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![]() これまでの漢字学習は、漢字の筆順を何回も繰り返して書き、丸暗記して覚えることが中心でした。しかし、この方法は手書きを放棄した現代人にとって最善の方法とは言えません。手書きをほとんどしない私たちは、漢字の字形のなかに漢字を復元するヒントを見つけて漢字を覚える必要があります。 そのための最善の方法は、音符を活用することです。音符はこれまで名前のとおり、漢字の音を表わす記号と考えられてきました。例えば「距キョ」「拒キョ」の字では「巨キョ」が音符となり距・拒の発音「キョ」を表わしています。しかし、音符巨キョは単独では、大きい(巨大)という意味ですが、音符として他の漢字と組み合わさった時、「へだてる・へだたる」意味があるのです。 したがって、拒は「手+巨(へだてる)」で、手を前に出して相手をへだてる、つまり拒否をする意味に、距は「足+巨(へだたる)」で、鳥の足先の爪とへだたっている蹴爪(けづめ)の意味で、転じて「へだたる=距離がある」意味となります。また、常用漢字以外でも、炬キョは「火+巨(へだてる)」で、地面などからへだてて管理されている火、つまり、かがり火や、たいまつを意味し、音符の意味は貫徹されています。 このように、音符が音を表わすとともに意味も表わす文字を、会意形成文字といいますが、組み合わせ漢字には会意形成文字が非常に多いのです。本字典は、音符の役割を徹底的に追求して明らかにした上で、部首と組み合わせて漢字を覚える方法を開発して編集されています。 書けない漢字があったとき本字典を見て、音符と部首の関係を把握してください。また同時に同じ音符が他の部首と組み合わさってどんな漢字が出来ているかを把握することにより、音符を中心とした漢字の成り立ちを理解できます。こうした作業を繰り返すことによって、漢字を音符と部首の関係から理解することができ、漢字を記憶し書けるようになります。一度覚えた音符は、常用漢字以外の漢字にも応用が利きます。音符による漢字の学習は体系的に漢字を理解できるすぐれた方法だと断言出来ます。 【著者紹介】石沢誠司(いしざわ せいじ) 1943年、長野県上田市生まれ、京都大学文学部卒業。京都府職員として府立総合資料館・京都文化博物館・府立図書館等に勤務。退職後、2008年から2年間、上海師範大学で日本語を教える。日本語教育に携わり始めてから漢字音符に興味を持ち、漢字を音符で分類する作業を続ける。2010年に帰国後、常用漢字を音符順に配列した字典の編集を開始し、パソコンを用いて入力し完成させた。 著書に『七夕の紙衣と人形』(ナカニシヤ出版)がある。 |
『音符順 常用漢字学習字典』の内容と特徴
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『音符順 常用漢字学習字典』 目次 はじめに 音符で分類すると漢字の成り立ちが解る …………… ⅰ 漢字は究極の絵文字 ~古代文字の音符~ …………………… ⅵ 凡 例 ………………………………………………………………ⅹⅳ 音訓索引………………………………………………………………1-26 本 文…………………………………………………………………1-497 コラム目次………………………………………………………………498 総画索引………………………………………………………………1-12 本文497ページ、まえがき・索引等53ページ、全550ページ B5版 定価4000円(送料込) |
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石沢書店 〒567-0888 大阪府茨木市駅前1丁目5-8 メール seijiishizawa@yahoo.co.jp 電話 072-627-0271 |
音符とは何か 漢字における音符とは、その漢字の発音を表している部分を言います。例えば「距キョ」や「拒キョ」の音符は「巨キョ」となります。漢字は「かたち」があり、その「かたち」は意味を持つとともに、その「かたち」を示す発音があります。もっとも初期にできた漢字は、山・川・人・魚・虎のような象形文字ですが、その発音はそれぞれ「サン」「セン」「ジン」「ギョ」「コ」です。象形文字は文字と発音が一致しているので「かたち」は同時に発音を表す記号である音符になります。 「交コウ(p152)」は、交差させる・まじわる意で、「校コウ」「絞コウ」「効コウ」「較コウ」「郊コウ」などの組み合わせ文字ができます。p152の要約は以下のとおりです。 「申シン(p258)」は、イナヅマ・のびる意で、「神シン」「伸シン」「紳シン」などがあります。p258の要約は以下のとおりです。 「包ホウ(p424)」は、つつむ・まるくふくれる意で、「抱ホウ」「胞ホウ」「砲ホウ」「泡ホウ」「飽ホウ」などです。p424の要約は以下のとおりです。 音符として一番多く使われるのは、象形文字を組み合わせて作られた会意文字です。例えば、大きな人の両側に人を配置した「夾キョウ」、刀と口を組み合わせた「召ショウ」、立った人にひっくり返った人を組み合わせた「化カ」などです。これらの字も「夾キョウ」は、はさむ・はさまれる意、「召ショウ」は、まねく・めす意、「化カ」は、変化する・かわる意を持ちながら音符となります。 「夾キョウ(p 95)」は、はさむ・はさまれる意で音符となります。「峡キョウ」「狭キョウ」「挟キョウ」「頬キョウ」など。p 95の要約は以下のとおりです。 「召ショウ(p242)」は、まねく意で音符となります。「招ショウ」「沼ショウ」「昭ショウ」「照ショウ」「紹ショウ」など。p242の要約は以下のとおりです。 「化カ(p33)」は、かわる意で音符となります。「花カ」「貨カ」「靴カ」など。p33の要約は以下のとおりです。 音符の中には漢字の原型となったものの、今では使われなくなったプリミティブな形もあります。例えば、「作サク」の原字で、枝をたわめる・つくる意をもつ「乍サク」、太陽の「陽ヨウ」の原字で、あがる意をもつ「昜ヨウ」、「桶ヨウ・おけ」の原字で、中が空洞の意をもつ「甬ヨウ」などがあり、これらを音符にもつ字は以下のとおりです。(※印は形声文字) 「乍サク(p178)」は、枝をたわめる・つくる意で音符となります。「作サク」「詐サ」「搾サク」「昨サク※」「酢サク※」など。p178の要約は以下のとおりです。 「昜ヨウ(p468)」は、あがる太陽・あがる意で音符となります。「陽ヨウ」「場ジョウ」「揚ヨウ」「湯トウ」「瘍ヨウ」「腸チョウ※」など。p468の要約は以下のとおりです。 「甬ヨウ(p466)」は、「通ツウ」「痛ツウ」「踊ヨウ」「勇ユウ」「湧ユウ」など。p466の要約は以下のとおりです。 |