猫のワクチン誘発性肉腫 |
猫のワクチン誘発性肉腫は、ワクチンが関係することが多いため、 このような名前がついていますが、この腫瘍はワクチンに限らず、 猫の体に入った異物から発生するとも言われています。 この腫瘍は、ワクチンを接種したから必ず発生するものではありません。 報告により異なりますが、1万頭に数頭発生すると言われています。 (白血病や猫のウイルス性鼻気管炎などの 病気にかかる確立はもっと高いです) |
どんな腫瘍? |
猫にワクチンを接種すると、接種した部位に、数日から数週間、 しこり(硬結)が認められる事があります。 これ自体が腫瘍である事は少ないのですが、 このしこりが数ヶ月から数年存在する、もしくは大きくなる時は、 それが腫瘍になる事があります。 この腫瘍の性格は、転移性は比較的低いのですが、 局所浸潤性がかなり強く、 しこりがある所より離れた場所にも腫瘍が存在する事もあります。 |
診断 |
ワクチンなどの接種歴と、 その後、消失しないしこりがあるときは、 細胞・組織学的検査をなるべく早く行う必要があります。 腫瘍が成長する前に診断することが大切です。 |
治療 |
この腫瘍は、腫瘍の疑いが出れば、可能な限り早期に、 可能な限り大きく手術で切除する事をお勧めします。 この腫瘍は、手で触れるしこりより外側に、 広範囲に存在する性格があるため、 大きく成長したものは、 大きく切除しても再発する事が避けられない場合もあります。 |
予防 |
先にも述べましたが、この腫瘍の発生はかなり少ないもので、 猫の伝染病の危険の方がはるかに高いです。 また、接種後に、しこりができていないかを確認し、 また、しこりができていても、きちんと見ておく事で、 致命的になる事を防ぐ事は十分可能です。 また、ワクチンの接種部位は、 肩甲骨の間や肋骨の後ろには接種せず、 (推奨されている接種部位は、) (白血病は左側の足、3種のワクチンは右側の足) この腫瘍ができても対処しやすい部位に、 接種される事をお勧めします。 |
よく質問されることで、 |
限りなく大きく皮膚などを切除して、腫瘍を取りに行ったけど、 この腫瘍を取りきれなかったとよく質問を受けます。 この場合、その切除がどの程度の大きさだったのかわかりません。 多くが、胸部背側の肩甲骨の間での切除が多いのですが、 この部位の切除は、下層の筋肉を大きく切除し、 背骨の一部まで切除可能です。 切除する筋肉にもよりますが、 その部位にあるいくつかの筋層を適切に切除し、きちんと再建することで、 多くの猫ちゃんは歩行障害などがなく元気に過ごせます。 (今まで行った数例でも、 筋肉などを多く切除した場合でも機能障害を認めていません) この腫瘍は、放射線療法や化学療法にとても反応が乏しい腫瘍です。 ゆえに、外科的にどこまで切除できるかが一番の治療のポイントです。 |