。しかし、その指示が無意味な動きをして、かえって指揮を見る人から邪魔になっている場合が見受けられます。

 まず、それを避けるには、今まで書いてきた基礎的な振り方で、
左手を動かさずに、右手だけで振ってみましょう。右の手だけで、テンポや強弱や表情など、演奏者に指示しなければならない事を、振れるようにしてみましょう。その後で、右手だけで表現し切れなかったことを、左手を使って指示を出してみましょう。

 こうすることで、左手の無駄な動きの多くは避けられます。音楽の表情を伝えたり、パートに入る指示を出したり、
左手の動きは大切なのですが、まずは、わかりやすく指示が出るように心がけて、左手の動きが出来るようにして下さい。

1-2-7.指揮棒の振り方(7)

 もう一つ、左手の使い方で大切なのは、
音を止める方法です。これは、右手では、行う事の方が難しいので、左手の得意分野といえるでしょう。

 曲の最後では、右手も使って問題ないのですが、曲の途中であるパートの音を止めるというような場合には、右手は音楽の流れを維持しています。このため、その
流れを維持しながら、なおかつ音を止める指示を出すというのは、とても難しい作業です。

 そこで、左手の登場となります。右手は、テンポを維持しつつ、左手で音を止める位置を指示する。このような、共同作業が必要になってきます。

 慣れれば、右手と左手を違った動きを自然にできるようになりますが、うまく行かない場合は、どちらかの手で2拍子、他の手で3拍子という風に、
異なった手の動きの練習をすると、その動きがやりやすくなります。

1-2-8.指揮棒の振り方(8)

 最近の吹奏楽曲には、変拍子を使った曲が多く見受けられます。この、
変拍子の振り方の説明です。

 以前、ホルストの「木星」の5拍子の部分を、一筆書きの星の形にして振っているのを見たことがあります。発想としは、面白いですが、大変見にくい指揮でした。

 変拍子を振るのに、このように考えすぎる必要はありません。基本の2拍子や3拍子を振ることが出来れば出来るのです。

 5拍子を例にあげると、指揮譜をよく見てみると
5拍子は2拍子と3拍子、または3拍子と2拍子で書かれています。

 どちらのパターンになっているのかは、
アクセントの位置に注目しなくてはいけないので、出てくる拍子の順序は間違えないでください。

 この順番が分かれば、5拍子はその順序で2拍子と3拍子に分けて振ればいいわけです。7拍子なら、3+4や2+3+2などに分かれています。

 このようにして、
基本の振り方を組み合わせれば、変拍子を振ることが出来ます。

1-2-9.指揮の最初を見る

 指揮棒を構えて振り上げた時は、演奏者は割りと指揮者を見ているものです。

 しかし、
いざ指揮棒を振り下ろすと、その瞬間、演奏者の目は楽譜の方に行って、指揮者を見ていません。これでは最初の音は合わないし、指揮をしてても虚しい限りです。

でも、指揮者も、演奏者が指揮の最初を見ていないことに気がついていない場合があります。つまり、同じことが指揮者の側にも言えるのです。指揮を「見ろ!見ろ」と言いながら、指揮棒を振り下ろす瞬間に指揮譜の方に目が行ってしまい、
演奏者を見ていないのです。

 最初の一音にはしっかり注意を払いましょう。当たり前のことですが、演奏者と指揮者がちゃんとコンタクトが取れるよう、練習をしておくことが大事です。

1-2-10.経過が大切

 練習をいかに仕切るのかが、指揮者です。指揮者のもっとも大事な仕事は、演奏会の時に指揮をすることではなく、その
演奏会に、演奏者が自信を持って演奏できるよう準備するのが、部活動での指揮者の役割です。

 そのために大切なのは、それまでの合奏練習の時間です。合奏の時にどんな練習をしたのか、どんな風に演奏者の音を引き出して音楽作りをしたのかが、大切です。

 曲を完成させるまでの練習計画、どのくらいの時間と回数が必要で、どのくらいの期間で完成させるのか、等の仕上げるまでの経過をちゃんと把握して
練習の流れを作っていきましょう。

1-2-11.練習テンポはメトロノームで

 テンポをそろえようと、一所懸命に棒を振る指揮者がいますが、これは必要ありません。

 指揮者が
演奏者に伝えなければいけないテンポは、「テンポの変化」のみです。

 ですから、一定のテンポを確保した合奏練習をするなら、棒を振ることに無駄にエネルギーを使うより、その分、
指揮者はちゃんと音楽を聞いて、どこが合っていないか、どのパートがずれているのかなどをチェックしましょう。

 だから、そんな練習の時には、テンポの指示はメトロノームに任せておきましょう。

1-2-12.基礎練習も大事

 合奏練習では、すぐ曲を吹きたくなるものですが、基礎合奏練習も取り入れましょう。

 例えば、演奏する曲の調の音階練習とか、三連符が多い曲の時にはそれを合わす練習等を入れることは、常に考えておくべきです。

 合唱部の場合、基礎練習は発声練習として全員で集まって行う場が多く、全体での基礎練習は毎回の練習の中に組み込まれています。したがって、全体としての音の均一性や表情の同一性などは、その練習の中で作られていきます。

 しかし、吹奏楽部の場合は、楽器の特性により、その楽器の独自の練習をする必要もあって、
基礎練習は各パートにまかせきりになる傾向があります。この楽器の特性が、吹奏楽の面白い点でもあるのですが、その奏法の違う楽器を合わせて全体の音色などを、いいものにしていくには、やはり全体での練習が必要です。

 この基礎合奏練習は、指揮者が
意識して練習の中に取り入れる注意を払うべきです。

1-2-13.音をだしてあげよう

 「その音程は違ってるから直して」とか「その音、もっと高く」とか指示を出す場合があります。その指摘は必要なのですが、その言葉だけで直るならプロ並みの演奏者を相手にしているようなものです。

 演奏している人が、どのように違っているのか、
どれくらい違っているのかを分かるように指示してあげましょう。

 指揮者のそばに、ピアノやハーモニーディレクターなどを置いて、その場で音を出して確認すべきでしょう。

 「どう違ってるのか分からないけど、なんか変」と感じた時も、そうです。どのように外れているのか判らないからといって、直すように指示だけ出して済ませるようでは、それこそ指揮者としての仕事をしてません。その場で、音を出してみて納得できる音程感を作っていきましょう。

 大切なのは、音程が合ってるかではなく、
いかに合わそうかという意識が働くことです。そのために、違っていることを指摘したら、合わせる方法を演奏者と一緒に考えていくことです。

1-2-14.吹いてる人を見よう

 指揮譜は大切で、そこから読み取った音楽を作り出さなければいけないので、しっかり指揮譜を見ましょう。

 しかし、この言葉は意味が深くの、
楽譜を読まないで、見つめているだけになってはいませんか。

 合奏練習の最初の段階では、指揮譜に書かれた音が、ちゃんと吹けているかどうかを確認するため、指揮譜を見ながらの練習が必要です。しかし、曲を仕上げる段階になったら、指揮譜から離れていかないと、いい音楽になりません。それは、指揮譜に書いてある音を実際に音楽にするのは演奏者です。その演奏している人と、一緒に音楽作りをするべき指揮者が演奏者とコミュニケーションを取らずに、指揮譜とにらめっこでは音楽作りは出来ません。
 
このことの意味はすぐ分かると思いますが、実際の指揮をするときにはなかなかできないのが現実です。

 部員も頑張って演奏してるので、
指揮者も曲の初めから終わりまで、指揮譜を見ずに演奏者だけを見て指揮をする練習をしてはどうでしょうか。

1-2-15.イメージを伝える

 ドラクエというゲームに、魔法の強さを表す表現として、メラ・メガ・メガンテなどと順に強くなる火の魔法があります。

 このゲームが流行った時、「その音じゃメラだ。そうじゃなくてメガンテで吹いて」と言ったとたん、生徒の音が変わり、きらびやかな音をして、その曲のニュアンスを素晴らしく変えてくれるようになりました。

 生徒たちは、プロの演奏者ではないので、この音をフォルテでと指示を出しても、どのくらいフォルテなのか、どんなフォルテなのかを自分でイメージして作り出すことは、すぐにはできません。

 指揮者は、その手助けをしてあげる必要があります。
音楽の持っているイメージを演奏者に伝え、それを音として表現することが大切です。

 そのためには、単なる音楽用語のみではなく、
イメージが伝わりやすい言葉を使うことを心がかけましょう。

1-2-16.場所を変えて聞いてみよう

 
指揮台の位置だけでなく、いろいろ位置で演奏を聞いてみましょう。(「合唱部を楽しむ」X―3参照)合唱では、演奏者の配置を変えることによって、違った響きが聞こえてきて、それが演奏者の耳を鍛えるのに大変役立ちます。

 吹奏楽の場合は、簡単に配置を変えることは出来ないので、指揮者のほうが聞く位置を変えてみましょう。

 後ろで聞いてみる、チューバの側で聞いてみる、パーカッションの中で聞いてみるなど、聞く位置で違った響きが聞こえてきて、バランスの調性や指揮台の位置では聞こえなかった演奏の間違いなども聞こえてきます。

 また、案外、演奏の欠点がはっきり分かるのは、部屋の外で聞いてみることです。ちゃんと鳴ってない音は、演奏者の近くでは聞こえても部屋の外には聞こえてこなかったり、倍音の少ない硬い音は、音程が不安定になって聞こえてきたりします。

 指揮者の立場だけでなく、
演奏者や聴衆の立場にも立って曲作りを心がけましょう。

1-2-17.記号に注意

 楽譜に書いてある音楽用語をしっかり読むのは指揮者として当然の行為ですが、演奏する側は、このことをなかなかやってくれません。

 速度記号などは、授業で習ってある程度知っていることもあって、注意を喚起すれば次からは気にするようにはなるのですが、
表情記号などには注意を払いません。調べないと分からない、どこを調べればいいのか分からない、という理由もあって、なかなか理解が進みません。完全に無視して演奏していても平気な場合も多くあります。

 しっかり、読み取る習慣をつけてあげましょう。小さくていいので、
楽語辞典や音楽理理論書は必ず1冊は揃えたいものです。

 また、注意するようになっても起こる落とし穴と言える、人間の心の不可思議があります。それは、
矢印のクレッシェンドには反応するのですが、cresc.という表記には反応しないと言うことです。

 これも、記号に注意を払わない習慣から来ていることです。こんな場合は、楽譜のcresc.のところに、大きな矢印を書き込ませておくのも一つの解決策です。

1-2-18.音色に注意

 ある程度いい音がしてきて、音程のとり方も良くなってきたのに、
和音がちゃんと合わない、ということはよくあることです。

 これは、
音の三要素がうまくかみ合ってないからです。音の三要素、「音程・音量・音色」、この3つのうち一番合わせにくいのが音色です。

 合唱部の場合は、みんな同じ人間の声ですので、母音を合わせれば音色が合ってきて、うまくいくのですが、吹奏楽の場合はそれぞれの楽器の音色が違うため、合わせるのは大変です。

 しかし、
音色を決めるのは音の立ち上がりの瞬間なのです。その例として、オーボエの音とトランペットの音を録音し、音の出だしの部分をカットして聞かせたところ、どちらの音か判断できなかった、という実験がありました。

 つまり、出だしの部分では音色の違いというのは大変目立つのですが、伸ばしている音の部分ではあまり違いは出ません。この点を利用して、出だしの音の濁りにはまず目をつぶって、
伸ばしている音で和音を合わせる練習をしましょう。

 そして、この時に音色を合わせるとはどんなことなのかを感じ取ればいいのです。まず、同属楽器で、それから近い種類の楽器と、そして金管・木管混じってと進めましょう。この
音色についての感覚がちゃんとついてくれば、出だしから合わせられるようになってきます。

1-2-19.長さに注意

 
練習を重ねていると、最初には注意を払っていたのに、だんだん楽譜の読み方が甘くなってくることがあります。演奏する者の慣れや、息の使い方が甘くなってくることが影響して、音が変わってきます。

 そのうちで影響の大きいものの一つが、
長さ短くなってくることです。最初は、「この音は2拍伸ばすんだ」と注意して演奏していても、慣れてくると長さが足りなくなることがよくあります。

 特に、あるパートは3拍伸ばしているのだけど、他のパートは1・2拍目を伸ばして3拍目に音が変化するなど場合、音の長さが足りなくなって、
フレーズの最後の和音がつぶれてしまう場合がよくあります。

 指揮者が注意を払ってあげる必要があります。


1-2-20.音量に注意

 これも練習をしているうちに音楽の形の崩れてくる例と言ってもいいでしょう。原因はもちろん、音量への感覚が甘くなってくるということです。

 クレッシェンド場合は、注意すればすぐ直る場合が多いのであまり問題にはならないですが、
デクレッシェンドが甘くなって強弱の差がはっきりしなくなってきた場合は、ちゃんと直す必要があります。

 
弱いけれど、しっかりした音でハーモニーなどを作る事は、少なからず集中力がいります。なので、ただ単にデクレッシェンドする練習を繰り返すだけでは、その時には出来てもすぐ元に戻ってしまいます。

 ですので、こんな場合は、
最初に行き着いた先の「p」などの弱い音を作って、その音をちゃんと鳴らせるように練習します。それから、その音量を目指してデクレッシェンドをつける練習していい音楽作りをしましょう。

1-2-21.クレッシェンドの形

 クレッシェンドの意味は、「だんだん強く」です。しかし、実際の演奏ではこの
「だんだん」という言葉を工夫しないと、いい演奏に聞こえません。

 その工夫とは、クレッシェンドの形に注意を払うことです。まず、
一定の割合で強くするという本来の意味の形、次に、最初の変化を少し抑えて後半特に変化をつけるトランペットのベルのような形、それの反対の最初に変化を大きくして後はなだらかに大きくする釣鐘を横にしたような形、この3つが代表的な形でしょう。

 使われる割合は、経験的に、5割くらいがトランペットの形で、後の3割が本来の形で、最後の2割が釣鐘型だと思います。

 曲の状況や使われている楽器などによっても、どの形が効果的か変わる場合があります。

1-2-22.リズムの形

 たぶん、カラヤンの初来日の時だった思うのですが、日本のオーケストラを指揮した後、日本のオーケストラに対する技術的問題について話している映像を見たことがあります。

 その中で、「音階の第2音(レ)の音が低くなる」というのと、「付点八分音符のリズムが三連符に近くなる」と指摘しているのを聞いたことがあります。

 
タッカのリズム(付点8分音符と十六分音符)が、三連符の前二つの音にタイのついた形のようになる傾向が強いという話です。

 この二つの
リズムの違いが、ちゃんと表現できているか、必ずチェックしましょう。

 日本人のリズムの甘さの特徴です。

1-2-23.指揮棒を使う、使わない?(1)

 オーケストラや吹奏楽を指揮するときには指揮棒を使いますが、合唱を指揮するときにはあまり指揮棒は使いません。これには、理由があります。

 まず、
人数の問題です。前者は人数が多い場合が多く、また、楽器を持っているために座る場所を広く取り、広い範囲に指示を出す必要があります。

 これに対して、合唱は比較的、少数な場合が多く、場所も広く取りません。

 このため、吹奏楽など場合は、指揮の動きをはっきり示すために指揮棒が必要です。

 ですので、
合唱の場合でも人数が多いときには、指示を隅々にまで伝えるために、指揮棒を使うことを考える必要があります。

1-2-24.指揮棒を使う、使わない?(2) 

 もう一つのポイントは、
歌詞が「ある」か、「ない」かです。

 歌詞のない
楽器への指揮の場合、音の出るポイントを明確にする必要があり、それを示すには指揮棒を使う方が効果的です。

 それに対して、合唱の場合は、歌詞の発音のタイミングを指示する必要があります。しかし、歌詞を発音するときの子音の発音タイミングは、音の出るポイントより少し前にあり、しかも、
同じ子音でも、発音のニュアンスによって、そのポイントは前後します。

 このため、合唱で指揮棒を使うと、発音のニュアンスがうまく伝わらない場合が出てきます。動きがあいまいで、音の出るポイントがはっきりしない手の動きの方が、子音の発音タイミングを合わせやすく、言葉のニュアンスを出せます。

 合唱の時でも、歌詞よりリズム感を出すことを優先するような曲の場合は、指揮棒を使ったほうがいいでしょう。逆に、吹奏楽でも、ゆったりした曲で微妙なニュアンスを要求されるような時には、指揮棒なして指示を出したほうが効果的です。

 
指揮棒を使うかどうかは、演奏する曲の状況に合わせて決めていきましょう。

1-2-25.もう少し前からやり直す

 演奏を止めて、やり直しをする時には、もちろん、数小節ほど戻って、演奏しやすい位置から演奏をし直すわけですが、これでは直らない場合があります。

 その一つの例は、息継ぎがうまく良いかないために、合わせられない場合です。つまり、直前からでは息継ぎをする必要がないので合わせることが出来るんだが、ず
っと吹いてくると・歌ってくると息継ぎがうまく取れずに合わせられないことがあります。

 また他の例として、よく似ているが少し違っているパターンを演奏する場合も、勘違いをしていて、すぐ前からのやり直しでは直らないことがあります。こんな時は、もちろんの思い切ってもっと前に戻ってやり直しをする必要があります。

 合奏の時には、何が原因で合わなくなっているか注意を払い、その
原因を取り除くポイントを考えて音合わせの練習をしましょう。

1-2-26.演奏したテンポに合わせない

 演奏している生徒は、楽器を吹いたり、声を出すために注意を払っています。しかし、その、吹いたり、声を出すことに神経が集中して、「いい音楽作りをする」ということまではなかなか、注意は向きません。特に、練習を始めたばかりの生徒が多い場合はそうです。

 ですので、「
演奏しているテンポは、ゆっくりになったり早くなったり、その時々によってゆれるものなのだ」、という前提で指揮をしましょう。

 でないと、練習を重ねていくうちに決めたテンポから大きくずれていってしまうことが、よくあります。

 もちろん、技術不足の場合は、テンポのゆれが生じない程度のゆっくりした練習用のテンポを指示して、練習用のテンポと演奏として目指すテンポの設定を変えておくなどの工夫も必要です。

 くれぐれも、
指揮者が演奏者のテンポに合わせてしまうことのないよう注意が必要です。

1-2-27.体と指揮の動きを平行に

 「指揮棒の振り方(2)」に書いたことの続きです。
 
 指揮を始めたころは、図形の形が悪く、縦または横方向に図形が伸びたり縮んだりしています。それを、一定の速度で腕が動かせるようになると、綺麗な図形になって見やすい指揮になります。しかし、このとき、まだ肩などに力が入っていると違った問題起こってきます。

 その一つは、図形は綺麗に描かれているのですが、その
図形の中心があまりに右や左のどちらかにずれている場合です。自分の体の前で図形を描かずに、体から遠く離れたはなれたところで指揮をしてしまっているのです。

 その他に、指揮棒の先が作り出す
図形が、ちゃんと演奏者の方に向かずに振っている場合があります。こんどは、指揮棒の先が、天井を向いたり、床を向いたりしていて、演奏している人に向かって指揮していないのです。

 いずれの場合も、自分では綺麗に振っているつもりでも、演奏する生徒からはとっても見にくくなっています。

1-2-28.振りすぎに御注意

 これも指揮を始めた頃におこしてしまう、よくある癖です。

 ちゃんと棒を振ることが出来るようになると、生徒が指揮棒に反応しないのに気がつくようになります。「ああ、これでは、いけない」と、生徒に指示をしっかり伝えようとして、だんだん、
指揮がオーバーになってきます。

 これによって、せっかくきれいに振れるようになった
指揮の図形が崩れたり、テンポの維持が出来なくなったりします。

 生徒が指揮を見て、その指揮に反応して演奏できるようになるには、
指揮の見方や、音楽に対する感じ方を変えていかないとすぐには出来ません。それが出来ていないからといって、自分の振り方が崩れていくと本末転倒です。

 あせらず、冷静に、
分かりやすい指揮を心がけましょう。

1-2-29.棒が止まってしまう

 前の項目と逆のような感じですが、これも指揮を始めた頃に癖のようになってしまっている場合があります。

 この、
長く伸ばす音のときの指揮棒が止まってしまうとは、音楽は流れているのに指揮棒が止まってしまうという現象です。

 
曲の終わりに全員が音を伸ばしているだけというような箇所や、フェルマータのような音楽の流れが止まっている時に指揮棒が止まるのはいいのです。しかし、曲の途中でメロディーが4拍伸ばしているという場合などに、メロディーの音が動いていないからといって、指揮棒の動きを止めてしまう場合が見受けられるのです。

 
旋律は動きを止めていても、リズムや和音が動いていて音楽自体は動いています。こんなときには指揮の動きを止めないで音楽の全体の流れを指示していかなければなりません。

 旋律だけに気を取られて指揮棒の動きがあいまいにならないように気をつけましょう。

1-2-30.数が合わない

 これも指揮に慣れてきた時におこしてしまう、ある種の癖です。自由に指揮の図形を描けるようになってくると、細かく指示を出したくなってきます。そして、基本の図形より細かく描くようになります。

 そうすると、
細かく描き過ぎて、結果的に1小節に必要な拍数以上に振ってしまう、というようなことが起きてくるのです。

 例えば、4分の4拍子で、最初の3拍は4分音符なのに、4拍目だけが8分音符2つなので、その8分音符を2拍に振ってしまい。
1小節に5拍あるように見えてしまうのです。

 もちろん、指揮のテクニックの中には、1拍を2つに振り分けるという方法はあるのですが、それが度を過ぎて2つに振り分けたはずの拍が2拍のように見えてしまうと、演奏している生徒は混乱します。

1-2-31.指揮者は歌わない

 「音楽を歌うことはとっても大事」と何回も書いてきました。がしかし、
歌ってはいけない時があります。

 それは、
指揮をしている時

 演奏してない時に、音楽の説明のために自分で歌ってみせるのはいいのですが、指揮している時に歌うのは止めましょう。

 演奏者に音楽を伝えたくて一緒に歌ってしまう気持ちは分かるのですが、一緒に歌ってしまうと演奏している
音が聞こえません

 また、一緒に歌ってしまうと、自分の歌っている音楽と、演奏者の出している音が同じだと勘違いしてしまって、
音楽つくりを間違ってしまいます。

 指揮する時には、落ち着いて演奏者が鳴らしてくれている
音をちゃんと聞くことを大事にしましょう。

1-2-32.小節番号を書き込もう 

 演奏している曲が長くなると、曲の途中から練習を始めようと指示を出した時に、開始位置がすぐに見つけられなくなりします。

 また、同じような音形が続くような曲では、
どの音について注目しているのか、混乱してしまったりする場合があります。

 長い曲には、こんな場合を想定して、練習番号として「@、A」や「A・B」という番号入っています。しかし、「@の13小節前」など、やっぱり探し出すのに時間がかかったり、指示した位置の勘違いは起こってしまいます。

 こんな時には、面倒でも、
すべての小節に通しの小節番号を打っておくといいでしょう。

 演奏位置を探すストレスや、勘違いからもう一度言い直すストレスから解放されて、指揮者も演奏者の練習に集中できるようになります。

1-2-33.予備拍のむつかしさ 

 演奏を開始する時には、曲のテンポを演奏者に知らせるために、
開始音より前に指揮棒を振り始めなければなりません。これを予備拍といいます。

 指揮に
慣れないうちは、1小節分、4拍子なら4拍、演奏の前に指揮棒を空振りすればいいでしょう。しかし、4拍も空振りしていると、演奏前に間延びした感じがするので、慣れてきたら、2拍ないしは1拍の空振りで、曲を始められるようにする必要があります。

 この時に問題が起こります。
予備拍を短くすればするほど、予備拍のテンポと本当のテンポにずれが生じてしまいます。

 傾向として、あせってしまい、本当のテンポより早く振る場合が多く見受けられます。

 なかなかこのズレを、自分では気が付かないので、指揮を振り始める前に、
正確なテンポをイメージしてから、落ち着いて予備拍を振り始めるようにしましょう。

1-2-34.音のピラミッド 

 ピラミッドは、その高さを維持するために基礎の部分は広くなっています。他のものですそうですが、大きな物が安定するためには、重心を低くする必要があり、下のほうが大きく・重くなっています。

 音を重ねる時にも同じことが言えます。つまり、
低音を大きくして、高音を小さめに。このように、音のバランスを取っていくと安定感のある響きになります。

 吹奏楽でも合唱でも、
高音を出すために力が入ってしまい、音量のコントロールを失いがちです。また、CDなどの演奏を聞くと、目だって聞こえているように感じるので大きな音にしがちです。

 でも実際は、低音の響きが充実していると、
高音は小さな音でも十分聞こえてくるのです。「音程の不思議」でも書いたように、高音は音程を正確に作るのが難しい音です。ですから、音量より音程に注意が必要です。

 
いい響きを得るためには、音量に気をつけて、ピラミッドを積み上げるつもりで、低音から高音に向かって音を積み上げていきましょう。

1-2-35.低音が先、高音は後 NEW

 以前ある音楽番組で、演奏者が指揮者の棒の動きにどのように反応するのか、という実験をしていました。実際のプロのオーケストラのメンバーの体にいろいろ電極をつけて、指揮者の動きにどのように反応しているのかを、機械で測ってみると言うものです。

 
曲が始まるとき、どのように演奏者が反応しているか、の結果はどのようであったか予想できますか。

 結果は、
大きな楽器ほど、指揮者の動き出しに早くから反応して演奏の準備をしていました。つまり、大きな楽器=低音を演奏する人ほど指揮者の動きに敏感に反応しているといことです。これは、プロの演奏家は、低音の重要性を認識して音楽作りをしている証拠だと思います。

 ハーモニーの基礎でもあり、サウンドの基礎でもある低音は、極端な場合、音を出す準備作業と早くするのですから、その分みんなより先に音を響かせ、その上に他の音がのってくるくらいでもいいと思います。
低音を大切にして、音楽つくりをしましょう。

1-2-36.棒を振らない指揮 NEW

 演奏会前など、演奏が出来上がってきたら、
指揮棒を振らずに、演奏者だけで演奏する練習をするといいでしょう。

 この練習をすると、演奏者が指揮者からの指示を待ちながら演奏していて指示がないとうまく合わない箇所や、演奏者の互いのテンポ感のズレで、勝手に速くなってしまったり、遅くなってしまう箇所などが出てきます。

 つまり、まだ、曲の
アンサンブルがしっかり出来ていないところが見えてきます。

 指揮棒で演奏を引っ張っていくのも指揮者の仕事ですが、
演奏者が自ら音楽を作れるようにするのも指揮者の仕事です。

2.練習編
はじめに

 ここは、練習方法(個人練習・パート練習・セクション練習・合奏・アンサンブル)についての項目です。

 一番最初に書いたように、合奏練習の時間が楽しい時間になっていくことが、吹奏楽の楽しみの一つです。しかし、その楽しい時間を作り出すためには、「吹奏楽の音楽作りの全体図」に示したように、いろいろな練習をバランスよく取り入れる事が必要です。

 まず、一人ひとりが良い音を出せるようになるように練習することと、合奏する楽譜を事前に練習しておくという
個人練習が必要です。

 そして、その成果を同じパートの人と合わせる
パート練習

 次に、同じ種類の楽器の人と合わせる
セクション練習

 これらを経て合奏練習に入ると、効果的な練習が出来て、より合奏が楽しくなり、曲の仕上がりもよくなります。そうすると、また
「合奏の時間が楽しくなる」、という、とてもいい循環の練習組織が出来きてきます。

2-1. 個人練習
2-1-1.一人ひとりが、いい音を

 個人練習では、合奏する曲の練習の他に、
一人ひとりがいい音が出るように練習することが大切です。

 それぞれ、人によって持っている技術のレベルが違います。その
レベルを上げる練習をしましょう。また、人それぞれ、「タンギングは得意だけど低い音がうまく出ない」、「高い音は得意なんだけどリズムがうまく取れない」など、自分の不得意な点もあります。それを自覚し、自分の音を良くする目標を持って練習することが大切です。

 そのための、基準となるのが
教則本です。それぞれの楽器の教則本には、その楽器の基本的な演奏法が網羅されています。そのポイントの一つ一つを、確実に修得していくことが必要になります。

2-1-2.時間配分

 しかし、個人の練習をしていると、ややもすると、
曲の練習だけになってしまいがちです。

 例えば、個人練習を1時間ほど行うとすると、50分くらいは曲練習になってしまうでしょう。人間、どうしても楽しいことを優先してしまいがちですからね。

 この練習バランスをうまく取るには、ある程度、練習をパターン化することが必要になります。例えば、「今日は、教則本の10ページから12ページまでをテンポ80で2回吹こう」、とか
具体的な目標を設定して、曲の練習の前に行う習慣をつけていきましょう。

2-1-3.基礎勉強

 基礎練習ではなくて、
基礎勉強です。

 楽譜には、音符のほかに音楽用語なのがいろいろ書き込まれています。それらの用語は、先生や先輩の教えられて、段々身についていきますが、
自分で調べて覚える習慣を付けると確実に早く覚えられます。

 楽譜をみたら、まず
知らない記号や用語のチェックをする。それを調べて理解する習慣を身につける。

 このためには、クラブに1冊、
音楽辞典を備えておきましょう。

2-2. パート練習
2-2-1.パート練習とは

 パート練習とは、もちろん、同じパートの人が集まって行う練習です。しかし、ただ単に集まって吹いているだけの練習では意味はありません。このパート練習は、
クラブの音楽作りのための基本単位になるものです。

 
パート練習での、「音を合わせる・音楽を合わせる」という作業が、次のセクション練習・合奏での音楽作りへつながっていき、パート練習での成果が、全体の音楽作りへの基礎となるのです。

 また、パート練習は、練習以外のことも重要になります。それは、この場所でまず、同級生の友達が出来て、先輩から教えられて先輩・後輩の関係が生まれ、
クラブの人間関係の元になる場所です。

 パート練習での効果的な練習方法を、パートのみんなと一緒に考えながら、コミュニケーションをしっかりとり、
みんなで音楽も人間も分かり合いながら、楽しく練習できるようにしていくことが大切です。

2-2-2.奏法の確認 

 パート練習で、大きな比重を占めるのが、全員で合わせる練習ですが、その時に注意する内容です。

 同じパートなので、同じような楽譜を吹いていているのですが、案外、人によって
演奏の方法がずれています。個人で練習している時には、他の人とずれてるなんて思いもよらなかったところで、合わせてみるとずれている場合があります。

 そのポイントとなるのは、スラーのつけ方や、ブレスの位置など、
Vの基本編で取り上げた点です。また、トリルのかけ方とか、装飾音の付け方など、楽譜の解釈を合わせる必要も出てきます。

 さらに、
パートの楽器が持っている特有の難しい点なども、互いに教えあいをしてそろえていきましょう。例えば、木管なら変え指での演奏方法等です。

 そして、案外、出来ていないのが、
音色を合わせる練習です。音程、音量と共に、音の三要素の一つですので、音色も注意して合わせていきましょう。

2-2-3.聞くのも大事 

 パートの全員で曲の練習をするのも大事なのですが、そのパートを合わせる為にも、演奏されている音をしっかり聴く事が大切です。

 つまり、全員で演奏するという練習だけでなく、誰かが
聞き役に回ってみんなの演奏をチェックするという練習も取り入れましょう。

 合わないところを発見することは、演奏者としての耳の感覚を鍛えることになります。
演奏する力ばかりでなく、音楽を聴く力を磨くと!

 この力が、以外に演奏技術をも上げていきます。また、この聴く力が上がっていくと、
音楽そのものを楽しむ力も磨かれていきます。

2-3. セクション練習
2-3-1.セクション練習とは

 セクション練習には主に2つの種類があります。まず、木管楽器だけや、金管楽器と打楽器だけで集まって練習したりする、パート練習より
少し大きな楽器郡で集まって行う練習。

 もう一つは、メロディーや和音やリズムという
音楽の要素ごとに集まって行う練習です。

 
いきなり合奏練習をするより、これらのセクション練習を間にいれることにより、演奏がうまく合っていない所や、曲をまとめるためのいろいろなポイントが合奏の時よりもよく分かり、曲を作る上で、大変役に立ちます。3回合奏する機会があるなら、そのうちの1回をセクション練習にするくらいのつもりで入れてもいいくらいです。

 ただし、少人数バンドの場合には、楽器群に分けたセクション練習をしても、あまり効果的ではないので、バンドの楽器構成に合わせて、いくつかのパートを組み合わせてのセクション練習にした練習の方が効果的でしょう。

2-3-2.合奏の予備練習として 

 木管楽器のみや、金管楽器のみの
同属楽器でのセクション練習の時には、同じ種族の楽器なので、楽器としての演奏方法が似ています。

 ですので、音を出すタイミングや、音楽に表情をつけるアーティキレーションを合わせやすいという特徴があります。まず、この点に注意して、
合奏のための予備練習として、このような点を、しっかり合わせる練習をしましょう。

 また、パート練習の時にパートで決めた、ブレスの位置や、アクセントなどのかけ方などが違っている場合もあります。この点の、
パート間の調整も行います。

 このような練習を事前にしておくと、合奏の時に、例えば金管楽器と木管楽器の演奏を合わせようとした時、合わせるために時間がかかってしまって練習が間延びして楽しくなくなるのを防いでくれます。

2-3-3.合奏ではできないところ(1) NEW

 全体での合奏練習に入ると、大きな音が鳴っていて、自分の演奏している音は、なかなか聞こえてこないことがあります。そんな時には、このセクション練習の時間が大事になります。

 たいていの曲は、木管楽器郡だけで・金管
楽器郡だけで、音楽の三要素である。メロディー・和音・リズムが含まれるように作られています。しかし、合奏になると小さな音の楽器は全体の中に埋もれてしまって、自分の演奏がどの役割で演奏しているのか聞こえなくなります。

 例えば、木管楽器の中で、一つパートだけ和音を鳴らしてして、他は金管楽器が鳴っている場合などはそうです。

 こんな場合には、セクション練習で、
その役割をちゃんと感じて演奏することを経験しておくと合奏の時に自分の役割を見失うことがなくなります。

2-3-4.機能セクション練習

 この機能セクション練習は、案外、実行されてないのではないでしょうか。

 旋律を吹くパートだけ集まって練習する。和音を作っている人たちが集まって徹底的に和音あわせをやってみる。パーカッションと一緒に、リズムセクションを吹く人たちで、リズムのノリを合わせてみる、という練習です。

 この練習は、
音楽の三要素を演奏者がきっちり感じ取るのに大変いい練習になります。この三要素の特徴を感じ取っていると、全体練習でこの三つが組み合わさった時に、より音楽を生き生きとして演奏する方法が見えてくるようになります。

 
合奏の前にやっておくと大変効果的な練習になります。

2-4. 合奏
2-5. アンサンブル
2-5-1.一人、1パート 

 合奏の練習の時は、自分の演奏しているパートは大抵の場合、他にも演奏している人がいます。

 しかし、アンサンブルでは、一人が一つのパートを完全にまかされることになります。
自分の音がなければ音楽が成り立たない、このことに気付くと、自分のパートへ、より責任感をもって、より意識のある演奏しようとする姿勢が出来てきます。

 これが、アンサンブル練習をする大きな意味の一つです。そして、
こういった姿勢で練習することが、音楽を楽しむための大きなステップとなります。

 また、このアンサンブルの練習で得た感覚は、全体の合奏練習の時に、とても役に立ちます。

2-5-2.スコアを見る

 時々、パート譜のみで練習しようとする生徒が見られますが、これはアンサンブルの練習としては絶対だめ。これでは、いつもの合奏練習と変わりありません。

 アンサンブルの面白さは、
一人一人が自分のパートに責任を持って演奏する姿勢と同時に、スコアを見て一人一人が音楽の全体を意識しながら演奏することにあります。

 スコアを見ると、旋律を演奏している時にリズムはどうなっているのか、和音は旋律に対してどこで変化しているとかなど、自分の演奏に対して他のパートがどのような関係にあるのかを知りながら演奏することができます。

 このことが、音楽を感じ取りながら演奏することへの第1歩となり、
「個と全体」に対する意識を育てることが、生徒たちの音楽性を育てていきます。

2-5-3.息継ぎの大切さ

 全体練習の時には、同じフレーズを吹いている人が他にいるので、少しいい加減になってしまうのがこのブレスです。

 しかし、アンサンブルでは、中途半端な息継ぎのために自分の演奏しているフ
レーズを切ってしまうと、その部分で全体のフレーズが切れてしまい、全体の曲想作りに影響を与えてしまいます。

 
正しいブレスの位置でちゃんとブレスをすること、いいかえると、フレーズに途中では勝手にブレスをしない練習をすることになります。

 当たり前のことなのですが、全体練習ではきっちり出来ていなかったことを、このアンサンブルの練習で直していくと、
フレーズ感を大事にした演奏を生徒たちが出来るようになります。